踊り子とジャーファルさま
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途中にぬるいR15程度の性愛描写があるため自己責任にてお気をつけください。
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人のいない部屋を見て、ジャーファルは舌打ちをした。
シンドバッドは国王だというのに、いや国王だからこそ奔放に振る舞う。時代に変動を起こすにはあれくらい破天荒な益荒男のほうが適役だとは理解しているつもりだが、面倒ごとも自然とついて回るので受け入れ切れないときもある。そんな王との旅の途中に宿を取り、あとは休むだけのはずだった。夕食を終えてから姿が見えないと思えば主人は単身で宿を抜け出していた。
宿から離れて夜でも明るい一角を探してみれば裏道にあるいかがわしいお店で羽振りよく胸元を広げて遊んでいる。筋肉のはっきりした胸板を曝け出しているのはいつものことか。
「よく来たな、ジャーファル」
輝く歯を見せて片手を上げたシンは、すでに何人もの女性を膝に腕に侍らせていた。ひとり二人どころではない。それでも余った女性たちが広いテーブル席に横に並んで座っている。
中心の男が「ここに座れ」と言うと、空気を読んだ女性たちがジャーファル一人分だけの隙間を空けた。
「いや座りません。あんたを連れて帰るんですからこの場でお開きにしてください」
「もう少ししたらお楽しみタイムなんだ、待ってくれ」
「明日も予定があるんですからーー」
呆れて強硬手段に出ようと袖に手を引っ込めると、シンは急に酔いが覚めたような目をして、ぐっとジャーファルの肩を掴んできた。指は袖の下の縄を握り損ねる。縛り上げて連れ帰るのは無理か。
「とにかく座れ。事情がある」
押されるままにストン、とソファに座り込む。
時にこういった場は密談に使われることもあるけれど、この主人の場合、ただ単に欲を発散するために利用しているだけだ。なのに事情があると。
ああ、「事情」という響きにとてもくだらないことのような予感がする、いつもながら。
「マジであんたは懲りないな……」
小さい嫌味もシッ、と短い音ひとつで黙らせられる。
「ちょっとその子の相手をしてくれるだけでいい。今日が初出勤らしくてな」
言われてようやく、自ら存在を消そうとしているらしい女性に意識がいった。ぎこちなく微笑むその子ーー人がいることはもちろん認識していたが、関係ないとしてジャーファルはあえて触れなかったというのに。
彼女のまとう衣装は男性向けの店にふさわしく、というか制服なので違和感はないけれども、顔つきがこの場にそぐわない。まるで間違って迷い込んできた一般女性のような雰囲気だ。
こういう店で初出勤を謳って男性客の興味を引く手法もあるだろうが、ジャーファルの鋭敏な五感をもってすれば騙されることはないーーと観察していたら。
ーー男の匂いが皆無だった。どうやら初出勤は完全な嘘ではない。
他の女性はシンの前にも男性の相手をしていたからか酒をはじめ汗やら煙草やら香水が入り混じる混沌とした空気を振り撒く中、彼女からは清純さすら感じる。そのせいかものすごく際立って浮いていた。
「な? お前なら嘘じゃないってわかってくれるだろう? 聞いたところ、どうにも彼女、家族に身売りさせられたんだと」
「はぁ?」
家族に売られた身の上話など、同情を引いて客から金を搾り取る常套手段ではないか。それがでっち上げにしろ真実にしろ、夜の店において珍しくもない。
「シンはその話を本気にしてるんですか……」
「とにかく、他の席にやるには惜しいほどの美人だろう?」
「知りませんけど」
別に女性の外見に重きを置いていないので。
シンのあからさまなおだてに照れている女性の姿からは、裏があるようには見えないけれど。シンは大げさにため息をつき振り向く。
「こいつは絶対きみに手を出さないから安心していい」
ニッコリとシンが彼女に笑いかければ、彼女は戸惑いに目を泳がせている。まぁこんな男向けの店に足を運んでおいて、下心のない男などいないだろうから疑うのも無理はない。
「私はシンを連れ帰りに来ただけですから」
「まぁそう言うな。あと一時間もしたら帰るさ」
「水揚げならシンのほうが手慣れているでしょう」
