その他
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
**
「乾杯〜!」
それぞれ中身も大きさも違うグラスを掲げて、打ち付けあう。
閻魔大王の一声で実現した飲み会だが、彼の第一補佐官は幹事を務めつつもご機嫌斜めのようでいつにもないしかめっ面で升にかじりついている。
そこから離れた場で、酒を注いで注がれてしている間に人が往き交い、女性だけの席が自然と出来上がっていた。
ちゃっかりお香の隣を確保するなまえは、日本酒をちびちびやっていた。
どこそこでしきりにお疲れ様です、どうぞ一杯、と聞こえる。始まりは閻魔大王周辺の幹部だけだったのが連鎖で人を呼び大人数となってしまい、まるで忘年会だ。
質素な芥子はともかく牛頭馬頭、お香と並べば(いろんな意味で)絢爛になる。
「芥子ちゃん、お酒飲まないの?」
お香が問えば辛子は耳と髭をひくひく動かした。
「元上司のお酒絡みの失敗を散々見てきたので、あまり良い印象がありません。でも女子会は好きなのでジュースで参加しますよ」
「アラァ〜芥子ちゃん、男子は興味ないの?」
「軟派な男が嫌いなだけで、恋に興味はあります」
「そうこなくっちゃァ。最近出会いあったァ〜?」
「これといって出会いはありません。いまは仕事一本です。一人前になったら花嫁修行して、お婿さんを探したいですね」
「ちゃんと目標掲げてて偉いわぁ」
「さっきから黙ってるけどなまえちゃんはどうなの〜?」
話題を振られて、視線が集まる。
「私は恋愛する気ありませんから。お香おねえさまが生涯の目標です」
男がいなくても生きていける女になる。
「いやん、つれないんだからぁ」
きゃいきゃいと牛頭馬頭が笑う。
「でも、なまえちゃんってモテるんですよォ」
「もう、適当なフォローは要りません。私は衆合でお勤めのお姉様方のような華やかさはないですし」
「ホントよ。化粧っ気はないけれど、その層には根強いファンがいるのよねェ」
「お香おねえさま、それどこ情報ですか?」
「獄卒コミュニティよ」
「わかる気がするわぁ。ばっちり決めたわかりやすい美人が衆合では一番人気だけど、ちょっと抜けた感じの素朴な子が好きっていう殿方も多いわよね〜」
「え〜じゃあじゃあ、なまえちゃんの好みの殿方ってどんなのかしら〜」
「声の良い人…でしょうか」
「声フェチね、わかる〜!」
「現世で言うとM●ch●●l B●bl●とか」
「ごめん、知らないわ〜どんな声なの?」
「しっとり色気がありつつも爽やかで低音もよく通る…ていうか低音が最高なんですよ」
スマホを操作して再生した曲に聴き入る女性陣。
「あ、あ〜これは…アリねぇ」
「耳がとろけるわぁ」
「地獄の鬼人ならどう?」
「秦公王さまって素敵なお声ですね」
「確かに低いけど…低ければ良いの?」
「低いほうが好ましいですが、性格で言えばありがとうとごめんなさいがちゃんと言える優しい人が良いです」
「この座敷の中で、良いなって思う人、いる?」
「声だけで言うなら…鬼灯さま、かと」
いまは胡座をかいて升をひたすら煽っている。
「あら、声だけ?」
「ちょっと…、だいぶ好みの声すぎて最初のうちは受け入れられませんでした」
「え、そこまで?」
「なまえちゃん、はじめ鬼灯様とお話できなかったものねェ」
「いまは慣れました。でも好みなの声だけです」
「ばっさりねェ」
「見た目は好きじゃないの?」
「外見は気にしません」
「まぁ、選ぶ側でもありませんので好き勝手言ってます」
仮に懸想したとしても立場から、性格上でも鬼灯に拒絶されることが予想するに容易い。
「まったくですね」
至近距離で囁かれて背筋が伸びた。
「鬼灯様…どうして」
