Say those three little words.
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影山のことでわかったことがある。
いつも真顔で近寄りがたいようであり、話しかければちゃんと返事をしてくれる。バレーにかけては類を見ない天才かつ馬鹿。ただしバレー以外はポンコツ。外見で票を稼ぎ、態度でそれを捨てさせる。指先が男子学生にあるまじき手入れの行き届き方で、それはすべて彼をセッターたらしめる証拠。
深刻そうな顔でただ歩いてるだけでも、バレーのことしか考えてないんだなぁと思うとちょっとかわいい。
早くHRが終わって体育館に着いた日に月刊バリボーを広げていると、そわそわとのぞき込んでくる。
鼻血を出して、顔面でレシーブ受けて、喧嘩して、みんな心配させてくるけれど。チームの司令塔で、みんなからの信頼を集めて、みんなを信頼してプレーできる人。できるように変化と成長を繰り返す。
伸びやかなバックトスを上げる背中も、スパイクが決まったときのしたり顔も、なまえを心酔させた。
普段馬鹿っぽくてアホな発言しかしてないのに、このバレー中との落差ったら。
「だめだわ……恋、しそう」
「もうしてるでしょ」
ズバリ言いきった潔子は、柄にもなく意地の悪い表情をしていた。
「潔子!お願い、」
「誰にも言わない」
「大好き!」
抱き着いたところを遠くの西谷田中に見つかったが、なぜか菩薩のように穏やかだった。
**
恋心がみんなの目にさらされたのはいつだっただろう。わかりやすかったに違いない。1年生の長身コンビも片方は不愉快そうに、片方はハラハラとして見守っていていてくれるぐらいだったから。
3年生は協力的で、口にはせずとも話すきっかけをくれたり、集まりには混ぜてくれたり、そっと二人きりになる時間を作ってくれたりした。
「影山、帰り苗字を送ってくれるか」
練習で遅くなると先輩たちが変わるがわる女子を送っていた。今度は自分の番だった。それだけ。
澤村の言に、若輩者である彼は肯定しか示さなかった。
さかさか急いでいるわけでもないのに、悲しいかな身丈つまり足の長さは歩幅に影響する。ずんずん先を進むので、ときに駆け足で追いつこうとするなまえがいた。それが何度も続くので、鈍い影山も自分が置いてけぼりにしているのだと途中で気づき、申し訳なさそうにした。
「スンマセン」
「ううん。影山くんも疲れてるから早く帰りたいよね。良いよ、私は一人で帰れるから」
「や、急いでるつもりじゃなかったスけど。今日TVでバレー特集番組があって録画予約してなくて」
「あ、そっか。ごめんね、じゃあ早く帰って!」
「けど」
「いいから。ここまでありがとう。お疲れさま」
「ウス。っした」
あっさりと、まっすぐの長い脚で駆けだしてしまう。
うん、バレーには勝てないよね。
彼はこちらの慕う気持ちに気づいてないし彼側には微塵も想いはないことを浮き彫りにされて、いっそのこと清々しかった。
気持ち良いくらいにすべての意識をバレーに全振り。他の入りいる隙などない。
翌日潔子に笑いながら話したら、「澤村に言っとく」と冷たい表情をしていたので慌てて止めた。そんなことをしたら3年(東峰以外)が手出ししそうだ。しかも当人からしたら理不尽な理由で。
なまえは関係を進展させるつもりはなかった。無理だとわかっていたから。彼に気持ちがあっても、なまえを見る気概をみせてくれても、付き合うつもりはなかった。色恋よりも進学に集中すべきだし、彼を見ていられるのも数か月しか残っていない。これは恋よりも未熟な憧れだから。姿を見れるだけで満足している自分に、自分の想いもその程度なのだと納得していた。影山もバレーに集中すべきだし、私はわずかでも邪魔して振り回してしまいたくない。
実際は引きずって拗らせて、数年を過ごしてしまうくらい彼に嵌っていたのだけれど。
**
影山。昨日の帰り、苗字を置いて途中で帰ったって、本当か。
はい。見たい番組あったんで。先輩も帰れって言ってくれました。
俺はお前に頼み事をした。お前は引き受けた。なら自分の言葉に責任を持つべきじゃないのか。
……はい。
できないならできないで、頼んだその場で断ってくれて良かったんだ。
でも引き受けて途中で放棄するのは違うだろう。
俺がサーブ100本って言ったらお前は俺が見てなくてもサーブ100本打ちきるんじゃないのか。途中でやめたりしないだろう。
はい。次からは放棄しません。
わかってくれたならいい。これは苗字から聞いたわけじゃないんだ。本人は気にしないだろうから、彼女にはこの会話のことは何も言うなよ。
はい。
珍しい、主将が一対一で影山を叱っている。隣に日向がいるときはよくまとめて怒られているけど。
「見てツッキー、影山の眉間の皺が増えてる……」
「プレーはともかく人格に問題あるから怒られるんデショ」
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影山のことでわかったことがある。
