Say those three little words.
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ご注意
以下のページには性描写を匂わせる表現が含まれています。
16歳以下の方の閲覧はご遠慮ください。
**
体内時計のおかげで早朝に目が覚めた。隣のやわらかい温もりを引き寄せる。
このかすかな寝息ですら愛おしい。
飽くことなく眺めていたら、外が明るくなってカーテンからうっすら光が漏れてきた。
まつげがゆっくり上がって、飛雄に視点が合わさる。あ、う、とためらった口が開く。
「……おはよう」
「はよ」
いままでだって酒を飲んでも記憶が混濁したことはない。昨夜なにがあって今につながっているのかしっかり自覚していた。帰らないで、なんて男の人に初めて言った。
むずむずする。
妙な間があって、長い指がこあの頬を撫でる。
「その。い……痛、くない、ですか」
最大限なまえの体を気遣った優しさが、恥ずかしい。
「……ダイジョウブ」
そうは言ったが、変な感じがする。痛みはないけれども、まだナカに入ってるみたいな違和感が。避妊具越しでも、熱かった。
虚勢を嘘と見抜いてかゆっくり指を絡めてきた。
「こっち見てください」
おそるおそるそちらを見ると、彼は真顔のようで微かに穏やかに口角を上げている。
「なまえさん。愛してます」
ベッドで横になっているのに、倒れたくなった。
羞恥と歓喜と胸の痛苦と幸福がまぜこぜになって、ひどく面白い顔になっているのではないか。
飛雄がぎょっとして、上半身起き上がる。
「なんで泣く?!やっぱ痛ぇのか。俺とヤんの嫌だったのか?!」
「……違うの」
慌てふためく彼がおかしくて、涙はすぐに止まった。
「これは感極まってというか……うん……」
再会してプロポーズしたときも実感はなかった。初めてキスしたときも、夢心地で喜びというより驚きが勝っていた。
5年ぶんの想いが昇華された瞬間がいまだった。
こんなにも人を好きになれるということ、好きという思いがあふれるということを痛感して。
「飛雄君が好きで、大好きで、愛してます」
目の前で空気が抜けるように起こした体が倒れていく。顔を覆った手の隙間から、赤くなっているのがわかった。
「クソッ。俺のほうが愛してるからな」
「ありがとう」
唇を落として、着替えを手に取る。
「シャワー浴びてくるね」
体を軽く洗い流して、飛雄にも薦める。彼が風呂場にいる間にお米を炊いて、冷蔵庫になにがあったか確認する。常備野菜は残っているし、卵もある。
卵を巻いているところで、飛雄が隣に立った。
「何作ってんだ」
「ご飯炊いてるし、いま卵焼き焼いてるでしょ、あとはこれからお味噌汁」
「じゃあ俺が味噌汁つくる」
「ありがとう。お願い」
飛雄がそう言いだしたのも、包丁を慣れた手つきで扱うのも、自分がすんなりお願い、などと言えたのが驚きだった。いままでの彼氏は台所に立たせたこともなかった。
お膳を並べていると、昨日もそうしていたような錯覚に陥る。昨日も一昨日も一緒の部屋で寝て起きて、その日を過ごしていて、今日もその延長線上にあって明日もこうしている。
二人でいることが限りなく自然で、しっくりきて。
喧嘩してもこうやって朝になったらご飯を一緒に食べられると思えた。そうだといいな、という希望ではなく、もはや確固たる事実だった。
何日、何か月、何年離れていても、この人を好きでいることはやめられない。
ああ、そっか。
「ごめん」
「あ?何がだ」
「やっぱり、早く結婚したいかも」
「―。おう」
彼の最高のしてやったり、の顔は一生忘れないと思う。それでもかわいいと思ってしまったから、相当飛雄に参ってるんだなぁ。
**
なんだかんだで、飛雄が海外に行くまえに婚姻届を提出した。飛雄が異国で生活の基盤を整えてる間、なまえがゆっくり1年かけて出国の準備と身辺整理を済ませ、夫を追いかける予定だ。
「練習とか試合中はできねーけど」といって、プライベートには指輪を着けてくれた。
実際に式を挙げたときには、モデルで撮影した写真もネットニュースに取り上げられ「影山、二度目の結婚か」との見出しでファンを混乱に陥れた。
海外では High school sweethearts と紹介されていた。
「ハイスクールスウィートハートってどこから…私たち高校生のとき何もなかったのにね」
「インタビューで説明するのにそれが一番手っ取り早かった」
「これ、飛雄君の発言だったの?」
「チームメイトに話したらそう言われたし短くて覚えやすかったんだよ」
以降ことあるごとに
How did you guys meet each other?
と聞かれるが、飛雄は
She is my high school sweetheart.
