誠実な恋のはじめ方
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「まぁ、ほんと今日は良く呑むわね」
いつもお付き合い程度に一杯二杯呑む姿しか知らないヤムライハは、普段見られないなまえの姿にびっくりしていた。
「あはは、ヤムライハ様がびっくりしてるー!かわいー!れす!」
肩を揺らして笑い、身体を自身で支えきれずに椅子から落ちた。
「ちょっと、なまえ!大丈夫?」
「えー?いま私、どうなってますか?」
ぐにゃぐにゃと体を動かすが、立ちあがれない。
「そうね、……笑い上戸で良かったわ。そろそろお部屋に戻っておやすみなさい。もう呑めないでしょう
「はーい」
ヤムライハに体を支えられて、なんとか部屋に戻る。
「元気になるのよ」
と柔らかい指で頭を撫でて、彼女は帰ってしまった。
ベッドに寝かされたものの、目を閉じても睡魔は来ず、重い手足をやっと動かして、別室にある共有の浴室へ向かった。お酒を呑むのは楽しくて好きだ。いつも酷く酔うと目が回って歩けなくなるため自重していたが、今回はヤムライハの手前さらけ出していた。何も考えず体を温めると少し意識がしっかりしたような気がした。湯を上がって部屋へ戻る途中、窓から見えた風景が綺麗だったので、月に誘われるように外に出た。夜風が気持ちいい。壁に寄り添うようにして、あたりに響く虫の音を聞いていた。
「やぁこんばんは」
肩を叩かれて、壁にもたれながらゆっくりその腕の持ちぬしを見上げた。見覚えのない男性だ。
「君、なまえ?あの、俺の顔覚えてないかな」
「はぁ……。……?」
「わからないかな?前いちど君がくれたお菓子がすごく美味しくてさ。君かわいいし、それからずっと気になってて。なに?いま酔ってるの?そう、いままで呑んでたんだ、」
何をいっているのだろう、この人は。
お菓子を食べたとは言っても、ジャーファルのために作ったついでにみんなにもと机に積んでいたものをつまんだだけだろう。よくそのことでお褒めの言葉をいただくから。
それ以降もぺらぺらと流れる言葉はまったく頭に入ってこずに、あたりに響いた。定まらない意識で目線を下げた。
しめった手が、肩に乗っているのがだんだんと力がこもり、気持ち悪かった。
「何をしているのです」
突き刺さるような言葉に、男の手が肩から外れた。
「うわっ、ジャーファル様!」
「彼女に用がないのなら下がりなさい」
「はっ」
男が背中を見せて去っていくのを、意味のない映像をただ眺めているような気分で見ていた。
「あなたは……なまえ?」
背後から声をかけられて、幻聴かと思ったが振り向いた。酒で感覚が鈍っているのだろう、足音にも気がつかなかった。月明かりにもまぶしいその姿は、いつも恋焦がれた、
「……?」
不思議そうな顔をしていると、どうしてここにいるのかと問われたのだろうと判断したのか、無表情を崩さずに答えた。
「見回りです。人影が見えたと思えば……夜遅い時間に女性が出歩くものではありませんよ」
「……すみません、戻ります」
壁から手を離すと、ひざが崩れた。何事かとジャーファルは彼女のそばに膝をつくと、眉をひそめた。
「酒の匂いがします。深酒は感心しませんね」
「は、い……」
冷静な声を聞いていると、胸が締めつけられたように苦しくなって、泣きたくなってくる。昼間決意したことが、頭をよぎる。
「どうしたんです」
「ごめんなさ……もー、行けな、です……」
ごめんなさい、もうあなたの近くには行けません。
「?……歩けないのですか?」
ふるふると頭を振る。酒の抜けきらない体ではぐるぐると意識が回り、遠ざかった。ぎゅっと目を閉じると、地面につかれた手に雫が落ちてひんやりとした。
「ごめーわく……おちゃ……」
ご迷惑でしょう、お茶をお持ちするのも。
そう言ったつもりだったが、回らない舌で単語だけを呟き、視界のにじむ目をこすった。
「なんです?」
首をふるばかりで答えようとしない。このまま放っておくのもはばかられたジャーファルは、ため息をついて応急処置にでた。
抱き上げた体には抵抗がない。暴れられるよりかはマシだが、頬に流れる涙はジャーファルを落ち着かなくさせる。貧乏くじばかりだ、と頭を痛めた。他に選択肢もないので自室へと向かう。
素足に触れた冷えたシーツで目を開けた。
「わたし……立ってるです?座ってる…?」
「あなたはいま寝ていますよ」
「そう……じゃあ、ゆめ…」
すぅー、と息を吐いたかと思うと、それは次第に寝息に変わっていった。
「あの、なまえ?」
