第三話
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黒草の草原の奥地。ここら一帯ではひときわ目を引く大きなココアマヨネーズの木の影の下で、すやすやと眠っているココの隣に腰を下ろす。
穏やかな風が吹くとココの髪が揺れる。綺麗な寝顔だ。
あんなにも強力で危険な毒をその体の内に有しているとは思えないほど穏やかな表情。思えないが、先ほどの自分の体に起こったことは紛れもない事実だ。
そうこうしている内にココが目を覚ました。ブラウンの瞳をゆっくりと2度まばたきする。意識がはっきりしてきたのか上体を起こすと弾かれたように後頭部を手で押さえた。
「うっ………いっ、て!」
『でっかいタンコブできてたよ。』
「あーー、どうりで痛いはずだ…いたた……」
『グルメコロシアム終わったばっかでヘロヘロなのに無理するから。』
「ちゃんと回復したさ。」
『あのね!美味しいもの食べて体力は回復しても精神的疲労は蓄積するの!』
「ご、ごめん…セイラは?ケガしてない?」
言ったあとにココはしまったという顔をした。いつも柔和な表情を崩さないココは、意外にも顔に出るタイプらしい。
『…ふふっ……あははははっ!』
「笑わないでくれ……カッコ悪い……」
『あーー、ごめんごめん。別にカッコ悪くないよ。』
『そういうの、慣れてないだけ』とぽつりとこぼすとセイラは立ち上がってココに背中を向けた。
ココも立ち上がってセイラの隣に立つと地響きのような足音と共に一匹のロックドラムがこちらに向かって来ていた。
「こんな時に…早く逃げよう!」
『大丈夫大丈夫。それより足下に気をつけて。』
「え?」
セイラに言われるままココは足下に視線を落とすと靴のつま先に手のひらサイズの石ころがグミのように赤いひとつ目を不思議そうに見上げていた。
「うわっ!びっくりした!!ちっっっっちゃ!!」
『ロックドラムの赤ちゃんだよ。リュックの食料とその子の護衛を引き換えに襲わないでもらったの。』
「かわいいな、コイツ。」
ロックドラムの赤ちゃんを前にハシャいでいるココの方がかわいいんですけど…!
それを言ったら機嫌悪くなりそうだからこみ上げる言葉を飲み込む。
『ロックドラム。棲家を貸してくれてありがとう。ココが起きたから、私たちは戻るね。』
「話がわかるの?」
『少しね。』
「ボクも、ありがとうって、伝えてくれる?」
『礼ならエサになれってさ。』
「お腹壊すぞ。」
『ふふっ。食べられる前に帰ろ。』
ロックドラムの親子に別れを告げ、ココとセイラはくるりと踵を返して研究所へと歩みを始めた。
リュックの中身は全部ロックドラムのお腹の中に入って空っぽのはずなのに帰路へとつく足取りは重かった。
『あのさ。』
「セイラが運んでくれたのか?重かっただろう。」
『ううん、別に。』
「…ふ、複雑だ……」
遠い目をしていたココはセイラの方を向き、大きな手を伸ばしてセイラの頭を撫でると穏やかな笑みを浮かべた。
『よーーーーし!どっちが早く着くか競争!』
「え!!」
『負けた方がリッキーのトイレ掃除ね!!よーいドン!』
「えっ、えっ?!ズルいぞ!!」
か、顔が熱い。心臓もバクバクいっててものすごくうるさい。
押しつぶされそうな青空の下、黒草の草原を駆ける足取りは軽かった。
オマケ→