Say those three little words.
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ご注意
このページには、ごく軽い性描写が含まれています。
16歳以下の方の閲覧はお控えください。
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急に明日予定していたバレーのイベントがキャンセルになった、と連絡があったのは夕方になってからだった。
時間ができたとあれば恋しくなるのは必須で、考える前に電話をかけていた。
『はい。飛雄君?』
「いま家にいるのか?」
『うん、どうしたの』
「会いたい。家まで行っていい、ですか」
急に出てきた敬語に、微笑みを漏らす。
『大丈夫だよ。飛雄君、夕ご飯は?』
「もう食った。なまえは?」
『私も食べたよ。じゃあ、遅くなりそうだし泊まってけば?うちでお酒飲む?』
そんな簡単に誘うのかよ。酒と泊まりって、マズくないか。いや付き合ってるんだしいいのか。……いいよな?
「……わかった。もう少ししたらこっち出る」
『うん、お待ちしてます』
潔子とか冴子を相手にしている感覚で誘ってしまったけど良かっただろうか。彼氏との距離感がわからない。過去の経験が参考にならないので困る。
おつまみになりそうなもの、と棚を探りつつお酒のボトルを台所に並べる。応援席で同席することが多かった冴子とはすぐ打ち解けて、なまえが一人暮らしをするようになってから泊まりにくるようなった。夕食を共にすると同時に酒を飲む。飲み続けるので、そのまま床で寝転がっているというのが正直なところだが。彼女は酒を持参するし、なまえも酒の肴を切らさないようにしていた。
**
軽そうなバックパックひとつでやってきた飛雄は、帽子と眼鏡着用だった。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
「座ってて」
お皿にチーズと生ハムを乗せながら、ワイングラスとウィスキーグラスどちらを出すべきか迷う。
「飛雄君は何飲む?ワインとか日本酒とか焼酎もあるよ」
度数の高いものばかりが並ぶ棚。
「なにかともらうんだけど、ひとりでは飲まないからあまり減らなくて」
「……こあと同じもんでいい。家で誰かと飲むのか?」
「潔子と仁花ちゃんがたまに泊まっていくよ。いつもお酒置いていくのは冴子さん」
女子の名前しか挙がらないことにほっとした。
「じゃあワインでいい?赤飲める?」
「ああ」
泊まってけば、との誘いにホイホイやってきたけれども、なまえが万が一を想定しているようには思えない。よこしまな考えを一方的に押し付けてはいけない。
自室ですっかりくつろいでいるなまえは、友人と飲んでいるように振舞う。
ただ座っているだけで特別なことはしていないのに、露出の多い服でもないのに、匂い立つような色気にまとわれている。
まるでその肢体の魅力をわかっていないかのような初心な微笑で。
「……飛雄君、どうかした?」
珍しく緊張しているように固い。
「ここ、店とかじゃねぇし、二人きりだし……」
「うん、それが?」
「ダメだろ」
「なにが?」
目を合わせてくれない。
「疲れてるの?」
「いや、」
細い両腕が伸びて、首に絡みつく。
「いつも頑張ってるもんねぇ、飛雄君は」
よしよし、なんて頭を撫でるものだから脳内が真っ白になった。酒に混じって、なにか別のしっとりした香りがする。
酔ってやがる。
「髪の毛サラサラ……」
すとん、と膝立ちから腰を落とす。飛雄の首の後ろで手を組んではいるが、見上げる形になった。
血色は変わらずも、細めた目はうっすら潤んでいるし、唇は柔らかそうだし、首は細くて滑らかな線を描いていて、ああいや耳がほんのり赤い。
「飛雄君、かっこいい。好き」
唇を合わせると、双方の口にワインの酸味が残っていた。それが次第に甘く感じられてくる。だんだんと姿勢が前のめりになっていって、ソファの背にぶつかった。
「襲うぞ」
「―え?」
瞳があまりにも澄んでいて、理性が警告を発した。
「わりぃ―走ってくる!」
止める間もなく、玄関を駆け抜けた。
「え、いまから……ってほんとに行っちゃうなんて」
わざわざ汗かきにいくなんて。お風呂用意しておいてあげたほうがいいだろうか。走るって、何分?
