番外編/本編没ネタ/if
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「俺がいないとダメなんだから」
◆勇斗の場合
———
静まりかえったオフィスに一人で残っていたなまえは、資料を片手にキーボードを鳴らす。
「上司が連日残業してると下が帰りづらくなるからやめろって言ったよな?」
「分かってるよ、だからみんな帰ってるでしょ?」
「……お前俺の話聞いてたか?」
新プロジェクトのリーダーに抜擢されたなまえは初めての事でオーバーワークになっていた。
そんななまえを見兼ねて指摘をする勇斗だったが、その言葉はなまえの耳には届いていない様だ。
「リーダーはわたしなんだからちゃんとしなきゃなの」
その言葉に勇斗はため息を漏らす。ネクタイを緩め、頭を捻る。
なまえの肩に乗る重圧が分からない訳ではない。だが、ただがむしゃらにやるだけでは意味がない事も知っている。
「、ちゃんとしようとすると壊れるだろ」
「何それ」
「図星つかれたからって睨むなよ」
肩を竦めて言った。なまえの視線はもうモニターに向かっている。
「だから俺がいる」
そして静かに近づく。
「お前、一人だと全部抱えるから」
なまえの座る椅子を後ろに滑らせ、モニターの間に割って入った。
腰を折り視線を合わせる。勇斗の指がなまえの顎を持ち上げた。
「もっと俺を頼れよ」
◆仁人の場合
———
寝る前に戸締りの確認をしている中、廊下に漏れている灯りを見て仁人は眉を顰めた。
「まだ起きてらっしゃったのですか?」
「……」
集中しているのかなまえは手元の資料から目を離さない。そもそもノックの段階でも返事はなかった。
仁人はなまえから資料を取り上げる。
「は?え、ちょっと、仁人!返してよ!!」
「返しません」
「大丈夫だから!」
「ダメです」
言うことを聞かない仁人に、なまえは声を荒げる。
「なんで信じてくれないの!?」
その瞬間、ほんの少しだけ仁人の瞳は大きく揺れた。
「、あなたが無茶するからでしょう」
一度言葉を飲み込む。
それでも口は止まらなかった。
「放っておいたら何も食べない、寝ない、全部抱える」
そして低くゆっくり言った。
声が震えてしまわぬ様に。
「……そんなに俺に心配かけさせたいのか?」
◆太智の場合
———
お茶の誘いにも乗らず、部屋に閉じこもりのなまえを見かねた太智は、ノックもせず部屋に入った。
「生きてるー!?」
「っ、」
布団に包まり蓑虫の様になっていたなまえが驚いた顔で太智を見る。
「お、元気やん」
太智は何も気にせずベッドに腰掛けた。
「帰ってよ」
「い、や、だ。」
ここからはもうお互いの意地の張り合いだ。
蓑虫のまま頬を膨らませるなまえと、ただ窓の外を眺める太智。
「わたし、悪くないもん……」
「うーん?」
「仁人が小煩いのが悪いんだもん……」
「それもそうやな!」
太智は笑った。
「吉田さん、ほんまに小さい事をいつまでもグチグチうるさいよなぁ」
「……」
「でもさ、」
そこで初めて、少し真面目な顔でなまえを見た。
「仁ちゃんやって、なまえのこと思って言うとるんやで?」
「それは……分かってるんだけど……」
「さっき俺からもフォローしといたから、みんなでお茶しよ」
蓑虫になってるなまえの頭を撫でる。
「ほら、太智くんに『ありがとう』って感謝して?」
「やだ」
「あはは!」
◆柔太朗の場合
———
大事なプレゼンが控えてる中、柔太朗は朝から調子が悪そうだった。
「大丈夫?」
「大丈夫ですよ?」
なんでもないですよ、と言いたげに笑う。
「……嘘」
なまえは柔太朗の額に手を当てる。ほんのりと熱い。
柔太朗は困ったように笑った。
「だってなまえさん、一人だと何するか分からないし……」
少しの沈黙が流れた。
「だから俺、頑張ってきたんです」
なまえの手を払い除け、その代わり優しく手首を掴む。
「あなたの隣に立てるように」
そう言って笑った。
けれどその顔色は少しも良くならない。
「俺、もっと頑張りますから」
◆舜太の場合
———
大学終わりになまえのバイト先の前を通りすぎれば、酷く疲れた様子のなまえがいた。
「シフトもう終わり?」
「終わってない」
「ほな休憩やね」
カバンから小分けにされたチョコを取り出すとなまえに渡す。
「そういえば、わたしがシフトの時いつも来るよね」
チョコを頬張りなまえは言った。
その言葉に舜太はキョトンと目を丸くする。
「来たらあかん?」
「、そうじゃなくて」
小さく眉を寄せるなまえだが、それとは反対に舜太は笑った。
「まぁ、しゃーないやん」
流れる様に繋げる。
「なまえは俺がおらんと危なっかしいし」
「今はもう大丈夫だよ」
数々の失敗が頭を過りなまえは笑う。
その横顔を見ながら舜太は困った様に眉を下げた。
「分からんかなぁ」
「?」
「会いたかっただけやん」
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