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部活の終わりに全員が体育館の床に座り込み、武田から重大発表が行われた。
東京遠征と、期末テストの話だ。
日向、影山、田中そして西谷で組まれる四馬鹿の反応が面白いくらい酷い。白くなったり、菩薩顔になったり、逃げようとしたり、大声で騒いだり。
「なまえちゃんは大丈夫なの?」
阿鼻叫喚の図にじゃっかん引いている東峰が、清水の隣で落ち着いているなまえに気づいた。
「私は、悪くないと思いますよ。特別良いわけじゃないですけど」
「苗字さんは平均…ですね。まず心配はいらないでしょう。深刻なのはあの4人です」
武田の太鼓判に、口角を上げる。
「えらいじゃないか苗字」
「
菅原がぽんぽん、と頭を撫でる。
と、日向が影山を引き連れて近づいてきた。影山はショックで息も絶えだえ、といった様子だ。
「なまえ、英語教えてよ!ほら、影山も頼めって」
「教えて…クダサイ…」
なまえに頼むのが嫌なのか、勉強するのが嫌なのか。後者であることを祈る。
「私が翔陽と影山くんに教えるの?」
「うん!英語できるんでしょ?!」
「私ができるのは話すぐらいで、グラマーは難しいよ。感覚で間違ってるっていうのは教えてあげられるけどねぇ。ツッキーと山口くんにお願いしたら?それでダメだったら、私もがんばるから」
「そっか…そうだよなーあいつら頭いいもんなー。わかった、東京遠征のため!」
****
最終的に二人で頭を下げて、秀才組に教えを請うことができたらしい。
ところが、しばらく集中講義を続けている中、なぜかげっそりしていくのは教師側である月島のほうだった。
部活前に頭が痛そうにしている姿が心配で、声をかけた。
「ツッキー、どうしたの。寝不足?」
「精神的苦痛を受けた。この馬鹿に英語教えるの無理。苗字さん代わって」
「まぁまぁツッキー、ふたりともできないなりにがんばってるよ」
山口からフォローが入るが、月島は頭を振る。
「ツッキーで無理なら、私はなおさら無理だよ」
「だってコイツ『日本人に英語がわかるか』って胸張って言うんだよ。やる気もないやつに教えてらんない」
「英語できなくったって困らないだろ」
至極当然のように言い放って、反省の色などみせもしない。以前澤村から脅されたときいたのだが、やはり一筋縄ではいかないようだ。
「そりゃあね、影山くんが英語の勉強できなくったって誰も困らないよ」
「なまえだって英語話せるのに英語満点とれねぇじゃねーか」
数日前に日向が小テストで二桁の点数をまともにとったことがない、と言い出したことから、お互い過去の小テストを見せあったことがある。そのことをきいたのだろう。
「Hey, come on, man.
Obviously, it's totally different between speaking English and understanding the grammar.
You're native Japanese yet, you never got high score on Japanese exams. Have you?」
「うっわ、しゃべるの早っ…」
いまのわかった、ツッキー?にうるさいよ山口、ごめんツッキーといつものやりとり。
つい彼の苦し紛れにイラッとして、誇示するようなことをしてしまった。息を吸い込んで、気持ちを落ち着ける。
「そうだよ私は英語話せるけど、テストで百点取れない。もちろん、話せることと文法をきちんと理解することは別のことだもの。影山くんも日本人なのに、国語で満点とったことないんだって?日本語そんなに話せるのに」
「うっせーボゲェ」
本人は悔しげに言い返したそうにしているが、この語彙力の乏しさ。月島などはさっさと見捨ててしまいたい、というのが見てとれる。
このままほっといてもいいが、影山がやる気をだせば克服できることを、遠ざけていることがもったいなくて歯がゆい。こんな風にけなしあっている場合ではない。
「ちょっと考えてみて。影山くんはバレーで日本一になるんでしょ?」
こくりとうなずく。その目は清々しく、迷いも、疑いもなかった。よし、食いついてきた。
「その次には、世界を目指すんでしょ?」
力強くこくこく、と首を縦に振る。
「そこで、世界中から選手が集まって、練習試合をすることになって、めちゃくちゃバレー強くてうまい選手がいたら、コツとか教えてほしいって思わない?いろいろきいてみたくならない?」
「思う!」
実際音駒のセッター、孤爪を質問攻めにしようとしていた前科がある。
「じゃあ、世界共用語はいまのとこ英語なんだから、英語で質問するのが一番いいよ。ききたいこと聞けなくて、バレー上達できなくて影山くんはいいのかな?」
やっとここまできて、なまえの言いたいことがわかったらしく、汗をかきながら目をそらす。
「わかった…英語、やる」
「
「おお、苗字さんすごい…影山に喝入れた」
山口が静かに拍手をしてくれたので、彼に向かって片手を高くあげた。遠慮がちにパチン、と手を叩き合わせてハイタッチ。
「なまえ、って呼び捨てでいいよ」
「じゃあ、なまえ…。俺も忠でいいよ!」
高校入学して、話しかけてくる女子は月島めあてで、振ってくる話題は彼のことばかり。こうして真向から山口自身を見てくれることなどない。そして女子を呼び捨てで呼ぶことなどめったにない機会だ。ほほを染めて名前を呼んでみると、まっすぐ見てくれる。
「うん、忠。ツッキーもね」
「え、僕それなの」
この流れなら蛍と呼ばれるものだと思っていたから、拍子抜けした。
だって、となまえは首を傾げる。
「ツッキーはツッキー。かな。ね、忠」
「うっうん、ツッキーはツッキーだよ!」
山口が嬉しそうになまえと見つめあう。
「東京、いくぞー!!」
日向がつられて気合を入れている。
「うん!じゃあツッキーあとはお願いします」
「え、めんどくさ…」
「もー、テストまでもうちょっとなんだから、がんばろ!
頼りにしてるぞ、と手に力を込めて背中を叩いてやる。
そして結果は…周知の通り。
****
おわり。
すみません私の英語がめちゃくちゃなのはわかってます。
大目にみていただければ幸いです。
毎度ありがとうございます。
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