はじまり、はじまりってやつ。
はずだったのだが...。
この目の前でペラペラと話し続けるこいつは誰なのだろうか。
同じクラスでもコミュニケーションを取らない僕の(頭の中の)名簿には、授業中に居眠りして名前を呼ばれまくる佐々木ぐらいしか分からないのだが...。
「でさぁ、君がそのゲームの主人公にそっくりって言うか...。俺の好みにどストライクなわけで、付き合って♡とかは言わないから、友達にならないですか?」
好みにどストライク。
付き合ってとは言わないが、少しはそんな気があるってことか。
というか、なんで今更。
「あ、今更なんでとか思った?いやぁさ、何度も声をかけようとは思ってたんだけど、幼馴染がねぇ。幼馴染は俺の事大好きだから、他の人と話すのあんまり許してくれねぇんだよ。あ、自分で言うとか痛いとか思ってる?でも、いつもいつもアピールされて気づくなって方が無理だし、あ、聞いてない?」
...要するにこいつは話したいだけなのか?
黙って聞いてくれる人が欲しかったと...。
今のとこ僕は何も話していない。
マシンガントークをなんもリアクションせずに聞いてるだけである。
「そう言えば、金木君って外部生だったか。じゃあ、こんな話を聞いても面白くもなんともないか。俺と同類ならまだしも。で、友達になってくれる?」
「...話しならその幼馴染に聞いてもらえばいいのでは。」
「あれ、最初の方の話聞いてた?意外と天然キャラなの?なにそれ萌えるっ!じゃなくてさ、金木君と仲良くなりたいなぁって話なんだけど...。」
こいつ、1人でも楽しそうだな。
喋り続けるし、コミュ力お化けってやつか。
クラスの中心とかにいそうだな。
幼馴染の話を聞く感じ、やんでれってやつなんだろうか。
面倒くさそう...。
「申し出は嬉しいが、断ってもいいだろうか。」
「喋り方も萌えるっ!て、ふられた?」
「ふったというか、断った。」
「えぇ!?なんで!?」
「君の幼馴染が面倒くさそうだから。あんたと話して恨まれるとか嫌だからな。分かったら、お引き取り願ってもいいだろうか。」
「ただの無口キャラかと思えば、無気力か!好物ですがなにか?!」
「話を聞いていたか?」
「聞いてたよ!でもさ、俺はどうしても金木君と友達になりたいわけですよ。あ、俺の名前言ってなかったね。俺は
「そうか、自己紹介感謝する。」
「で、友達にはなって「あきら。」
聖の話を遮って来たのは、優しそうなイケメンだった。
聖はやんちゃって感じだからなんかバランスいいな。
だが、目の保養にはならんし嫌な匂いがして仕方ない。
「金木君に迷惑かけちゃダメでしょ。ほら、行こう?」
「いーや、金木君とお友達になるまでここにいる。」
「ほら、話なら俺が聞くからさ。」
笑っているように見せているが、目が笑っていない。
早く消えてくれないかって目でこちらを見ている。
何を勘違いしてるのやら。
そちらがそのような態度をとるなら、それなりに返すだけなのだが...。
「ほら、君の幼馴染は僕が気に入らないようだ。僕が要らぬ恨みを受ける前にこいつを連れて行ってくれないか。」
「なんのことかな?俺は明良が君に迷惑をかけないようにって。」
「そうか、目は口ほどに物を言う言葉を知っているか?そういう事だ。こちらとしても、話していただけでそのような目を向けられては不愉快でしかない。」
僕は読んでいた本に栞を挟み席を立つ。
後ろで聖が何かを言っているが、後ろの犬をどうにかしてからにして欲しい。
今も背中に文句アリ気な視線が刺さってかなわん。