ゆすってももちろん、返答はない。
大人しく寝床を開け渡し、椅子に腰かけた。
いつもお付き合い程度に一杯二杯呑む姿しか知らないヤムライハは、普段見られないなまえの姿にびっくりしていた。
「あはは、ヤムライハ様がびっくりしてるー!かわいー!れす!」
肩を揺らして笑い、身体を自身で支えきれずに椅子から落ちた。
「ちょっと、なまえ!大丈夫?」
「えー?いま私、どうなってますか?」
ぐにゃぐにゃと体を動かすが、立ちあがれない。
「そうね、……笑い上戸で良かったわ。そろそろお部屋に戻っておやすみなさい。もう呑めないでしょう
「はーい」
ヤムライハに体を支えられて、なんとか部屋に戻る。
「元気になるのよ」
と柔らかい指で頭を撫でて、彼女は帰ってしまった。
ベッドに寝かされたものの、目を閉じても睡魔は来ず、重い手足をやっと動かして、別室にある共有の浴室へ向かった。お酒を呑むのは楽しくて好きだ。いつも酷く酔うと目が回って歩けなくなるため自重していたが、今回はヤムライハの手前さらけ出していた。何も考えず体を温めると少し意識がしっかりしたような気がした。湯を上がって部屋へ戻る途中、窓から見えた風景が綺麗だったので、月に誘われるように外に出た。夜風が気持ちいい。壁に寄り添うようにして、あたりに響く虫の音を聞いていた。
「やぁこんばんは」
肩を叩かれて、壁にもたれながらゆっくりその腕の持ちぬしを見上げた。見覚えのない男性だ。
「君、なまえ?あの、俺の顔覚えてないかな」
「はぁ……。……?」
「わからないかな?前いちど君がくれたお菓子がすごく美味しくてさ。君かわいいし、それからずっと気になってて。なに?いま酔ってるの?そう、いままで呑んでたんだ、」
何をいっているのだろう、この人は。
お菓子を食べたとは言っても、ジャーファルのために作ったついでにみんなにもと机に積んでいたものをつまんだだけだろう。よくそのことでお褒めの言葉をいただくから。
それ以降もぺらぺらと流れる言葉はまったく頭に入ってこずに、あたりに響いた。定まらない意識で目線を下げた。
しめった手が、肩に乗っているのがだんだんと力がこもり、気持ち悪かった。
「何をしているのです」
突き刺さるような言葉に、男の手が肩から外れた。
「うわっ、ジャーファル様!」
「彼女に用がないのなら下がりなさい」
「はっ」
男が背中を見せて去っていくのを、意味のない映像をただ眺めているような気分で見ていた。
「あなたは……なまえ?」
背後から声をかけられて、幻聴かと思ったが振り向いた。酒で感覚が鈍っているのだろう、足音にも気がつかなかった。月明かりにもまぶしいその姿は、いつも恋焦がれた、
「……?」
不思議そうな顔をしていると、どうしてここにいるのかと問われたのだろうと判断したのか、無表情を崩さずに答えた。
「見回りです。人影が見えたと思えば……夜遅い時間に女性が出歩くものではありませんよ」
「……すみません、戻ります」
壁から手を離すと、ひざが崩れた。何事かとジャーファルは彼女のそばに膝をつくと、眉をひそめた。
「酒の匂いがします。深酒は感心しませんね」
「は、い……」
冷静な声を聞いていると、胸が締めつけられたように苦しくなって、泣きたくなってくる。昼間決意したことが、頭をよぎる。
「どうしたんです」
「ごめんなさ……もー、行けな、です……」
ごめんなさい、もうあなたの近くには行けません。
「?……歩けないのですか?」
ふるふると頭を振る。酒の抜けきらない体ではぐるぐると意識が回り、遠ざかった。ぎゅっと目を閉じると、地面につかれた手に雫が落ちてひんやりとした。
「ごめーわく……おちゃ……」
ご迷惑でしょう、お茶をお持ちするのも。
そう言ったつもりだったが、回らない舌で単語だけを呟き、視界のにじむ目をこすった。
「なんです?」
首をふるばかりで答えようとしない。このまま放っておくのもはばかられたジャーファルは、ため息をついて応急処置にでた。
抱き上げた体には抵抗がない。暴れられるよりかはマシだが、頬に流れる涙はジャーファルを落ち着かなくさせる。貧乏くじばかりだ、と頭を痛めた。他に選択肢もないので自室へと向かう。
素足に触れた冷えたシーツで目を開けた。
「わたし……立ってるです?座ってる…?」
「あなたはいま寝ていますよ」
「そう……じゃあ、ゆめ…」
すぅー、と息を吐いたかと思うと、それは次第に寝息に変わっていった。
「あの、なまえ?」
ゆすってももちろん、返答はない。
大人しく寝床を開け渡し、椅子に腰かけた。