Head Over Heels In Love With You.
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あのとき怒っていたことを忘れてしまったかのように目前に現れ、宮殿内を改めて案内していただきたい、との申し出を断ることもできず、仕事の一環として請け負った。
しかしこちらが案内するどころかなまえのほうが先導されており、彼は宮殿の見栄えのする場を知り尽くした様子だ。繰り返し幾人もの宮殿の女性と歩き回るうちに覚えたとみえる。
自然と肩を抱かれて、ときおり柱に刻まれた模様の意味だの花の名前だのを尋ねられる。丁寧に答えると、なにかと褒められ、目が合うといちいち微笑まれた。
「シンドリアは良い国だ」
「ありがとうございます。その言葉を誇りに思います」
「なまえ殿のような非の打ち所のない女性が育つのも納得できる。私の子供もぜひこのような環境で育てたいものだ」
「母国でなくてですか?貴国も素晴らしい国だと存じます」
「ありがたい。もちろんわが国もシンドリアに引けはとらないつもりだ。しかし子が生まれたなら母親の育った国のほうが育てやすかろうと思って……そう、あなたのように成長してくれれば良いのだが」
「それはまた、この国に決めた方がいらっしゃるのですか?」
「いつまではぐらかすつもりなのだろうか、あなたは。もうとっくに俺の気持ちには気づいているはずだ」
思わせぶりな、というか思いきり吐露している皇子に冷や汗を抑えられなかった。うまい切り返しを考えるもとっさには浮かばない。こういう場面に持ち込んだら彼のほうが一枚も二枚も上手だった。
「そのような……」
「ほら。好いた女性を目の前にすれば、男などはこうしたいと思うものですよ」
腕の中にひっぱりこんだ。しっかりと背中に筋肉質な腕をまわされて、ほどく気はなさそうだった。大きな手のひらが背中を撫でる。
あたたかいが、どうにも落ち着かない。
なんとか腕を止めようともがくが、ちっともこたえていない。
「困ります、やめて」
「多少強引な手を使っても、自分のものにしたい、と。あなたほど魅力的な女性ならなおさらだ」
「やめて、ください」
「つれない態度もあの男のためか。あなたのことを好きだと言ったことは?愛してると言いますか?あなたの美しさを褒めたたえることもないだろうに」
「そんなの要らないの」
「女性は言葉で愛を確かめる生き物でしょう。俺はそれをしてあげられる」
「心のこもらない言葉なんて欲しくありません」
「嘘でしょう。女性は褒められただけ美しくなる。あなたはもっと美しくなるし、愛されるべきだ。あなたのように美しい女性には尽くしてくれる男性が必要だ。頷いてさえくれれば、俺があなたにふさわしい男になる。真実、あなたを愛そう」
きわめつけとばかりに耳元で囁き、自然な流れで頬に唇をよせた。
「きゃ……!」
「あんな邪険に扱われるなど、あの人はなまえ殿のことなどなんとも思ってない。けど俺は本気だ。わかってほしい」
やっとなまえを解放し、満足気に微笑んだ。彼の目には感動で口もきけないように映ったのだろうか。
名残惜しそうに見つめられたが、身をひるがえす。
口づけされた頬を両手で抑えて、ふらふらと宮殿内へ逃げ込んだ。