「その気もない女性を相手するより遊んでくれるお姉ちゃん達の方がいいからな」
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人のいない部屋を見て、ジャーファルは舌打ちをした。
シンドバッドは国王だというのに、いや国王だからこそ奔放に振る舞う。時代に変動を起こすにはあれくらい破天荒な益荒男のほうが適役だとは理解しているつもりだが、面倒ごとも自然とついて回るので受け入れ切れないときもある。そんな王との旅の途中に宿を取り、あとは休むだけのはずだった。夕食を終えてから姿が見えないと思えば主人は単身で宿を抜け出していた。
宿から離れて夜でも明るい一角を探してみれば裏道にあるいかがわしいお店で羽振りよく胸元を広げて遊んでいる。筋肉のはっきりした胸板を曝け出しているのはいつものことか。
「よく来たな、ジャーファル」
輝く歯を見せて片手を上げたシンは、すでに何人もの女性を膝に腕に侍らせていた。ひとり二人どころではない。それでも余った女性たちが広いテーブル席に横に並んで座っている。
中心の男が「ここに座れ」と言うと、空気を読んだ女性たちがジャーファル一人分だけの隙間を空けた。
「いや座りません。あんたを連れて帰るんですからこの場でお開きにしてください」
「もう少ししたらお楽しみタイムなんだ、待ってくれ」
「明日も予定があるんですからーー」
呆れて強硬手段に出ようと袖に手を引っ込めると、シンは急に酔いが覚めたような目をして、ぐっとジャーファルの肩を掴んできた。指は袖の下の縄を握り損ねる。縛り上げて連れ帰るのは無理か。
「とにかく座れ。事情がある」
押されるままにストン、とソファに座り込む。
時にこういった場は密談に使われることもあるけれど、この主人の場合、ただ単に欲を発散するために利用しているだけだ。なのに事情があると。
ああ、「事情」という響きにとてもくだらないことのような予感がする、いつもながら。
「マジであんたは懲りないな……」
小さい嫌味もシッ、と短い音ひとつで黙らせられる。
「ちょっとその子の相手をしてくれるだけでいい。今日が初出勤らしくてな」
言われてようやく、自ら存在を消そうとしているらしい女性に意識がいった。ぎこちなく微笑むその子ーー人がいることはもちろん認識していたが、関係ないとしてジャーファルはあえて触れなかったというのに。
彼女のまとう衣装は男性向けの店にふさわしく、というか制服なので違和感はないけれども、顔つきがこの場にそぐわない。まるで間違って迷い込んできた一般女性のような雰囲気だ。
こういう店で初出勤を謳って男性客の興味を引く手法もあるだろうが、ジャーファルの鋭敏な五感をもってすれば騙されることはないーーと観察していたら。
ーー男の匂いが皆無だった。どうやら初出勤は完全な嘘ではない。
他の女性はシンの前にも男性の相手をしていたからか酒をはじめ汗やら煙草やら香水が入り混じる混沌とした空気を振り撒く中、彼女からは清純さすら感じる。そのせいかものすごく際立って浮いていた。
「な? お前なら嘘じゃないってわかってくれるだろう? 聞いたところ、どうにも彼女、家族に身売りさせられたんだと」
「はぁ?」
家族に売られた身の上話など、同情を引いて客から金を搾り取る常套手段ではないか。それがでっち上げにしろ真実にしろ、夜の店において珍しくもない。
「シンはその話を本気にしてるんですか……」
「とにかく、他の席にやるには惜しいほどの美人だろう?」
「知りませんけど」
別に女性の外見に重きを置いていないので。
シンのあからさまなおだてに照れている女性の姿からは、裏があるようには見えないけれど。シンは大げさにため息をつき振り向く。
「こいつは絶対きみに手を出さないから安心していい」
ニッコリとシンが彼女に笑いかければ、彼女は戸惑いに目を泳がせている。まぁこんな男向けの店に足を運んでおいて、下心のない男などいないだろうから疑うのも無理はない。
「私はシンを連れ帰りに来ただけですから」
「まぁそう言うな。あと一時間もしたら帰るさ」
「水揚げならシンのほうが手慣れているでしょう」
「その気もない女性を相手するより遊んでくれるお姉ちゃん達の方がいいからな」
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