Say those three little words.
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**
「なまえさん!」
「なまえ先輩!」
「はい」
「チアリーディングやってください!」
田中と西谷がぴしりと90度に体を曲げる。突拍子もない嘆願に悩む。
「チア……?私ひとりではちょっと……。いつも応援してるよ。それじゃダメなの?」
普段の応援では足りないということだろうか。私は声が特段通るほうでも大きいわけでもないけれど、みんなには伝わっていると自負していた。
「だって!白鳥沢とかチアリーディング羨ましくて……!」
「ミニスカとかポンポンとかかわいいじゃないっすかぁぁぁ!」
礼の型は崩れ去って、床にはいつくばって終いには泣いている。
白鳥沢の応援に気圧されていただけではなく強豪校ならではの応援団に憧れてしまったわけか。
「あれはかわいいけど……私はジャンプしたり組体操なんてできないよ」
「応援しなくてもいいですからチア服着てくださいぃぃ」
「黙って立ってるだけでいいッスぅぅぅ」
「……えっと?」
「それは本末転倒だろ。ふざけるのもたいがいにしろ」
辛辣に口にするのは縁下。
「衣装着るだけ……って。でも」
それってただのコスプレなのでは、と不安がよぎる。
「着てくれるんですか!」
二人が涙を流しながら目を輝かせた。背後から威厳の固まりが手でそれぞれの頭をわしづかむ。
「苗字にコスプレ紛いのことはさせないからな」
「ヒッ」
「スンマセン」
清水がなまえをかばうように仁王立ちする。
「マネの誰にも着させません。なまえも、田中と西谷を甘やかさないで」
「特別扱いしたことはないよ?いまのも二人が早とちりして」
「わかってる。でも、もっと厳しくしてもいいくらい」
「他が厳しいぶん誰かが優しくしても良いんじゃない?私ができることで元気出してくれるなら」
「調子乗って手が付けられなくなったらなまえが責任とってくれるの?」
「そんなことある……?」
「ある」
「ではほどほどにするよう、心がけます」
「ん」
しかし3年の警備班を目の当たりにしても、二人は諦めきれないようだった。
「なまえさん~~~~」
「なまえ先輩~~~~」
期待のこもった目にたじたじする。
「チアリーダーにはなれないし、これから二人のお願い聞くのは控えめにしようと思うの。ごめんね」
二人の烏野の元気玉がぐずりだす。
「そんな!」
「俺らのヒーリングスポットが!オアシスが!」
「お前らは砂漠でも生きていける」
縁下に首根っこを掴まれて引きずられていくので手を振る。
「頼みこめば着てくれると思ったのにぃぃぃ」
「うおぉぉぉチア服見たかったぁぁぁぁ」
数歩引いたところで、大騒ぎしている先輩たちを見てぽつり。
「なにあれ」
「正直、チア服はアリよりのアリだと思う」
日向が真顔で決め台詞として言いきったうえに山口が頷いている。
「アリ……」
「苗字先輩あれでいてガード固いし。土台無理でしょ」
「防御力が高ぇのか」
「馬鹿なの影山」
「なんだと月島ボゲェ」
これみよがしにため息をついて、解説を加える。
「だから……。男はぐらかすの上手いって意味だよ」
「あー確かに。話しかけやすいけど、深いところまで踏み込ませない感じある。狙ってきてる奴は特に」
肩透かしを食らっている男がどれだけいるやら。
「……??? そうか?」
「どうせバレー部は安全地帯みたいなもんだから気を張らなくていいとか思ってるんでしょ」
「ツッキーの言う通り。2年の監視もあるわけだし」
「ここが安全地帯って、他は戦場かよ」
「まぁ、男たちの戦場だよね…」
山口が苦笑していた。
**
外での作業がすぐ終わると思って、油断した。寒い。体を震わせくしゃみを連発する。そんなに寒くならないだろうと更衣室に上着を置いてきた。シャツの隙間から冷たい風が容赦なく吹き込んでくる。
もう季節が変わってしまう。この学校にいれる最後の季節へと。
