誠実な恋のはじめ方
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余ったお菓子を携えて、なまえが食堂へ戻ろうと廊下を歩いているときだった。
「なまえ!」
豊かな胸を対の貝でようやく隠し、たわわと揺らしながら、彼女がこちらに小走りに寄ってくる。
「ヤムライハ様。ちょうど良い時間ですね、お茶を召し上がりますか?」
「もちろんいただくわ。そう、それが目当てだったの。美味しそう!」
そういう彼女の目は、なまえの手にある蒸し菓子に釘付けだ。
「ええ、シンドバッド様にはご好評でした」
「早く食べたいわ!なまえ、あなたの分のお茶も用意していらっしゃい。どうせお仕事は終わっているんでしょう、お話しましょう」
ヤムライハの周りのルフが、彼女の喜びようを証明するかのように輝きがいっそう増した。それでなまえも嬉しくなって、頬を緩めて頷いた。
「はい、すぐにお持ちします」
二人分の茶器とお菓子を持って、ヤムライハの自室を訪ねた。
こうしてお茶会と称し、ヤムライハは時折なまえを呼び寄せ、こっそり魔法を教授していた。その素質にいち早く気付いたのはヤムライハで、いずれシンドリアの力になるよう育てて弟子にしようと目論んでいたのだが、なにしろ能力が開花するのが遅かった。力を発揮するまでは周囲に口外することを禁止し、こうして魔法使い修行をこなしている。
「うーん才能はあるんだけどねぇ……」
理論などは理解できても、実技となるとなかなか上達しないので、王へ報告もできないままだった。そこそこのまじない師としては生きていけるかもしれないが、魔力が決して少なくないと見えるため、どうにかして魔導師へ成長させたい。
「すみません。私もシンドリア国のお役に立ちたいのでもっと頑張ります」
「良いのよ、楽しく学んでくれるし、地道にやっていきましょう。そう、それで最近調子はどうなの?」
女の顔をして、お茶をすする。この場合のどう、とは恋を示しているとしか判別できない。
「どう……、でしょうか」
「変化ないの?」
ずずい、とヤムライハの綺麗な顔が近づいてきて、少しのけ反った。
「えっと、私、十分幸せですし、いまのままでも」
そういう彼女のまわりで、ルフは陰りなくきらきらと輝いている。彼女の笑顔に嘘偽りはない。ヤムライハはつまらなそうに身を引いた。
「といいますか、私が勝手に好意を寄せているだけですし」
「まージャーファルさまは侮れないわねー。国一番、シン様一番って方だから一筋縄にはいかないでしょうけれど、賢い方だからなまえのことには気がついているはずよ」
「初めてお会いしたときと態度はいまも同じですし、身分違いというか……恐れ多いです。本来なら悟られないようにしなければならないのに……」
「そんなのしょうがないわよ。好きなんでしょ?」
ずばり指摘されて、うつむきながらも耳は赤く染まった。
「……ですけど、諦めるべきだったんですよね、初めから。それをずるずると……」
ヤムライハは腕組みをして、そのいじらしい姿を眺めた。
素直で仕事は真面目で一生懸命だし、愛想も良い。女の目から見ても質素にしてはいるが、磨けば光る容姿をしていると思う。どうにか応援してやりたいところだが。
ぱっと顔を上げた。
「そうです。私、諦めます」
「……えっ、」
「いつまでも周りをうろうろされていてはジャーファルさまも居心地良くないでしょうし、もう執務室にお茶も持って、いきま、せん」
眉毛を下げて、ヤムライハに向き直る。目の前には心配そうに見つめる青の双眸。
「なまえ、あなた……よく考えて。あなたの気持ちを大切にするのよ」
「はい、ありがとうございます。ヤムライハ様はお優しい……」
「馬鹿ね、もう……今夜は呑むのよ!呑んで騒いですっきりしちゃいなさい。付き合うわ」
「え、本当ですか?実は私明日お休みいただいたので……」
