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☆
「錫也」
名前を呼んだきりじっと見つめられた。
「うん?」
両手を広げてみせるとぽすんと胸に収まった。細い腕が背中に回ったのを感じながら、頭を撫でてやる。
自らスキンシップをとろうとしない彼女にしては大変珍しい。
あの手この手でなんとかして触れようと躍起になっている普段の自分が笑えた。
額に唇を寄せると、くすぐったそうにしたが離れなかった。
いつもなら照れてすぐ逃げようとするのに。
「どうしたんだ?」
「あのね…、わがまま言って良い?」
「なんなりと、お姫様」
錫也は嬉しくなって声が弾む。
彼女から何かを求めることはほとんどないので、ここぞとばかりに甘やかそうと考えた。
「錫也の作ったお菓子食べたい」
「うーん、それはわがままじゃないな。羊になんてしょっちゅう言われてるし」
お腹が空いたと言っては料理やお菓子を子供のようにせがむ赤い髪の彼。
本当に美味しそうに食べるので作るのも楽しい。
そうして作ったものを奪いあうように食べる羊と哉太、二人が争う様子を微笑ましく見守りながらも自分の分はちゃっかりと確保している月子。
錫也のそばでおこぼれをもらう程度に、控えめに食べる彼女を見て、いつも苦笑していた。
もっとたくさん食べても良いのに。
少し乱暴にしたら簡単に折れてしまいそうな体をなんとかふくよかにしようと何かあれば食べさせようとしているのだが、効果は薄い。
貧血でも不健康でもないようだが、いつか倒れやしないかと勝手な心配を募らせる。
「ううん。私のためだけに作って…?
わがままでしょう?」
遠慮がちに、でも甘えた声で言われて、心臓をわしづかみにされたかと思った。
「それぐらい簡単です」
愛らしい唇に音を立てて口付けると、頬を染めて顔をとろけさせた。
一度だけぎゅっと力を込めて抱きしめてから、早速学園の食堂に向かう。
食堂のおばちゃんたちと仲が良いうえ後片付けもきちんとするので、いつでも使って良いと許可をもらっていた。
休日の今日でも問題はない。
一人エプロンをつけて彼女には椅子に座って待っているように指示したものの、
「錫也が作るとこ見てたい」
と言われればにやけるのを禁じえなかった。
小麦粉をふるっていると、腰にたどたどしく腕が回ってきた。
「小麦粉がつくぞ」
注意してみたが、外す気はこれっぽっちもない。
「うん」
とだけ言って、クッキーができあがる過程を錫也の背中ごしに眺めていた。時々道具を渡したり手伝いもしながら。
オーブンに触るときだけは危ないからと離れさせて、できあがったら、焼きたてのクッキーを手ずから食べさせる。
「美味しい!サクサク!…ありがとう錫也」
「いいえ、どういたしまして」
「すごく幸せ」
もう1つを頬張って、
「錫也、だいすき」
と、マシュマロのような柔らかな甘い微笑み。
ああ、なんて可愛いんだ。
くらりと目眩がしたのを抑えて、また彼女を抱きしめる。
「俺もだいすきだよ」
お礼に彼女からぎこちない口付けが返ってきた。
ああどうしようほんとに可愛すぎる俺の彼女。
☆
おわり
「錫也」
名前を呼んだきりじっと見つめられた。
「うん?」
両手を広げてみせるとぽすんと胸に収まった。細い腕が背中に回ったのを感じながら、頭を撫でてやる。
自らスキンシップをとろうとしない彼女にしては大変珍しい。
あの手この手でなんとかして触れようと躍起になっている普段の自分が笑えた。
額に唇を寄せると、くすぐったそうにしたが離れなかった。
いつもなら照れてすぐ逃げようとするのに。
「どうしたんだ?」
「あのね…、わがまま言って良い?」
「なんなりと、お姫様」
錫也は嬉しくなって声が弾む。
彼女から何かを求めることはほとんどないので、ここぞとばかりに甘やかそうと考えた。
「錫也の作ったお菓子食べたい」
「うーん、それはわがままじゃないな。羊になんてしょっちゅう言われてるし」
お腹が空いたと言っては料理やお菓子を子供のようにせがむ赤い髪の彼。
本当に美味しそうに食べるので作るのも楽しい。
そうして作ったものを奪いあうように食べる羊と哉太、二人が争う様子を微笑ましく見守りながらも自分の分はちゃっかりと確保している月子。
錫也のそばでおこぼれをもらう程度に、控えめに食べる彼女を見て、いつも苦笑していた。
もっとたくさん食べても良いのに。
少し乱暴にしたら簡単に折れてしまいそうな体をなんとかふくよかにしようと何かあれば食べさせようとしているのだが、効果は薄い。
貧血でも不健康でもないようだが、いつか倒れやしないかと勝手な心配を募らせる。
「ううん。私のためだけに作って…?
わがままでしょう?」
遠慮がちに、でも甘えた声で言われて、心臓をわしづかみにされたかと思った。
「それぐらい簡単です」
愛らしい唇に音を立てて口付けると、頬を染めて顔をとろけさせた。
一度だけぎゅっと力を込めて抱きしめてから、早速学園の食堂に向かう。
食堂のおばちゃんたちと仲が良いうえ後片付けもきちんとするので、いつでも使って良いと許可をもらっていた。
休日の今日でも問題はない。
一人エプロンをつけて彼女には椅子に座って待っているように指示したものの、
「錫也が作るとこ見てたい」
と言われればにやけるのを禁じえなかった。
小麦粉をふるっていると、腰にたどたどしく腕が回ってきた。
「小麦粉がつくぞ」
注意してみたが、外す気はこれっぽっちもない。
「うん」
とだけ言って、クッキーができあがる過程を錫也の背中ごしに眺めていた。時々道具を渡したり手伝いもしながら。
オーブンに触るときだけは危ないからと離れさせて、できあがったら、焼きたてのクッキーを手ずから食べさせる。
「美味しい!サクサク!…ありがとう錫也」
「いいえ、どういたしまして」
「すごく幸せ」
もう1つを頬張って、
「錫也、だいすき」
と、マシュマロのような柔らかな甘い微笑み。
ああ、なんて可愛いんだ。
くらりと目眩がしたのを抑えて、また彼女を抱きしめる。
「俺もだいすきだよ」
お礼に彼女からぎこちない口付けが返ってきた。
ああどうしようほんとに可愛すぎる俺の彼女。
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おわり
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