Say those three little words.
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できたぞ、なまえも一緒に食べればいい、とカウンターに二つトレイが並べられていた。
「これくらいで足りる?」
大好物のカレーに唐揚げまで乗っかっているのでこくこく、と目を輝かせている。
「いただきます」
それに続いてスプーンを手に取った。
肉の固まりを一口で丸のみして、電撃が走ったかのように動きが止まる。
「この唐揚げなんすか。スゲーうまい」
「おいしいでしょ。うちでは人気なの」
「これ、うまいっす!」
感動のあまり叫ぶと厨房の片づけをしている父親が、そりゃあ良かったと嬉しそうにした。娘に食べ終わったら新しい油を厨房に運んでおいてくれ、と言い残して奥に引っ込む。
分量に2倍以上の差があったにも関わらず、二人の食事が終わったのはほぼ同時だった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
食器をまとめて厨房に運んでいる間に、影山は席の台拭きを済ませてくれていた。食べたばかりだしゆっくりしてね、とお茶を出す。
父親の言いつけがあったので目的の油缶を貯蔵室まで取りに行く。小さな部屋には棚がぐるりと設置してあり、常温保存の野菜から調味道具やたまにしか使わない大鍋までを保管している。誰が仕舞ったのか、段ボールで包装された油缶は棚の上に放置されており、いつも足元にあるはずの踏み台がない。
「お父さん、どうして上のほうに置いておくの」
厨房まで文句を言いに父親を探すが、まだ戻ってきてはいない。居住区に繋がる部屋で母と夕食をとっているのかもしれない。幸い踏み台は見つかったので、折りたたみのそれを抱えて貯蔵室まで戻った。
足音がするな、と思えば影山が貯蔵室を覗き込んでくる。勝手に入ってくるのはためらっている様子だ。
「俺、取ります」
「大丈夫だよ、これで手が届くし」
踏み台に上れば、影山と目線がほぼ同じになった。この高さ、新鮮。
容器のバンドに指を引っかけて、手前に引っ張る。端までくれば重さで傾いて揺れ、急落下する。
後ろから大きなものが包み込むのを感じた。背中は胸にぴったりと、腕に腕が重なっている。底上げで背の高さは並んだのに、肩幅も腕の長さも歴然とした差がある。
「チッ。……っぶねーなクソが」
ごく近距離で聞こえた舌打ちに、びくりと怯える。そりゃあ舌打ちもしたくなるだろう。影山がいなければ怪我をしていたかもしれない。
しなやかな両手はバンドを掴んですんでのところで箱の底を損傷から守っていた。それを下して、影山は体を離した。
「ごめんなさい」
やっとそれだけ口にして、自分はどんな顔をしているのか不安になった。
「先輩に怒ったわけじゃないです。ビビってつい」
口が悪いのはもともとなんで、と言い訳するが首を振る。
暴言よりも接触のほうに意識が取られて平生ではいられない。
「手、痛くない?セッターの大事な手なのに」
「平気です。ほかに必要なもんありますか」
「ううん、これだけで大丈夫。カートもあるから一人で運べるよ」
カートに乗せるまでしてくれて、なんだか頭が上がらない。
「……じゃあ、俺そろそろ帰ります」
「いろいろありがとう」
「また唐揚げ食いにきます」
「お口に合ったようで嬉しいです」
**
家に帰りついても甘ったるい匂いがまとわりついている。風呂に入ったら落ちたが、あれはいったいなんだっただのだろう。眠りに落ちる直前に、それがなまえの残り香だったことに思い至った。
翌朝にはすっかり記憶から抜け落ち、唐揚げの美味さしか覚えてなかった。
**
休憩中の何気ない雑談だった。
「なぁ、みんな夕メシなんだった?おれんとこ親子丼」
「肉じゃが」
「シチュー」
それぞれの昨夜のメニューを列挙するなか、影山がボールを手の中で回しながら答えた。
「ポークカレー温玉乗せ。唐揚げ付き」
「何それめっちゃ豪華じゃん。お前ん家」
「苗字先輩ん家」
「は??」
「影山、苗字の店に行ったのか」
「はい。唐揚げがスゲーうまくて…あんなん初めて食いました」
「ああ、シロガラスの唐揚げうめーよな」
「シロナガス?」
「それはクジラだろ」
月島が面倒そうに突っ込みを入れる。山口が店の名前を復唱して教える。
「え??シロガラスの唐揚げ?どういうこと?」
「1年は知らねぇか。苗字先輩のご実家は定食屋で学生にはサービスしてくれるぜ」
西谷が得意気に紹介するので、
「マジですか。今度行ってみよ。場所どこ?」
「商店街の中」
「ヨッシャみんなで行くか」
菅原が提案するも、東峰に却下される。
「急に全員で行ったら迷惑じゃないのか」
さすがにこの大人数は貸切にでもしない限り一度にさばききれない。
「なら今度改めて予約してから、だな。とりあえずみんなに地図共有するべ。各々好きなときに行ってこーい」
「オネシャス!」
菅原がケータイ片手に送信、と呟いた。
**
もし学生時代みんなスマホでL*NEやってたら。
と想定して、地図共有してみんな帰宅後のグループチャットです。
こちらでお名前登録をしてからお読みください。
HQストーリー
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できたぞ、なまえも一緒に食べればいい、とカウンターに二つトレイが並べられていた。
「これくらいで足りる?」