後ろから肩にかけられた黒いジャージに目を疑った。
「寒いなら着ててください。今日はまだ使ってねーし」
「影山君これ……」
「俺なら平気です。ランニングしてきてまだ暑いんで」
「こんな簡単に貸しちゃダメだよ」
「ただのジャージすよ」
布でできてる。運動するための、寒さをしのぐための衣服。ただ、背面に刻まれた文字は他に見られない。選ばれた者しか着ることのできない称号。
部外者意識に捕らわれているなまえ。
「ジャージに込められた想いとか!あるでしょ。普通の人には着れない特別で!こんなふうにないがしろに扱っちゃダメだよ」
「苗字先輩は烏野にとって大事な人だ」
「……えぇ?」
「だからジャージをないがしろにしたわけじゃねぇ。……です。風邪ひかないでください」
大事なものを大事な人を守るために使っただけだ、と。
「……ありがとう」
**
「え、あれって俺らが見ていい場面?」
体育館の扉の内側で、東峰が両手に挟んだボールを持ち上げて己の視界を塞ぐ。
「苗字って、いちいち考えが重いよなぁ」
会話の内容まではこちらまで届かないが、ジャージを被せる影山に遠慮しているなまえという一連の流れを見て、だいたいのことは想像がついた。
「スガ……っ!オブラート!」
澤村が自由な口を覆いかける。どうせあちらには届かないのに。
「あんなん喜んで着ときゃいいのにさ。素直に受け取りもできないなんて拗らせてんべ」
「……否定はしない」
「あ、あっちで清水がケータイ構えてる」
少し遠くで、ジャージの前をかきあわせるなまえに焦点を合わせていた。
「撮ったな」
「盗撮 ってんな」
「良かったなぁ、苗字」
袖を引っ張って手を出している間のシャッター音に振り返ったなまえが清水にかけよる。勢いあまって抱き着いていた。
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「なまえさん!」
「なまえ先輩!」
「はい」
「チアリーディングやってください!」
田中と西谷がぴしりと90度に体を曲げる。突拍子もない嘆願に悩む。
「チア……?私ひとりではちょっと……。いつも応援してるよ。それじゃダメなの?」
普段の応援では足りないということだろうか。私は声が特段通るほうでも大きいわけでもないけれど、みんなには伝わっていると自負していた。
「だって!白鳥沢とかチアリーディング羨ましくて……!」
「ミニスカとかポンポンとかかわいいじゃないっすかぁぁぁ!」
礼の型は崩れ去って、床にはいつくばって終いには泣いている。
白鳥沢の応援に気圧されていただけではなく強豪校ならではの応援団に憧れてしまったわけか。
「あれはかわいいけど……私はジャンプしたり組体操なんてできないよ」
「応援しなくてもいいですからチア服着てくださいぃぃ」
「黙って立ってるだけでいいッスぅぅぅ」
「……えっと?」
「それは本末転倒だろ。ふざけるのもたいがいにしろ」
辛辣に口にするのは縁下。
「衣装着るだけ……って。でも」
それってただのコスプレなのでは、と不安がよぎる。
「着てくれるんですか!」
二人が涙を流しながら目を輝かせた。背後から威厳の固まりが手でそれぞれの頭をわしづかむ。
「苗字にコスプレ紛いのことはさせないからな」
「ヒッ」
「スンマセン」
清水がなまえをかばうように仁王立ちする。
「マネの誰にも着させません。なまえも、田中と西谷を甘やかさないで」
「特別扱いしたことはないよ?いまのも二人が早とちりして」
「わかってる。でも、もっと厳しくしてもいいくらい」
「他が厳しいぶん誰かが優しくしても良いんじゃない?私ができることで元気出してくれるなら」
「調子乗って手が付けられなくなったらなまえが責任とってくれるの?」
「そんなことある……?」
「ある」
「ではほどほどにするよう、心がけます」
「ん」
しかし3年の警備班を目の当たりにしても、二人は諦めきれないようだった。
「なまえさん~~~~」
「なまえ先輩~~~~」