「まぁ、良いわね!上質なお酒用意しておくわ、夜にまたいらっしゃい」
「楽しみです!ではお仕事片づけてきます」
「なまえ!」
豊かな胸を対の貝でようやく隠し、たわわと揺らしながら、彼女がこちらに小走りに寄ってくる。
「ヤムライハ様。ちょうど良い時間ですね、お茶を召し上がりますか?」
「もちろんいただくわ。そう、それが目当てだったの。美味しそう!」
そういう彼女の目は、なまえの手にある蒸し菓子に釘付けだ。
「ええ、シンドバッド様にはご好評でした」
「早く食べたいわ!なまえ、あなたの分のお茶も用意していらっしゃい。どうせお仕事は終わっているんでしょう、お話しましょう」
ヤムライハの周りのルフが、彼女の喜びようを証明するかのように輝きがいっそう増した。それでなまえも嬉しくなって、頬を緩めて頷いた。
「はい、すぐにお持ちします」
二人分の茶器とお菓子を持って、ヤムライハの自室を訪ねた。
こうしてお茶会と称し、ヤムライハは時折なまえを呼び寄せ、こっそり魔法を教授していた。その素質にいち早く気付いたのはヤムライハで、いずれシンドリアの力になるよう育てて弟子にしようと目論んでいたのだが、なにしろ能力が開花するのが遅かった。力を発揮するまでは周囲に口外することを禁止し、こうして魔法使い修行をこなしている。
「うーん才能はあるんだけどねぇ……」
理論などは理解できても、実技となるとなかなか上達しないので、王へ報告もできないままだった。そこそこのまじない師としては生きていけるかもしれないが、魔力が決して少なくないと見えるため、どうにかして魔導師へ成長させたい。
「すみません。私もシンドリア国のお役に立ちたいのでもっと頑張ります」
「良いのよ、楽しく学んでくれるし、地道にやっていきましょう。そう、それで最近調子はどうなの?」
女の顔をして、お茶をすする。この場合のどう、とは恋を示しているとしか判別できない。
「どう……、でしょうか」
「変化ないの?」
ずずい、とヤムライハの綺麗な顔が近づいてきて、少しのけ反った。
「えっと、私、十分幸せですし、いまのままでも」
そういう彼女のまわりで、ルフは陰りなくきらきらと輝いている。彼女の笑顔に嘘偽りはない。ヤムライハはつまらなそうに身を引いた。
「といいますか、私が勝手に好意を寄せているだけですし」
「まージャーファルさまは侮れないわねー。国一番、シン様一番って方だから一筋縄にはいかないでしょうけれど、賢い方だからなまえのことには気がついているはずよ」
「初めてお会いしたときと態度はいまも同じですし、身分違いというか……恐れ多いです。本来なら悟られないようにしなければならないのに……」
「そんなのしょうがないわよ。好きなんでしょ?」
ずばり指摘されて、うつむきながらも耳は赤く染まった。
「……ですけど、諦めるべきだったんですよね、初めから。それをずるずると……」
ヤムライハは腕組みをして、そのいじらしい姿を眺めた。
素直で仕事は真面目で一生懸命だし、愛想も良い。女の目から見ても質素にしてはいるが、磨けば光る容姿をしていると思う。どうにか応援してやりたいところだが。
ぱっと顔を上げた。
「そうです。私、諦めます」
「……えっ、」
「いつまでも周りをうろうろされていてはジャーファルさまも居心地良くないでしょうし、もう執務室にお茶も持って、いきま、せん」
眉毛を下げて、ヤムライハに向き直る。目の前には心配そうに見つめる青の双眸。
「なまえ、あなた……よく考えて。あなたの気持ちを大切にするのよ」
「はい、ありがとうございます。ヤムライハ様はお優しい……」
「馬鹿ね、もう……今夜は呑むのよ!呑んで騒いですっきりしちゃいなさい。付き合うわ」
「え、本当ですか?実は私明日お休みいただいたので……」
「まぁ、良いわね!上質なお酒用意しておくわ、夜にまたいらっしゃい」
「楽しみです!ではお仕事片づけてきます」