第四話
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『人がいると寝れないんですけど。』
「は?知らねーし!つかこの部屋出られねーし!」
『サニーってばさっきから大きな声出して。私を寝かせる気あるの?』
「ぐっ………この野郎…………ッ!」
『あーあ、目ぇ覚めちゃった。』
体は重いがどれだけ待っても寝られる気配がない。諦めてベッドから降りても一応歩けているし、問題ないだろう。点滴を引き抜いて放り投げるとベッド下に隠しておいた靴を履く。
「サニーをからかうのも飽きたし。」
「おい。さりげに点滴抜いてんじゃねえ。」
『さーて、お外に出よっと。』
「この部屋からどうやって出んだよ。つか、セイラはいつもどうやって出てるわけ。」
『こんなの楽勝楽勝。1時間置きに変更される18桁のパスワードを打ち込めばいい。』
もちろんココはセイラに見えないようにパネルに触れていた。だがセイラはココ程とはいかないが目もすこぶる良いのだ。
『こんな時のためにパネルの指紋は毎回拭き取ってあるんだ。皮脂の渇き具合から推測して…………』
「…………………」
『…………………』
「…………………………おい。開かねーぞ。」
『おかしいな。パスワードは合ってるはずなんだけど。』
・パスワードは合ってる。
・ココが出ていってから30分と経っていない。
考えられるのはココがパスワードが書き換えられる時間の直前に出ていった………。
つまり、ココの方が一枚上手だったという事だ。
オーソドックススタイルに構えてからの左ストレートは空をきる音を立てながら開かれた扉に当たることなく宙を空振った。
訝しげにセイラの拳を見つめるココの姿に冷や汗がだらだらと垂れていく。
「ボクはそんなに待たせちゃったかい?」
『イエ……30分キッカリデス…………」
「はーーーー、ったく。遅えよココ。セイラが扉ぶち破ろうとした時はヒヤヒヤしたぜ。」
『え。』
「ま、そういうこった。」
「ほらほら、わがまま言わないで。諦めてベッドに戻ろうか。」
『ぅ、わっ!?』
2人同時に飛びかかってきたのを咄嗟に扉の桟に掴まって足を畳んで避けると下でゴチッ!という音が響いた。
廊下へ飛び降りて振り返ると蹲って顔を押さえているココとサニーの姿があった。
『ご、ごめん……思わずよけちゃった…』
「サ、サニーの鼻がおでこに………」
「ぐおぉ……レの美しい鼻を折る気かよ…………」
『じゃ!先に庭に行ってるからすぐ来てね。』
開閉ボタンを押すと驚くココとサニーの前で無情にも扉は閉まった。まあ、ココがいるからすぐ出てくるだろう。
廊下を駆け出すと向こうから大きな影がやってくる。トリコだ。
「お。セイラ、脱走する気か?」
『ルバンダの卵見に行こうよ。』
「駄目だ。今日はおとなしくしときな。」
『はぁ…ちょっと散歩に行こって言ってるだけなのにアタマ固いんだから。』
「ちょっとの散歩でデビルアスレチックって何日かける気だよ!!?」
『三日。』
「行けるかあ!!オレら明日帰るんだぞ!!」
『あ、そっか!じゃあ1人で行くね。』
スタートの合図のように後ろからココの声が聞こえた瞬間、トリコの股下をスライディングですり抜けた。
後ろを振り返ると悔しそうにしているトリコともう追いついてきたココと鼻を押さえているサニーの姿があった。
「あっ!あぁっ!?」
「何やってんだ、下手くそ!!」
「いてて…トリコこの下手くそ!!」
「うるせぇぞココ、サニー!お前らだって逃げられてんじゃねぇか!!」
『おほほほほ!私を捕まえようなんて十年早んだ…よっ!!』
背後の気配の頭目掛けての後ろ回し蹴りは気配に当たることはなく、足首を捕まれると一気に天地がひっくり返った。
逆さ吊りになった瞬間、呆気に取られている間にシャツの裾がずり落ちてくる。咄嗟に腕を使って上へと伸ばすがお腹を隠すと背中が出てきてスースーする。
『きゃーーーーーーーーっ!!いやーーーーーーっ!!』
「捕まりかた美しさゼロだな。」
「でかした!ゼブラ!」
「何も良くないだろ!セイラは魚じゃないんだぞ!」
「あ?うるせぇな。捕まえりゃいいんだろ。」
『逃げないから、離してゼブラ!』
「………セイラ……………お前にも恥じらいの気持ちがあったとはな。」
『うるさいな!!離せってのスケベ!!』
体を捻って捕まってない方の足でゼブラの手首を蹴りつけると手が離れ、勢いで体の向きが元に戻る。床に着いた足が後ろにと、と、と下がる。着地できなかったことで自分の限界を感じた。
『………あれ……………ちから……はいらにゃ………』
「あ。」
「「「わーーーーーーーっ!!」」」
倒れたセイラの体をサニーのヘアネットが華麗にキャッチした。床上30センチの高さのヘアネットに体を放り投げたセイラはすやすやと寝息を立てている。
「これまた気持ちよさそうに寝やがって。」
「レのヘアネットの精度が良いってことだろ?。」
「サニーのヘアネットはともかく、気持ちよさそうなのは間違いないね。」
「そうか?いつもこんなモンだろ。」
セイラを囲んでトリコ、サニー、ココ、ゼブラは同時に吹き出した。
この時はまだ、この関係が崩れていくなんて誰一人として思わなかったんだ。
オマケ→