いつも真顔で近寄りがたいようであり、話しかければちゃんと返事をしてくれる。バレーにかけては類を見ない天才かつ馬鹿。ただしバレー以外はポンコツ。外見で票を稼ぎ、態度でそれを捨てさせる。指先が男子学生にあるまじき手入れの行き届き方で、それはすべて彼をセッターたらしめる証拠。
深刻そうな顔でただ歩いてるだけでも、バレーのことしか考えてないんだなぁと思うとちょっとかわいい。
早くHRが終わって体育館に着いた日に月刊バリボーを広げていると、そわそわとのぞき込んでくる。
鼻血を出して、顔面でレシーブ受けて、喧嘩して、みんな心配させてくるけれど。チームの司令塔で、みんなからの信頼を集めて、みんなを信頼してプレーできる人。できるように変化と成長を繰り返す。
伸びやかなバックトスを上げる背中も、スパイクが決まったときのしたり顔も、なまえを心酔させた。
普段馬鹿っぽくてアホな発言しかしてないのに、このバレー中との落差ったら。
「だめだわ……恋、しそう」
「もうしてるでしょ」
ズバリ言いきった潔子は、柄にもなく意地の悪い表情をしていた。
「潔子!お願い、」
「誰にも言わない」
「大好き!」
抱き着いたところを遠くの西谷田中に見つかったが、なぜか菩薩のように穏やかだった。
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恋心がみんなの目にさらされたのはいつだっただろう。わかりやすかったに違いない。1年生の長身コンビも片方は不愉快そうに、片方はハラハラとして見守っていていてくれるぐらいだったから。
3年生は協力的で、口にはせずとも話すきっかけをくれたり、集まりには混ぜてくれたり、そっと二人きりになる時間を作ってくれたりした。
「影山、帰り苗字を送ってくれるか」
練習で遅くなると先輩たちが変わるがわる女子を送っていた。今度は自分の番だった。それだけ。
澤村の言に、若輩者である彼は肯定しか示さなかった。
さかさか急いでいるわけでもないのに、悲しいかな身丈つまり足の長さは歩幅に影響する。ずんずん先を進むので、ときに駆け足で追いつこうとするなまえがいた。それが何度も続くので、鈍い影山も自分が置いてけぼりにしているのだと途中で気づき、申し訳なさそうにした。
「スンマセン」
「ううん。影山くんも疲れてるから早く帰りたいよね。良いよ、私は一人で帰れるから」
「や、急いでるつもりじゃなかったスけど。今日TVでバレー特集番組があって録画予約してなくて」
「あ、そっか。ごめんね、じゃあ早く帰って!」
「けど」
「いいから。ここまでありがとう。お疲れさま」
「ウス。っした」
あっさりと、まっすぐの長い脚で駆けだしてしまう。
うん、バレーには勝てないよね。
彼はこちらの慕う気持ちに気づいてないし彼側には微塵も想いはないことを浮き彫りにされて、いっそのこと清々しかった。
気持ち良いくらいにすべての意識をバレーに全振り。他の入りいる隙などない。
翌日潔子に笑いながら話したら、「澤村に言っとく」と冷たい表情をしていたので慌てて止めた。そんなことをしたら3年(東峰以外)が手出ししそうだ。しかも当人からしたら理不尽な理由で。
なまえは関係を進展させるつもりはなかった。無理だとわかっていたから。彼に気持ちがあっても、なまえを見る気概をみせてくれても、付き合うつもりはなかった。色恋よりも進学に集中すべきだし、彼を見ていられるのも数か月しか残っていない。これは恋よりも未熟な憧れだから。姿を見れるだけで満足している自分に、自分の想いもその程度なのだと納得していた。影山もバレーに集中すべきだし、私はわずかでも邪魔して振り回してしまいたくない。
実際は引きずって拗らせて、数年を過ごしてしまうくらい彼に嵌っていたのだけれど。
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影山。昨日の帰り、苗字を置いて途中で帰ったって、本当か。
はい。見たい番組あったんで。先輩も帰れって言ってくれました。
俺はお前に頼み事をした。お前は引き受けた。なら自分の言葉に責任を持つべきじゃないのか。
……はい。
できないならできないで、頼んだその場で断ってくれて良かったんだ。
でも引き受けて途中で放棄するのは違うだろう。
俺がサーブ100本って言ったらお前は俺が見てなくてもサーブ100本打ちきるんじゃないのか。途中でやめたりしないだろう。
はい。次からは放棄しません。
わかってくれたならいい。これは苗字から聞いたわけじゃないんだ。本人は気にしないだろうから、彼女にはこの会話のことは何も言うなよ。
はい。
珍しい、主将が一対一で影山を叱っている。隣に日向がいるときはよくまとめて怒られているけど。
「見てツッキー、影山の眉間の皺が増えてる……」
「プレーはともかく人格に問題あるから怒られるんデショ」
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