荷物もスマホも置いているし、戻ってはくるのだろう。
―襲うぞ。
脳内で音声が再生される。まっすぐな瞳はこちらを射抜いていて、苦しそうでもあった。
新しいグラスにペットボトルの水を注いで飲むと、アルコールの味がした。水のペットボトルの隣には日本酒が並んでいる。なにをどう間違えば取り違えるのか信じられない。
「……」
自分もたいがい取り乱している。飛雄のことが心配なのに、さっきのキスを思い出したりしているし。手の中にあるものに口をつけて、ああこれお酒だった、でも美味しい。と繰り返す。冴子の選別に合格した品だ、味も香りも素晴らしく、水のように飲みやすくてするする体を通る。
15分経って、浴槽にお湯を張り始めた。
お湯もとっくに用意できた。飛び出してから半時になるが、飛雄は戻ってこない。スマホは床に投げ出されたまま沈黙しているし、遠くまで行って迷子になってたりしたらどうしよう。
自分のものと飛雄のスマホをポケットに入れて、自宅の鍵を握り自らも外にでた。
アパートの周囲を一周して、水でも買い置きしておこうと立ち寄ったコンビニで飛雄と鉢合わせした。
「おいなに外に出てんだ夜中だぞ」
「飛雄君がいきなり出てくからでしょ」
スマホを押し付けると飛雄はサンキュ、と呟いた。
「ちょっと……頭冷やしてきた」
「体も冷えちゃうでしょ。あと飛雄君がお水たくさん飲むかなって思っていまコンビニで買うところ」
「水ならいま自分で買った」
「そっか~。じゃあ帰ろう。お家でお風呂沸かしてるから入って?ほら、冷めちゃう」
「風呂って……」
「走って汗かいたでしょ?」
「……あぁ」
なんでこんなんで歴代彼氏に襲われなかったんだ。意味わかんねぇ。
しっかり手をつないで帰った。
**
ワインは片付けて、なまえは透明なグラスを手にしている。
「風呂、サンキュ」
「ふふ、いいえー」
嬉しそうに首を傾げる。ある意味酒癖が悪い。
「じゃあ私も入ろうかな」
「まだ酒回ってるんなら風呂入るな。危ねぇから」
「えーだってお化粧落としたい」
「……シャワーにしとけよ」
なまえが置いたグラスの中身を少し舐める。
日本酒じゃねぇか。
極上に舌触りが良くて、甘い。けど度数どんだけだよ。
**
「気分は?」
風呂上りに一番にそう聞かれて、大丈夫だと答えた。
「そんなに飲んでないし、記憶失くしたりしないよ」
受け答えもしっかりしているのに。飛雄は構わず水の入ったコップを差し出す。
「飲め」
「はぁい。ありがとう」
化粧を落としても、変わらない美しさ。少し幼くなったようで学生時代を彷彿とさせる。
少し頭を上げてグラスを受け止めるために開けた唇が、喉が動くだけで、自分の脳が勝手に蠱惑なものだと変換する。今夜はダメだ。
「……やっぱ帰る」
「帰るって……家に?今から?どうして?」
純粋にわからなくてきかれるので、ため息がもれる。
「我慢できねぇから。こあを押し倒すことばっか考えてる。だから帰る」
「……私たち、一緒にいられる時間少ないんだよ。せっかく時間できたのに」
「それどころじゃねぇ」
バックパックを腕にとると、か細い手に阻まれる。たったそれだけでせっかく静めた身体の熱が復活しそうだ。
「やだ。帰らないで」
彼女からの口づけで、全部もってかれた。
浮いた荷物が音を立てて床に着地する。
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ご注意
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急に明日予定していたバレーのイベントがキャンセルになった、と連絡があったのは夕方になってからだった。
時間ができたとあれば恋しくなるのは必須で、考える前に電話をかけていた。
『はい。飛雄君?』
「いま家にいるのか?」
『うん、どうしたの』
「会いたい。家まで行っていい、ですか」
急に出てきた敬語に、微笑みを漏らす。
『大丈夫だよ。飛雄君、夕ご飯は?』
「もう食った。なまえは?」
『私も食べたよ。じゃあ、遅くなりそうだし泊まってけば?うちでお酒飲む?』
そんな簡単に誘うのかよ。酒と泊まりって、マズくないか。いや付き合ってるんだしいいのか。……いいよな?
