優しさじゃない
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その客は午後3時にやってくる。
彼女の第一印象は最悪だった。
『ココさんはじめまして!私、セイラと申します!ずっとココさんに会いたかったんです!いやあ、サニーさんと知り合いでラッキーでした!もう一生分の運を使ったかも!!』
サニーの紹介で来たこの客はココのパーソナルスペースなどお構いなしにぐいぐいと距離を詰めてくる。セイラが近づく分、ココも同じ歩幅分後ろに下がっていく。
「あまりボクに近寄らないで…」
『ココさんに会えるなんて夢みたいです!今でも信じられない!噂に違わず男前ですね!』
ドン!と背中に壁が当たった。
ココを見上げるセイラの瞳は輝いていたが、セイラを見下ろすココの表情は苦虫を噛み潰したように渋かった。
「ボクの話を……!」
『ココさんに会ったらどうしてもお願いしたいことがあったんです!うわあ、緊張するなあ…って、私の話聞いてくれてます?』
彼女は今まで会ったどんな人間より厚かましくて図々しかった。
ボクの頭の中はこの面倒な客にどうやって穏便に帰ってもらうかでいっぱいだった。
「落ち着いてから出直してくれ。」
『うわあー、噂通り容赦ないですね!』
それからというもの大した用もないのにセイラは毎日店に通った。
『私のラッキーカラーを知りたいんです。そもそもラッキーカラーって概念が理解できないんですよね。その色が嫌いな色だったらそれだけで気分下がりません?ちなみに私の好きな色は赤です!!』
「最初から聞く気ないよね。」
『燃える赤ですよ。良くないですか?ココさんは緑の装飾が多いですけど緑が好きなんですか?それとも黒?私、緑も黒も好きだから大丈夫ですよ!』
「キミは宇宙人か何かなのか?」
セイラは中身のない質問を繰り返しては代金を払って帰っていく。
受け取れないと拒否しても嵐のような勢いと押しの強さで無理矢理置いていくのだ。
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