大好物のカレーに唐揚げまで乗っかっているのでこくこく、と目を輝かせている。
「いただきます」
それに続いてスプーンを手に取った。
肉の固まりを一口で丸のみして、電撃が走ったかのように動きが止まる。
「この唐揚げなんすか。スゲーうまい」
「おいしいでしょ。うちでは人気なの」
「これ、うまいっす!」
感動のあまり叫ぶと厨房の片づけをしている父親が、そりゃあ良かったと嬉しそうにした。娘に食べ終わったら新しい油を厨房に運んでおいてくれ、と言い残して奥に引っ込む。
分量に2倍以上の差があったにも関わらず、二人の食事が終わったのはほぼ同時だった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
食器をまとめて厨房に運んでいる間に、影山は席の台拭きを済ませてくれていた。食べたばかりだしゆっくりしてね、とお茶を出す。
父親の言いつけがあったので目的の油缶を貯蔵室まで取りに行く。小さな部屋には棚がぐるりと設置してあり、常温保存の野菜から調味道具やたまにしか使わない大鍋までを保管している。誰が仕舞ったのか、段ボールで包装された油缶は棚の上に放置されており、いつも足元にあるはずの踏み台がない。
「お父さん、どうして上のほうに置いておくの」
厨房まで文句を言いに父親を探すが、まだ戻ってきてはいない。居住区に繋がる部屋で母と夕食をとっているのかもしれない。幸い踏み台は見つかったので、折りたたみのそれを抱えて貯蔵室まで戻った。
足音がするな、と思えば影山が貯蔵室を覗き込んでくる。勝手に入ってくるのはためらっている様子だ。
「俺、取ります」
「大丈夫だよ、これで手が届くし」
踏み台に上れば、影山と目線がほぼ同じになった。この高さ、新鮮。
容器のバンドに指を引っかけて、手前に引っ張る。端までくれば重さで傾いて揺れ、急落下する。
後ろから大きなものが包み込むのを感じた。背中は胸にぴったりと、腕に腕が重なっている。底上げで背の高さは並んだのに、肩幅も腕の長さも歴然とした差がある。
「チッ。……っぶねーなクソが」
ごく近距離で聞こえた舌打ちに、びくりと怯える。そりゃあ舌打ちもしたくなるだろう。影山がいなければ怪我をしていたかもしれない。
しなやかな両手はバンドを掴んですんでのところで箱の底を損傷から守っていた。それを下して、影山は体を離した。
「ごめんなさい」
やっとそれだけ口にして、自分はどんな顔をしているのか不安になった。
「先輩に怒ったわけじゃないです。ビビってつい」
口が悪いのはもともとなんで、と言い訳するが首を振る。
暴言よりも接触のほうに意識が取られて平生ではいられない。
「手、痛くない?セッターの大事な手なのに」
「平気です。ほかに必要なもんありますか」
「ううん、これだけで大丈夫。カートもあるから一人で運べるよ」
カートに乗せるまでしてくれて、なんだか頭が上がらない。
「……じゃあ、俺そろそろ帰ります」
「いろいろありがとう」
「また唐揚げ食いにきます」
「お口に合ったようで嬉しいです」
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家に帰りついても甘ったるい匂いがまとわりついている。風呂に入ったら落ちたが、あれはいったいなんだっただのだろう。眠りに落ちる直前に、それがなまえの残り香だったことに思い至った。
翌朝にはすっかり記憶から抜け落ち、唐揚げの美味さしか覚えてなかった。
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休憩中の何気ない雑談だった。
「なぁ、みんな夕メシなんだった?おれんとこ親子丼」
「肉じゃが」
「シチュー」
それぞれの昨夜のメニューを列挙するなか、影山がボールを手の中で回しながら答えた。
「ポークカレー温玉乗せ。唐揚げ付き」
「何それめっちゃ豪華じゃん。お前ん家」
「苗字先輩ん家」
「は??」
「影山、苗字の店に行ったのか」
「はい。唐揚げがスゲーうまくて…あんなん初めて食いました」
「ああ、シロガラスの唐揚げうめーよな」
「シロナガス?」
「それはクジラだろ」
月島が面倒そうに突っ込みを入れる。山口が店の名前を復唱して教える。
「え??シロガラスの唐揚げ?どういうこと?」
「1年は知らねぇか。苗字先輩のご実家は定食屋で学生にはサービスしてくれるぜ」
西谷が得意気に紹介するので、
「マジですか。今度行ってみよ。場所どこ?」
「商店街の中」
「ヨッシャみんなで行くか」
菅原が提案するも、東峰に却下される。
「急に全員で行ったら迷惑じゃないのか」
さすがにこの大人数は貸切にでもしない限り一度にさばききれない。
「なら今度改めて予約してから、だな。とりあえずみんなに地図共有するべ。各々好きなときに行ってこーい」
「オネシャス!」
菅原がケータイ片手に送信、と呟いた。
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もし学生時代みんなスマホでL*NEやってたら。
と想定して、地図共有してみんな帰宅後のグループチャットです。
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HQストーリー
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