南国の淡雪
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
**
うとうとと、夢を見た心地がする。
「私は……なにをしていたんだ?」
それに答えるものは周囲にいない。手の中には失くしたはずのクーフィーヤの飾り留め。これを探しにきてこんなところまで?なぜだかわからないが、胸の奥になにか溜まったものを吐き出したくて、深いため息をついた。
「王宮に戻らなければ」
立ち上がったときにはもう、仕事のことしか頭になかった。
その年の果実は稀なる寒気によって実が引き締まり、よりいっそう甘く仕上がり市場では高値で取引され、シンドリアを潤した。
「なんだ、今年は財政に余裕があってみなにボーナスもでたというのに、ジャーファルは気が落ち込んでいるようだな」
シンドバッドが不満そうに、何かから逃げるかのようにせかせか働くジャーファルを見やる。近くにいた部下が苦笑いした。
「もともと給料も使い道ない人ですし、ボーナスは関係ないのやもしれません」
「そうだなぁ。賭博も女遊びもしないし趣味は仕事だからな」
ジャーファルはそんな会話を聞き流し、ペンを置いて書類をそろえる。
窓からみえる、さんさんとした太陽の光が照らす濃い緑を、ため息交じりに眺めていた。
シンドリアは、暑い。
もう誰も、雪の白さなど覚えているものはいなくなった。
**
おわり
うとうとと、夢を見た心地がする。
「私は……なにをしていたんだ?」
それに答えるものは周囲にいない。手の中には失くしたはずのクーフィーヤの飾り留め。これを探しにきてこんなところまで?なぜだかわからないが、胸の奥になにか溜まったものを吐き出したくて、深いため息をついた。
「王宮に戻らなければ」
立ち上がったときにはもう、仕事のことしか頭になかった。
その年の果実は稀なる寒気によって実が引き締まり、よりいっそう甘く仕上がり市場では高値で取引され、シンドリアを潤した。
「なんだ、今年は財政に余裕があってみなにボーナスもでたというのに、ジャーファルは気が落ち込んでいるようだな」
シンドバッドが不満そうに、何かから逃げるかのようにせかせか働くジャーファルを見やる。近くにいた部下が苦笑いした。
「もともと給料も使い道ない人ですし、ボーナスは関係ないのやもしれません」
「そうだなぁ。賭博も女遊びもしないし趣味は仕事だからな」
ジャーファルはそんな会話を聞き流し、ペンを置いて書類をそろえる。
窓からみえる、さんさんとした太陽の光が照らす濃い緑を、ため息交じりに眺めていた。
シンドリアは、暑い。
もう誰も、雪の白さなど覚えているものはいなくなった。
**
おわり
6/6ページ