と答えるのが常だった。
片思い歴5年、交際歴0日、婚約歴2か月、結婚歴…継続中。
**
終わり。
読んでくださりありがとうございます。
解説
題名:"Say those three little words" = "Say I love you" 『愛してるって言って』でした。
"high school sweetheart(s)" = 『10代のうちに出会って世間一般より早く結婚する人(カップル)』または『初恋の人』と訳されるときもあります。
影山の最後のあれは、どちらでとってもらってもかまわないかと思います。
あとは短編が少し続きます。
ご注意
以下のページには性描写を匂わせる表現が含まれています。
16歳以下の方の閲覧はご遠慮ください。
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体内時計のおかげで早朝に目が覚めた。隣のやわらかい温もりを引き寄せる。
このかすかな寝息ですら愛おしい。
飽くことなく眺めていたら、外が明るくなってカーテンからうっすら光が漏れてきた。
まつげがゆっくり上がって、飛雄に視点が合わさる。あ、う、とためらった口が開く。
「……おはよう」
「はよ」
いままでだって酒を飲んでも記憶が混濁したことはない。昨夜なにがあって今につながっているのかしっかり自覚していた。帰らないで、なんて男の人に初めて言った。
むずむずする。
妙な間があって、長い指がこあの頬を撫でる。
「その。い……痛、くない、ですか」
最大限なまえの体を気遣った優しさが、恥ずかしい。
「……ダイジョウブ」
そうは言ったが、変な感じがする。痛みはないけれども、まだナカに入ってるみたいな違和感が。避妊具越しでも、熱かった。
虚勢を嘘と見抜いてかゆっくり指を絡めてきた。
「こっち見てください」
おそるおそるそちらを見ると、彼は真顔のようで微かに穏やかに口角を上げている。
「なまえさん。愛してます」
ベッドで横になっているのに、倒れたくなった。
羞恥と歓喜と胸の痛苦と幸福がまぜこぜになって、ひどく面白い顔になっているのではないか。
飛雄がぎょっとして、上半身起き上がる。
「なんで泣く?!やっぱ痛ぇのか。俺とヤんの嫌だったのか?!」
「……違うの」
慌てふためく彼がおかしくて、涙はすぐに止まった。
「これは感極まってというか……うん……」
再会してプロポーズしたときも実感はなかった。初めてキスしたときも、夢心地で喜びというより驚きが勝っていた。
5年ぶんの想いが昇華された瞬間がいまだった。
こんなにも人を好きになれるということ、好きという思いがあふれるということを痛感して。
「飛雄君が好きで、大好きで、愛してます」
目の前で空気が抜けるように起こした体が倒れていく。顔を覆った手の隙間から、赤くなっているのがわかった。
「クソッ。俺のほうが愛してるからな」
「ありがとう」
唇を落として、着替えを手に取る。
「シャワー浴びてくるね」
体を軽く洗い流して、飛雄にも薦める。彼が風呂場にいる間にお米を炊いて、冷蔵庫になにがあったか確認する。常備野菜は残っているし、卵もある。
卵を巻いているところで、飛雄が隣に立った。
「何作ってんだ」
「ご飯炊いてるし、いま卵焼き焼いてるでしょ、あとはこれからお味噌汁」
「じゃあ俺が味噌汁つくる」
「ありがとう。お願い」
飛雄がそう言いだしたのも、包丁を慣れた手つきで扱うのも、自分がすんなりお願い、などと言えたのが驚きだった。いままでの彼氏は台所に立たせたこともなかった。
お膳を並べていると、昨日もそうしていたような錯覚に陥る。昨日も一昨日も一緒の部屋で寝て起きて、その日を過ごしていて、今日もその延長線上にあって明日もこうしている。
二人でいることが限りなく自然で、しっくりきて。
喧嘩してもこうやって朝になったらご飯を一緒に食べられると思えた。そうだといいな、という希望ではなく、もはや確固たる事実だった。
何日、何か月、何年離れていても、この人を好きでいることはやめられない。
ああ、そっか。
「ごめん」
「あ?何がだ」
「やっぱり、早く結婚したいかも」
「―。おう」
彼の最高のしてやったり、の顔は一生忘れないと思う。それでもかわいいと思ってしまったから、相当飛雄に参ってるんだなぁ。
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なんだかんだで、飛雄が海外に行くまえに婚姻届を提出した。飛雄が異国で生活の基盤を整えてる間、なまえがゆっくり1年かけて出国の準備と身辺整理を済ませ、夫を追いかける予定だ。
「練習とか試合中はできねーけど」といって、プライベートには指輪を着けてくれた。
実際に式を挙げたときには、モデルで撮影した写真もネットニュースに取り上げられ「影山、二度目の結婚か」との見出しでファンを混乱に陥れた。
海外では High school sweethearts と紹介されていた。
「ハイスクールスウィートハートってどこから…私たち高校生のとき何もなかったのにね」
「インタビューで説明するのにそれが一番手っ取り早かった」
「これ、飛雄君の発言だったの?」
「チームメイトに話したらそう言われたし短くて覚えやすかったんだよ」
以降ことあるごとに
と聞かれるが、飛雄は
She is my high school sweetheart.
と答えるのが常だった。
片思い歴5年、交際歴0日、婚約歴2か月、結婚歴…継続中。
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終わり。
読んでくださりありがとうございます。
解説
題名:"Say those three little words" = "Say I love you" 『愛してるって言って』でした。
"high school sweetheart(s)" = 『10代のうちに出会って世間一般より早く結婚する人(カップル)』または『初恋の人』と訳されるときもあります。
影山の最後のあれは、どちらでとってもらってもかまわないかと思います。
あとは短編が少し続きます。