マギ 短編
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好みの精油とアルコール、精製水から成る混合液を器に注いで、フィルターを差しておく。ベッド脇のテーブルに置いておけば、簡易なアロマディフューザーとして十分役割を果たす。
部屋の主人の好みを確かめず用意してしまったが、気分を損なってしまわないだろうか。思いついた途端に即実行に移してしまって、今更ながら彼の行動を予測する。
疲れ切って自室に戻るであろう文官長に少しでも良質な睡眠をとって欲しくて、彼のためになることなら試してみたかった。
卓越した嗅覚を持ったジャーファルは、部屋に足を踏み入れた時点で室内の変化に気付いた。
「おかえりなさい、ジャーファルさま」
「これは……セージですね」
いとも簡単に言い当ててみせた。
なまえなど、よっぽどベッドに近づかないとわからない程度の香りなのに。
「アロマです。少しでも気が休まるかとご用意しました。この香りはお好きですか?」
なまえの肩を掴み、顔を頬に寄せる。すん、と鼻を動かす息遣いにどきりとする。続いて手をとって同じように匂いを確かめているようだった。
キス、されるんだと思った。頬にも手にも。違ったけれど。
淡く期待した自分に羞恥する。
「あの、あまり甘ったるい香りだったりいかにもお花っていう香りは苦手かなと思いまして……私はセージの香り、落ち着いて好きなんです」
効能としてはストレスを減らし安眠を促すというもの。
ほかに代表的なものにはラベンダーやカモミールがあるが、どちらもジャーファルのイメージと合わない気がした。
「……あなたの身体からも少し漂ってます」
「え? ……こぼしたりはしてないのですが」
でも確かに、精油の瓶の蓋を閉めるときにわずかながら瓶の口に触れてしまったのかもしれない。それか、液体を混ぜるときに飛沫がついてしまったとか。
「すみません、ジャーファルさまには強すぎますか? 余計なものでしたらすぐに片付けます」
「いえ、私が敏感すぎるというか……なんでも捜索するのはもう癖ですね。そのままにしていてください」
腕が背中に添わされる。肩に乗る重さが喜ばしかった。
「心が休まります。あなたの存在と相乗効果で…良い香りだ」
抱きしめられるがまま、甘えられるがままに受け入れてしばらく。
動かない。
これは、と疑って揺すってみる。
「ジャーファルさま、立ったまま寝ないでください! ご飯は食べたんですか?! せめて寝巻きに着替えましょう?!」
立ったまま寝るなんてもはや器用とも言える。
アロマの効果はあった、と推定して良いのだろうか。
「ん……ああ」
なまえに寄りかかったまま、クーフィーヤを抑えの飾りごと掴んで床に落とし、前掛けを引きちぎる。帯を解いて制服を取り払ってしまう。
首の根元に唇を押し付けて、もごもごと口を動かした。
おやすみなさい、って言った?
ほとんど意識がないとは信じられないほどの力でなまえを抱き上げて、ベッドに静かに横たわった。
「私、巻き添えじゃないですか……」
**
おわり。
読んでくださりありがとうございました。
メモ帳に残ってたネタです。せっかくなので。
おそらくジャーファルさまは体に香りつけないために身の回りのアロマとかも気をつけてるとは思います。
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