第一話
設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ここ第1ビオトープはIGOの所有する庭の中で最も大きな規模を持つ。そのせいか脱走して姿を晦ますにはもってこいだ。
だが今日は脱走のために外に出たわけじゃない。修行のためと来ているーー後に美食四天王と呼ばれる4人はセイラの唯一の友人だ。
外の世界はおろか、庭に出るのも本来なら特別な許可がいるセイラにとって、4人が来る日は最高に楽しい。その分、命の危機に遭遇することも少なからある。そんな危険など霞んで見えるほどにセイラの世界は彩り豊かになる。
『ねえ、そういえばリンはーーー』
浮かれてばかりで前を見てなかった。いつもの散歩のペースでのんびり歩いているとすぐに置いてきぼりにされる。現に数メートル先にはトリコ、ゼブラ、サニーしかいないがセイラの問いに答えてくれる者は隣にいた。
「リンちゃんならいないよ。」
隣を見るとココの笑みが向けられる。気がつくとのんびりしてしまうセイラにいつも歩幅を合わせて歩いてくれるのはココだけだ。でもそれは少し心苦しい。
『なんでいないの?風邪か何か?』
「……そんなところだけど、体調を崩したわけじゃないから心配する必要はないよ。」
歯切れの悪い言い方に少しもやっとしたが病気や怪我ではないのならまぁ、いいか。と胸に納めた。
『あぁ、また置いてかれちゃったね。ごめん、ボーッとしちゃった。』
「気にしなくていいよ。急ぐ用じゃないし。」
まっすぐセイラを見つめるブラウンの瞳はココの性格に相応しく優しい色をしている。
ココは優しい。
優しくていつも周りに気を遣って、あまりにも優しすぎる。ココはとても繊細だ。
「それにボクは、セイラとゆっくり歩く方が好きだ。」
ココはセイラの瞳を見つめるとふっと表情が緩んだ。
ココの笑顔は苦手だ。
彼といると心拍数が上がるし、顔が熱くなる。だからといってココと一緒にいるのは落ち着くから不思議だ。
『なら、いいんだけど…』
「うん。セイラはイヤじゃない?」
『イヤじゃないよ。』
セイラの返事にココは前を向くと「そうか、よかった…」と小さく呟いた。
本来なら聞こえるはずのない小さな声。そんな小さな呟きに反応してもいいかわからなくて、いつも知らないフリをしてしまう。
そんなセイラの火照った熱を吹き飛ばすようにトリコとサニーの大きな声が飛んできた。
「おせえぞ、セイラー!!」
「早く来ねえと置いてっちまうぞ!オレは腹が減ってんだ!」
そう言いながらも後ろに向かって走っていくトリコとサニーに気づいたゼブラの怒声があとを追う。
「なんで戻らなきゃいけねーんだ!!さっさと来い!!」
文句を言いつつもゼブラはその場で止まって待ってくれている。口調は乱暴だし、粗雑で誤解を受けやすいが悪いやつじゃないんだ。
ココと顔を見合わせると自然と笑みが零れた。
「ごめんごめん。今行くよ。」
『ごめんね、ゼブラ。』
「ゼブラだけかあー!?」
「レらもいるぞー!!」
『うわあ!引っ張らなくても自分で歩けるよ!』