期待のこもった目にたじたじする。
「チアリーダーにはなれないし、これから二人のお願い聞くのは控えめにしようと思うの。ごめんね」
二人の烏野の元気玉がぐずりだす。
「そんな!」
「俺らのヒーリングスポットが!オアシスが!」
「お前らは砂漠でも生きていける」
縁下に首根っこを掴まれて引きずられていくので手を振る。
「頼みこめば着てくれると思ったのにぃぃぃ」
「うおぉぉぉチア服見たかったぁぁぁぁ」
数歩引いたところで、大騒ぎしている先輩たちを見てぽつり。
「なにあれ」
「正直、チア服はアリよりのアリだと思う」
日向が真顔で決め台詞として言いきったうえに山口が頷いている。
「アリ……」
「苗字先輩あれでいてガード固いし。土台無理でしょ」
「防御力が高ぇのか」
「馬鹿なの影山」
「なんだと月島ボゲェ」
これみよがしにため息をついて、解説を加える。
「だから……。男はぐらかすの上手いって意味だよ」
「あー確かに。話しかけやすいけど、深いところまで踏み込ませない感じある。狙ってきてる奴は特に」
肩透かしを食らっている男がどれだけいるやら。
「……??? そうか?」
「どうせバレー部は安全地帯みたいなもんだから気を張らなくていいとか思ってるんでしょ」
「ツッキーの言う通り。2年の監視もあるわけだし」
「ここが安全地帯って、他は戦場かよ」
「まぁ、男たちの戦場だよね…」
山口が苦笑していた。
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外での作業がすぐ終わると思って、油断した。寒い。体を震わせくしゃみを連発する。そんなに寒くならないだろうと更衣室に上着を置いてきた。シャツの隙間から冷たい風が容赦なく吹き込んでくる。
もう季節が変わってしまう。この学校にいれる最後の季節へと。
後ろから肩にかけられた黒いジャージに目を疑った。
「寒いなら着ててください。今日はまだ使ってねーし」
「影山君これ……」
「俺なら平気です。ランニングしてきてまだ暑いんで」
「こんな簡単に貸しちゃダメだよ」
「ただのジャージすよ」
布でできてる。運動するための、寒さをしのぐための衣服。ただ、背面に刻まれた文字は他に見られない。選ばれた者しか着ることのできない称号。
部外者意識に捕らわれているなまえ。
「ジャージに込められた想いとか!あるでしょ。普通の人には着れない特別で!こんなふうにないがしろに扱っちゃダメだよ」
「苗字先輩は烏野にとって大事な人だ」
「……えぇ?」
「だからジャージをないがしろにしたわけじゃねぇ。……です。風邪ひかないでください」
大事なものを大事な人を守るために使っただけだ、と。
「……ありがとう」
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「え、あれって俺らが見ていい場面?」
体育館の扉の内側で、東峰が両手に挟んだボールを持ち上げて己の視界を塞ぐ。
「苗字って、いちいち考えが重いよなぁ」
会話の内容まではこちらまで届かないが、ジャージを被せる影山に遠慮しているなまえという一連の流れを見て、だいたいのことは想像がついた。
「スガ……っ!オブラート!」
澤村が自由な口を覆いかける。どうせあちらには届かないのに。
「あんなん喜んで着ときゃいいのにさ。素直に受け取りもできないなんて拗らせてんべ」
「……否定はしない」
「あ、あっちで清水がケータイ構えてる」
少し遠くで、ジャージの前をかきあわせるなまえに焦点を合わせていた。
「撮ったな」
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「良かったなぁ、苗字」
袖を引っ張って手を出している間のシャッター音に振り返ったなまえが清水にかけよる。勢いあまって抱き着いていた。
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