番外編/本編没ネタ/if
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◆勇斗の場合
———
「ちょっと勇斗!どこ行ってたの!?」
書類を机に叩きつけるように置いたなまえは、上目遣いでこちらを睨み頬を膨らませる。
「どうした?三十分席外しただけだろ?」
呆れたように笑う勇斗だったが、内心は全く平静ではない。
「今日はあの伯母様がいて、勇斗が居なくなった瞬間からグチグチ煩かったんだから……!!」
「はいはい、悪かったって」
軽く頭を撫でる。だが、なまえは更に不満そうに眉を寄せた。
「反省してない!」
「してるよ、ちゃんと。一人にしてゴメンな」
勇斗はくしゃりと笑った。いつもの大人の余裕ではなく、子供の様に無邪気な笑顔でなまえの隣に立つ。
今はただ、隣にいる理由があればいい。
「じゃあ今日はもう離れないでよね……」
なまえは勇斗の袖を掴み呟いた。そう言われて、勇斗は少しだけ困ったように笑う。
「んー、それは無理だな」
「なんで!?」
「離れた後のその言葉、結構好きだから」
「はぁ!?」
悪戯な笑みを浮かべた勇斗に嫌な予感がしたなまえは咄嗟に腕を掴み、「もう逃さない」と言いたげに睨む。
「一人にしないってさっき言ったからね!」
「うん、言った言った」
「二回言わないで!それ嘘って事だから!!」
「はいはい」
「ほらまた!」
なまえがギュッと強く腕を掴んでも、勇斗は満足そうな笑みに変わるだけだった。
◆仁人の場合
———
「仁人、こんな所に居た!」
扉が開いたと思うとなまえの大きな声が響いた。
「どうしました?」
「どうしましたじゃないよ!」
ご機嫌斜めな様子のなまえに仁人は少し首を傾げる。
「また勝手にいなくなる!」
「勝手にというか、お茶の用意でこちらに来ただけで」
「一言言ってよ!」
仁人は大きな目を更に見開いて目を瞬かせる。
「探したんだからね!」
「……」
「仁人いないとどこに何があるか分からないし、そばに居てくれなきゃ困るの!」
その瞬間、仁人の手が止まる。昔から何度も願った事だった。
けれど今それを言われても、嬉しい顔なんて出来ない。
「……そうですか」
カチャンとカップを置く音が響く。
仁人は平然と返すが、視線だけは逸らした。
「なにその反応!?わたし、すごく困って——」
言い終える前に仁人は距離を詰める。思わず言葉を飲み込んだなまえに小さく笑う。
「なら、良かったです」
「、はぁ!?わたしがどれだけ困ってたか分かってないでしょ!?」
「大声を出さないでくださいはしたないですよ」
今は、それだけで十分だ。
◆太智の場合
———
「太ちゃーーん!」
廊下を歩いていた太智の背中になまえは抱き付いた。
「うおっ!?」
太智は体勢を崩す事なく受け止め振り返る。
「どしたん急に!」
「探したよ!」
「え?」
「太ちゃんがいないと困るんだから!」
太智は数秒固まった。
そして言葉の意味を理解し、盛大に赤くなる。
「な、なななな何言うてんの!?」
「だから!」
「いやいや、それ他の男に言うたらアカンで!?」
「なんで!?」
「勘違いするから!!」
頭を抱える太智。
そんな彼を見てなまえは首を傾げる。
「でも、本当に困るもん……」
「〜〜〜ッ」
急にしおらしくなったなまえに太智は慌てふためく。
「、太ちゃん?」
「近い近い近い!!」
顔を真っ赤にしながら距離を取る太智に、なまえはますます意味が分からない顔をしていた。
◆柔太朗の場合
———
「あ、山中くん」
廊下でなまえに呼ばれて柔太朗は振り返る。
「はい、どうしました?」
今日一日、役員会議で忙しそうにしていたなまえは少し疲れた顔をして眉を下げた。
「今日ずっと忙しかった?」
「少しだけ」
「そっか……」
どこか浮かない顔をするなまえに、柔太朗は首を傾げる。
「何かありました?」
「んー」
なまえは少し考え、眉を下げたまま笑う。
「山中くんが居てくれないと困るなって」
その言葉に柔太朗は静かに瞬きを繰り返す。
「俺が、ですか?」
「うん」
即答するなまえに、今度は柔太朗が眉を下げて笑う。
「それは光栄です」
「光栄だなんて……冗談言ってないで仕事するよ」
「本当の事なんですけどね」
本当はその一言だけで一日頑張れるくらい嬉しい。
でもそれを言ったら、きっと困らせてしまうから。
「では今後は、なるべく近くに居るようにしますね」
「ほんと!?」
「はい」
なまえの笑顔を見て、柔太朗はまた少しだけ目を細めた。
◆舜太の場合
———
「あ、舜太!やっと見つけた!」
「んー?なにー?」
「舜太がいなくてめっちゃ困ったんだから!」
突然現れたなまえの、突拍子もない台詞に、舜太は飲んでいたコーヒーを吹きそうになった。
「待って待って待って」
「ん?」
「今なんて?」
「舜太がいないと困る」
分かりやすく頬を膨らませ、ジッと舜太を見る瞳は鋭かった。
さらりと当たり前の様に言うなまえに、舜太は溜息をつく。
「ちょっとなまえさぁ」
舜太は天を仰ぎ、なまえから一度視線を外す。
「それ、男に言うん反則やと思う」
「なんで?」
「好きになるから」
「え?」
一瞬だけ二人の時が止まる。だが舜太はすぐ笑った。
「冗談やって!」
「びっくりした……」
「はは」
笑いながら、ほんの少しだけ目を伏せる。
冗談、そういうことにしておいた方がいい。今の関係を壊したくないから。
「でも俺も困るよ」
「?」
「なまえがおらんと退屈やもん」
そう言うと舜太はぽんっとなまえの頭を撫でた。