「名前を連呼されればそりゃあ気になりますよ。上司の悪口を言うのは構いませんがせめて本人のいないところでやりなさい」
あの場所から聴こえていたとはさすが地獄耳。内容までは理解しなかったようだが。
「いえ、鬼灯様のこと褒めてたんですよォ」
「ほう?」
「声だけは素敵ですよね、とお話してました」
「そうですか」
がっしりと頭蓋を掴まれて、体も拘束する。耳に口を近づけて、息を吸った。
「堪能させてあげましょう」
「結構です、離してください」
「統括よりしでいしょとうりんしょおうじゅくしょたくしょあんみょうしょふきしょごくくしょしゅうびょうしょりょうてつしょあくじょうしょこくしょくそろうしょいいかいてんしょくひつしょはちずまびんしょひちしょくうちゅうじゅくしょ…」
側から見れば恋人を抱きしめて愛を囁いているかのようだが、流れるのはお経のようなドスのきいた声。
「なぜ無駄に良い声 で地獄272部署読み上げを…」
「きっといま思いついたのがそれだったのよォ…酔ってらっしゃるし」
「あ、あれ酔ってるんですか」
「わかりづらいけどねェ、酔ってでもなければ女性にあんなふうに触れたりしないと思うわァ」
牛頭馬頭の体で隠されているため他の獄卒には気づかれていないものの、かなり恥ずかしい体裁だ。
途中で鬼灯の肩を掴んでいた手の力が抜け、するりと膝の上に落ちた。なおも朗唱を続けながらも、なまえの変化を観察する。
首まで紅くして、うっとりと陶酔していた。
「ありがとうございました…」
「どういたしまして」
鬼灯は眉一つ動かさず、また酒を飲みに元の席へ戻っていった。
「お二人ともおかしいです」
芥子がそこからじりじりと距離をとった。
「良かったの?!今のが良かったの?なまえちゃん、正気に戻ってー!」
お香に寄りかかって、眠りにおちそうななまえを牛頭馬頭が揺すり起こしていた。
**
読んでくださりありがとうございました。
無駄に良い声(バリトンボイス)、良いですよね。
「乾杯〜!」
それぞれ中身も大きさも違うグラスを掲げて、打ち付けあう。
閻魔大王の一声で実現した飲み会だが、彼の第一補佐官は幹事を務めつつもご機嫌斜めのようでいつにもないしかめっ面で升にかじりついている。
そこから離れた場で、酒を注いで注がれてしている間に人が往き交い、女性だけの席が自然と出来上がっていた。
ちゃっかりお香の隣を確保するなまえは、日本酒をちびちびやっていた。
どこそこでしきりにお疲れ様です、どうぞ一杯、と聞こえる。始まりは閻魔大王周辺の幹部だけだったのが連鎖で人を呼び大人数となってしまい、まるで忘年会だ。
質素な芥子はともかく牛頭馬頭、お香と並べば(いろんな意味で)絢爛になる。
「芥子ちゃん、お酒飲まないの?」
お香が問えば辛子は耳と髭をひくひく動かした。
「元上司のお酒絡みの失敗を散々見てきたので、あまり良い印象がありません。でも女子会は好きなのでジュースで参加しますよ」
「アラァ〜芥子ちゃん、男子は興味ないの?」
「軟派な男が嫌いなだけで、恋に興味はあります」
「そうこなくっちゃァ。最近出会いあったァ〜?」
「これといって出会いはありません。いまは仕事一本です。一人前になったら花嫁修行して、お婿さんを探したいですね」
「ちゃんと目標掲げてて偉いわぁ」
「さっきから黙ってるけどなまえちゃんはどうなの〜?」
話題を振られて、視線が集まる。
「私は恋愛する気ありませんから。お香おねえさまが生涯の目標です」
男がいなくても生きていける女になる。
「いやん、つれないんだからぁ」
きゃいきゃいと牛頭馬頭が笑う。
「でも、なまえちゃんってモテるんですよォ」
「もう、適当なフォローは要りません。私は衆合でお勤めのお姉様方のような華やかさはないですし」