「……わかった。もう少ししたらこっち出る」
『うん、お待ちしてます』
潔子とか冴子を相手にしている感覚で誘ってしまったけど良かっただろうか。彼氏との距離感がわからない。過去の経験が参考にならないので困る。
おつまみになりそうなもの、と棚を探りつつお酒のボトルを台所に並べる。応援席で同席することが多かった冴子とはすぐ打ち解けて、なまえが一人暮らしをするようになってから泊まりにくるようなった。夕食を共にすると同時に酒を飲む。飲み続けるので、そのまま床で寝転がっているというのが正直なところだが。彼女は酒を持参するし、なまえも酒の肴を切らさないようにしていた。
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軽そうなバックパックひとつでやってきた飛雄は、帽子と眼鏡着用だった。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
「座ってて」
お皿にチーズと生ハムを乗せながら、ワイングラスとウィスキーグラスどちらを出すべきか迷う。
「飛雄君は何飲む?ワインとか日本酒とか焼酎もあるよ」
度数の高いものばかりが並ぶ棚。
「なにかともらうんだけど、ひとりでは飲まないからあまり減らなくて」
「……こあと同じもんでいい。家で誰かと飲むのか?」
「潔子と仁花ちゃんがたまに泊まっていくよ。いつもお酒置いていくのは冴子さん」
女子の名前しか挙がらないことにほっとした。
「じゃあワインでいい?赤飲める?」
「ああ」
泊まってけば、との誘いにホイホイやってきたけれども、なまえが万が一を想定しているようには思えない。よこしまな考えを一方的に押し付けてはいけない。
自室ですっかりくつろいでいるなまえは、友人と飲んでいるように振舞う。
ただ座っているだけで特別なことはしていないのに、露出の多い服でもないのに、匂い立つような色気にまとわれている。
まるでその肢体の魅力をわかっていないかのような初心な微笑で。
「……飛雄君、どうかした?」
珍しく緊張しているように固い。
「ここ、店とかじゃねぇし、二人きりだし……」
「うん、それが?」
「ダメだろ」
「なにが?」
目を合わせてくれない。
「疲れてるの?」
「いや、」
細い両腕が伸びて、首に絡みつく。
「いつも頑張ってるもんねぇ、飛雄君は」
よしよし、なんて頭を撫でるものだから脳内が真っ白になった。酒に混じって、なにか別のしっとりした香りがする。
酔ってやがる。
「髪の毛サラサラ……」
すとん、と膝立ちから腰を落とす。飛雄の首の後ろで手を組んではいるが、見上げる形になった。
血色は変わらずも、細めた目はうっすら潤んでいるし、唇は柔らかそうだし、首は細くて滑らかな線を描いていて、ああいや耳がほんのり赤い。
「飛雄君、かっこいい。好き」
唇を合わせると、双方の口にワインの酸味が残っていた。それが次第に甘く感じられてくる。だんだんと姿勢が前のめりになっていって、ソファの背にぶつかった。
「襲うぞ」
「―え?」
瞳があまりにも澄んでいて、理性が警告を発した。
「わりぃ―走ってくる!」
止める間もなく、玄関を駆け抜けた。
「え、いまから……ってほんとに行っちゃうなんて」
わざわざ汗かきにいくなんて。お風呂用意しておいてあげたほうがいいだろうか。走るって、何分?
