誠実な恋のはじめ方
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ドアを丁寧に叩いて、入室の許可を待つ。
「なまえです。お茶をお持ちしました」
「待ってたぞなまえ」
シンドバッドからかけられた言葉に、にっこりとほほ笑む。
「今日は蒸し菓子を作ってみました。はい、どうぞシンドバッド様」
ふわふわとした程良く焼けたマフィンのようなお菓子と、お茶を机の上に置く。すかさず手にとり一口かじり、美味い!と唸った。
「お菓子をくれるのはなまえだけだからな。いつも楽しみなんだ」
「ありがとう存じます」
宮仕えといえば聞こえは良いが、内容はただの下働きだ。それでもこうやって執務室にお茶を運ぶ作業がどれほど誇らしいことか。王は親しみやすく、気安く声をかけてくださる。
他の宮仕えの者と交代して役を負ってるため、毎日通えるわけではないが、極力立候補することにしている。それは好きな人の顔をこうして少しでも近くで見たいから。
その人の前にくると緊張して、胸の鼓動をやけに大きく感じた。粗相をしないよう、ゆっくりした動作できちんと整頓された書類から離れた場所にお茶を置き、お茶菓子を添えた。
「どうぞ……、ジャーファルさま」
「ありがとうございます」
書類に書き込む手が止まらずとも、その一言で舞い上がってしまう。それにペンを握った手元を見つめる顔のなんと凛としたことか。優秀な政務官として名高い彼だが、愛嬌のあるそばかすがその印象を和らげる。
「では失礼します。あの、日差しが少し強いようです。休憩を長めに取られてはいかがでしょうか?
紅潮した頬を押さえながら、音を立てないように退室した。
しばらくして、シンが背伸びをし、横目でジャーファルを盗み見る。
「……はあ、健気だねぇ」
「シンよ、手が止まってますよ。あなたこそ健気になってください」
「良いではないか。一杯のお茶くらい冷めないうちに飲ませてくれ」
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