「ホントよ。化粧っ気はないけれど、その層には根強いファンがいるのよねェ」
「お香おねえさま、それどこ情報ですか?」
「獄卒コミュニティよ」
「わかる気がするわぁ。ばっちり決めたわかりやすい美人が衆合では一番人気だけど、ちょっと抜けた感じの素朴な子が好きっていう殿方も多いわよね〜」
「え〜じゃあじゃあ、なまえちゃんの好みの殿方ってどんなのかしら〜」
「声の良い人…でしょうか」
「声フェチね、わかる〜!」
「現世で言うとM●ch●●l B●bl●とか」
「ごめん、知らないわ〜どんな声なの?」
「しっとり色気がありつつも爽やかで低音もよく通る…ていうか低音が最高なんですよ」
スマホを操作して再生した曲に聴き入る女性陣。
「あ、あ〜これは…アリねぇ」
「耳がとろけるわぁ」
「地獄の鬼人ならどう?」
「秦公王さまって素敵なお声ですね」
「確かに低いけど…低ければ良いの?」
「低いほうが好ましいですが、性格で言えばありがとうとごめんなさいがちゃんと言える優しい人が良いです」
「この座敷の中で、良いなって思う人、いる?」
「声だけで言うなら…鬼灯さま、かと」
いまは胡座をかいて升をひたすら煽っている。
「あら、声だけ?」
「ちょっと…、だいぶ好みの声すぎて最初のうちは受け入れられませんでした」
「え、そこまで?」
「なまえちゃん、はじめ鬼灯様とお話できなかったものねェ」
「いまは慣れました。でも好みなの声だけです」
「ばっさりねェ」
「見た目は好きじゃないの?」
「外見は気にしません」
「まぁ、選ぶ側でもありませんので好き勝手言ってます」
仮に懸想したとしても立場から、性格上でも鬼灯に拒絶されることが予想するに容易い。
「まったくですね」
至近距離で囁かれて背筋が伸びた。
「鬼灯様…どうして」
「名前を連呼されればそりゃあ気になりますよ。上司の悪口を言うのは構いませんがせめて本人のいないところでやりなさい」
あの場所から聴こえていたとはさすが地獄耳。内容までは理解しなかったようだが。
「いえ、鬼灯様のこと褒めてたんですよォ」
「ほう?」
「声だけは素敵ですよね、とお話してました」
「そうですか」
がっしりと頭蓋を掴まれて、体も拘束する。耳に口を近づけて、息を吸った。
「堪能させてあげましょう」
「結構です、離してください」
「統括よりしでいしょとうりんしょおうじゅくしょたくしょあんみょうしょふきしょごくくしょしゅうびょうしょりょうてつしょあくじょうしょこくしょくそろうしょいいかいてんしょくひつしょはちずまびんしょひちしょくうちゅうじゅくしょ…」
側から見れば恋人を抱きしめて愛を囁いているかのようだが、流れるのはお経のようなドスのきいた声。
「なぜ
「きっといま思いついたのがそれだったのよォ…酔ってらっしゃるし」
「あ、あれ酔ってるんですか」
「わかりづらいけどねェ、酔ってでもなければ女性にあんなふうに触れたりしないと思うわァ」
牛頭馬頭の体で隠されているため他の獄卒には気づかれていないものの、かなり恥ずかしい体裁だ。
途中で鬼灯の肩を掴んでいた手の力が抜け、するりと膝の上に落ちた。なおも朗唱を続けながらも、なまえの変化を観察する。
首まで紅くして、うっとりと陶酔していた。
「ありがとうございました…」
「どういたしまして」
鬼灯は眉一つ動かさず、また酒を飲みに元の席へ戻っていった。
「お二人ともおかしいです」
芥子がそこからじりじりと距離をとった。
「良かったの?!今のが良かったの?なまえちゃん、正気に戻ってー!」
お香に寄りかかって、眠りにおちそうななまえを牛頭馬頭が揺すり起こしていた。
**
読んでくださりありがとうございました。
無駄に良い声(バリトンボイス)、良いですよね。