第一話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガラス瓶の割れる音が車内に響きわたった。
「酒持ってこい酒をヨぉ!!!酒も充分に揃えてねーのかぁ!!あァ!?このポンコツ列車がぁ!!」
ヒゲもじゃで汚らしいロン毛の男が騒ぎ立てている。トリコが買い占めたから酒がないのは道理だ。その男がトリコの酒に気づいて取巻きを2人ほど連れてこちらに向かってきた。
「おいおい、酒が少ねえと思ったら…オメーが買い占めてやがったのか…!」
「はは…絡まれてんのか、オレ?」
小松が救いを求めてセイラに視線を向けるが関わりたくないせいか窓の外を向いてしまった。
『……お酒欲しいならあげたら?うるさいから迷惑。』
「ちょっと、セイラさん!」
久々に絡まれて上機嫌のトリコは立ち上がると男の肩を叩いた。常人よりは大きな体つきのこの男もトリコよりはかなり小さい。
「ゾンビくん!立派なフルコースだ、ウン。酒なら好きなだけ持ってって構わねえから。買い占めたりして悪かったなゾンビくん。」
「お、おお…ゾンゲだオレは……お…覚えときな…」
ゾンゲと名乗る男と取巻きは数本の酒を手に取ると車両をあとにした。トリコが椅子に座ると小松が口を開いた。
「トリコさん、セイラさん。今の…牽制ですよね?」
「そうだな…アイツ本当の目的は酒なんかじゃねーな…この列車は美食屋だらけだ。しかも全員フグ鯨を狙ってる…
現場では争奪戦になることも十分に有り得るだろう。腹のさぐり合いはもう始まってる。ここらで一発周りに脅しをかけたってところだな。」
「だ…だったらなおさら…酒をタダであげるなんて…」
「旅は道連れ世は情ってな。争奪戦になることもあればお互い助けあわなきゃいけねェ時もあるだろうよ…」
小松は援護射撃をしてほしいのか再びセイラに視線を向けた。が、セイラは以前として窓の外を眺めているだけだ。
もうすぐで会えるという頃になって、今さらどんな顔して会えばいいのかわからなくなってきた。
『……緊張してきたかも…』
「え!そんな人なんですか?!」
「たぶん別の心配してるから放っといていいぜ。」
緊張で若干胃もたれを起こしていると新たな酒の匂いがした。匂いの方へ視線を向けると腰の曲がった白髪リーゼントのおじいさんがいた。
「あ…あのぅ〜…あっしにも…その…酒ぇ分けてはくれませんかね…?あっし高ぇところは苦手でして…その…列車の窓の外を見るともう…怖くて足がふるえてふるえて…」
「酔いで恐怖心を誤魔化すのか…?ていうか、酒が切れたからふるえてんじゃねーのか、じいさん。」
「いやあ〜、へへ…それもありますが…」
『…トリコ。次の駅だよ。』
「おう。いいよ、じいさん。全部持っていきな!オレらは次で降りる」
「へ…次の駅…?」
「占いの町 グルメフォーチュンだ…!」
「あ…ありがとうごぜぇました旦那…酒の恩はいつかきっと…ヒック!」
「いいってことよ、気にすんな。それよりあまり飲みすぎんなよ、ジイさん…」
「ひ…人のこと言えませんよ!トリコさんは!」