第四話
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闘技場から波のように押し寄せる先ほどまでの試合の歓声と、これから始まるトリを飾る試合への期待と興奮を背に受けながら薄暗い入退場の廊下を奥へと進んでいく。
廊下の奥には壁に背を預けるでもなく、背筋をピンと伸ばして立っていた黒服の男が立っていた。所長の部下でもあるこの男はセイラが目の前を横切るとき彼女の方へ視線を向けないまま口を開いた。
「コロシアムはショーです。客はスリルと興奮を求めている。バトルフレグランスに身を任せず見せ場を作る戦いをしてください。あんなにあっさり片付けられてしまっては興醒めしてしまう。」
『勝負は一瞬で決まるからこそ客は目が離せなくなるもんでしょう。心配しなくても客は馬鹿みたいな試合に何億とつぎ込んでる。』
男の言葉にセイラは表情を動かさないまま淡々と口を動かしたがその口調はココやトリコたちと話している時とは想像もつかないほど冷たく、突き放したような言い方だった。
『……う、ゲホッゲホッ!』
視界が揺れ、足下がおぼつかなくなってきた。薄暗い廊下の冷たい壁に体を預けると反響する自身の荒い息遣いが耳につく。
「研究所の最高傑作と言われている貴方も体質には逆らえないとみえる…こんなところで倒れられたら邪魔になります。」
『っ、うる、さいな………』
首に嵌められた強化セラミックのチョーカーを外そうと手を掛けるが外れる気配がない。
「本日は就寝までの記録を測ります。明日の朝までは外れませんよ。」
『ーーーーーーはっ!』
研究所でのセイラの扱いなどこんなものだ。ココたちの反応が珍しいだけで、こんなこと慣れてる。傷ついてない。
飼い犬のように首輪を嵌められて。これ以上惨めな気持ちになりたくない。
スーッと内側に冷たいものが入り込んでくる。こんな所で弱い部分を見せたら負けだ。
たとえ虚勢であっても、くだらないプライドであっても見栄が人を生かすこともある。
ぐっ、と力を入れて自分の足で歩く。
この研究所で私の居場所はない。
今さらそんなことを思い出すなんて……