荷物もスマホも置いているし、戻ってはくるのだろう。
―襲うぞ。
脳内で音声が再生される。まっすぐな瞳はこちらを射抜いていて、苦しそうでもあった。
新しいグラスにペットボトルの水を注いで飲むと、アルコールの味がした。水のペットボトルの隣には日本酒が並んでいる。なにをどう間違えば取り違えるのか信じられない。
「……」
自分もたいがい取り乱している。飛雄のことが心配なのに、さっきのキスを思い出したりしているし。手の中にあるものに口をつけて、ああこれお酒だった、でも美味しい。と繰り返す。冴子の選別に合格した品だ、味も香りも素晴らしく、水のように飲みやすくてするする体を通る。
15分経って、浴槽にお湯を張り始めた。
お湯もとっくに用意できた。飛び出してから半時になるが、飛雄は戻ってこない。スマホは床に投げ出されたまま沈黙しているし、遠くまで行って迷子になってたりしたらどうしよう。
自分のものと飛雄のスマホをポケットに入れて、自宅の鍵を握り自らも外にでた。
アパートの周囲を一周して、水でも買い置きしておこうと立ち寄ったコンビニで飛雄と鉢合わせした。
「おいなに外に出てんだ夜中だぞ」
「飛雄君がいきなり出てくからでしょ」
スマホを押し付けると飛雄はサンキュ、と呟いた。
「ちょっと……頭冷やしてきた」
「体も冷えちゃうでしょ。あと飛雄君がお水たくさん飲むかなって思っていまコンビニで買うところ」
「水ならいま自分で買った」
「そっか~。じゃあ帰ろう。お家でお風呂沸かしてるから入って?ほら、冷めちゃう」
「風呂って……」
「走って汗かいたでしょ?」
「……あぁ」
なんでこんなんで歴代彼氏に襲われなかったんだ。意味わかんねぇ。
しっかり手をつないで帰った。
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ワインは片付けて、なまえは透明なグラスを手にしている。
「風呂、サンキュ」
「ふふ、いいえー」
嬉しそうに首を傾げる。ある意味酒癖が悪い。
「じゃあ私も入ろうかな」
「まだ酒回ってるんなら風呂入るな。危ねぇから」
「えーだってお化粧落としたい」
「……シャワーにしとけよ」
なまえが置いたグラスの中身を少し舐める。
日本酒じゃねぇか。
極上に舌触りが良くて、甘い。けど度数どんだけだよ。
**
「気分は?」
風呂上りに一番にそう聞かれて、大丈夫だと答えた。
「そんなに飲んでないし、記憶失くしたりしないよ」
受け答えもしっかりしているのに。飛雄は構わず水の入ったコップを差し出す。
「飲め」
「はぁい。ありがとう」
化粧を落としても、変わらない美しさ。少し幼くなったようで学生時代を彷彿とさせる。
少し頭を上げてグラスを受け止めるために開けた唇が、喉が動くだけで、自分の脳が勝手に蠱惑なものだと変換する。今夜はダメだ。
「……やっぱ帰る」
「帰るって……家に?今から?どうして?」
純粋にわからなくてきかれるので、ため息がもれる。
「我慢できねぇから。こあを押し倒すことばっか考えてる。だから帰る」
「……私たち、一緒にいられる時間少ないんだよ。せっかく時間できたのに」
「それどころじゃねぇ」
バックパックを腕にとると、か細い手に阻まれる。たったそれだけでせっかく静めた身体の熱が復活しそうだ。
「やだ。帰らないで」
彼女からの口づけで、全部もってかれた。
浮いた荷物が音を立てて床に着地する。
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