踊り子とジャーファルさま
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幾度、裸同士で朝を迎えたことか。
最初はジャーファルにされるがままだったなまえは、いつしか行為を楽しむ気配を見せてきた。外ではかたくなに「旦那様」としか呼ばないのに、情事のときぽろりと「ジャーファルさま」と呼ばれて年甲斐もなくときめいたりもして。ジャーファルに素直に甘えてくる姿がかわいくなってきたころだ。
「式の希望はありますか」
髪を手櫛で梳きながらの質問に目をみはる。
「……なにかとり行う式典がございましたか?」
「いえ、あなたの。あなたと、私の」
「はい……?」
いまいちピンときていないようだ。
「結婚、式などしませんか。式の内容だとか、披露宴をしたいとかしたくないだとか教えてください」
「……冗談が過ぎます、旦那様」
眉根を寄せた、純粋な困惑を浮かべている。
「はっ?」
「私は旦那様の愛妾にすぎません」
「はじめから妻などいませんし、本命はあなたです。あなた一人きりですよ」
離れている時間の方が短くて、他との付き合いなどないことは知っているはず。
「私なんかが奥方になどなれる道理がございません。愛人でじゅうぶんです」
なぜだ、なまえはどこを目指しているんだ。
「なまえ、愛しています」
「私も旦那様を愛しております」
とろけるような笑顔は本心から滲み出ているものに間違いないのに、どうしてかジャーファルとなまえはすれ違ってしまっていた。
「結婚してください」
こうなったら超豪速球でいくしかない、と真っ向勝負に出たのに。
「申し訳ございません」
あっさりと振られた。しかしなまえは笑っている。
「そんな空約束をくださらなくとも、私はおそばを離れたりしませんよ」
アッこれ、シンドバッド直伝の口説き文句だと思われてないか? 最悪だ。
「もしこの方こそ奥方に、と見つけてこられたら、いつでも身を引く覚悟はしております。それまで存分に可愛がってくださいませ、旦那様」
初めて会った夜にはあんなにつっかえていた台詞を、こんなにも妖艶かつ余裕たっぷりに言い切れるようになったなど。そう育てたのは、ジャーファルだとでも言うつもりか。
倒れ込むついでにはじめたキスも、お互い酔うほどなのに。
あなたしかいないと、愛しているんだと伝えるのだけれども、なまえは意固地だ。給与を貯めてジャーファルが肩代わりした負債額に到達するまでは、それをお返ししてやっと対等に名前を呼べるだとかなんとか言い訳を駆使したりだのなんだの。
すったもんだを繰り返して、結婚したかどうかはーーいつぞやのなまえの判断に委ねられるのみ。
最初はジャーファルにされるがままだったなまえは、いつしか行為を楽しむ気配を見せてきた。外ではかたくなに「旦那様」としか呼ばないのに、情事のときぽろりと「ジャーファルさま」と呼ばれて年甲斐もなくときめいたりもして。ジャーファルに素直に甘えてくる姿がかわいくなってきたころだ。
「式の希望はありますか」
髪を手櫛で梳きながらの質問に目をみはる。
「……なにかとり行う式典がございましたか?」
「いえ、あなたの。あなたと、私の」
「はい……?」
いまいちピンときていないようだ。
「結婚、式などしませんか。式の内容だとか、披露宴をしたいとかしたくないだとか教えてください」
「……冗談が過ぎます、旦那様」
眉根を寄せた、純粋な困惑を浮かべている。
「はっ?」
「私は旦那様の愛妾にすぎません」
「はじめから妻などいませんし、本命はあなたです。あなた一人きりですよ」
離れている時間の方が短くて、他との付き合いなどないことは知っているはず。
「私なんかが奥方になどなれる道理がございません。愛人でじゅうぶんです」
なぜだ、なまえはどこを目指しているんだ。
「なまえ、愛しています」
「私も旦那様を愛しております」
とろけるような笑顔は本心から滲み出ているものに間違いないのに、どうしてかジャーファルとなまえはすれ違ってしまっていた。
「結婚してください」
こうなったら超豪速球でいくしかない、と真っ向勝負に出たのに。
「申し訳ございません」
あっさりと振られた。しかしなまえは笑っている。
「そんな空約束をくださらなくとも、私はおそばを離れたりしませんよ」
アッこれ、シンドバッド直伝の口説き文句だと思われてないか? 最悪だ。
「もしこの方こそ奥方に、と見つけてこられたら、いつでも身を引く覚悟はしております。それまで存分に可愛がってくださいませ、旦那様」
初めて会った夜にはあんなにつっかえていた台詞を、こんなにも妖艶かつ余裕たっぷりに言い切れるようになったなど。そう育てたのは、ジャーファルだとでも言うつもりか。
倒れ込むついでにはじめたキスも、お互い酔うほどなのに。
あなたしかいないと、愛しているんだと伝えるのだけれども、なまえは意固地だ。給与を貯めてジャーファルが肩代わりした負債額に到達するまでは、それをお返ししてやっと対等に名前を呼べるだとかなんとか言い訳を駆使したりだのなんだの。
すったもんだを繰り返して、結婚したかどうかはーーいつぞやのなまえの判断に委ねられるのみ。
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