Royal Milk Xxx
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東京駅で迷ってた。
心細そうに辺りを見渡しとる姿に、思わず声かけたんが始まりやった。
地方から出てきた子なんかなって思っとったら、まさか地元の人で。それには結構驚いたんを覚えてる。
今じゃ当たり前みたいに電車にもバスにも乗れるし、展示会のチケットやって一人で買える。
人って、いつからでも成長できるんやね。
「ごめん、なまえ待ったよな!?」
「遅いよ舜太!」
「ほんまごめんてー!!」
息を切らして駆け寄る舜太に、わざとらしく怒ってみせる。「怒ってても可愛いなー」と笑い返す舜太に、顔に反省の色は見られない。呆れた様子で眉を上げるなまえ。でも舜太の笑顔を見ていると、怒っているのもバカらしく感じてきた。
「でも今日のフリー入場やん?そんな焦らんでも大丈夫やって」
「お前が言うな!」
「はははっ!」
「わたし結構楽しみにしてたんだから!」
「えー、ほんまに?」
小首を傾げる舜太と、赤べこの様に頷くなまえ。
なまえはスマホを舜太に見せると少し興奮気味に口を開く。
「舜太が見つけてくれた今日の展示会、その時の人が何を思って何を残し、何を伝えたいのか、そういうのが見れるんだよ!?昔の人は三十一文字で想いを綴り、現代人は140文字に思いを込める!!……そういうの思ったら、なんか、良いな!って思ったの!!」
「そっか、じゃあこの展示のポスター、見つけてきてよかったわ〜」
舜太は満足そうに、入り口前に飾られたポスターを指先で示す。
この展示を勧めて正解だったらしい。
興奮気味ななまえに合わせ、少し歩幅を大きく、けれどもゆっくりと隣を歩く。
「見て舜太、昔の文豪の構成メモだって」
「なんか落書きもしとるんやな」
コンコン、と舜太の指先がガラスケースを叩いた。
「え、そっち注目するの!?」
「こっちやろ!?文豪やって俺らと変わらんかったんやな〜って」
「いやいや変わるから!落書きなんかしないから!」
「えー、なまえ教科書の偉人の顔に落書きせんかったタイプなん!?」
「なにそれ!?」
頭の上に、疑問符を大量に出現させているなまえを他所に、「あ!」と舜太は短い声を上げる。その声に、なまえも舜太の視線を辿った。
「プロフィール帳まで展示してあるんだね」
「うわ、懐かし!これ小学生ん時に女子に書かされたやつやん」
「書いたことあるの!?」
「あるある!好きな人の欄とか何書くかめっちゃ迷ったな」
「へー、そうなんだ……」
なまえが視線を落とすと、今度は舜太がそれを追う。
「あ……この絵葉書ええな、」
「なんで?」
「ほら、」
そう言うと、舜太は絵葉書の展示の前で立ち止まる。少し身を屈めながら、数枚の絵葉書を指でなぞった。
「色んな地域の消印なのに宛先は全部同じ人でしょ?」
「え?」
覗き込み、舜太の言葉を理解したなまえは目を大きく開いた。それを見た舜太は目を細める。
「ホントだ!添えられてる一言は素っ気ないけど、旅先でもずっと想ってくれてたんだね……!!」
「意外とお土産買うん面倒やったパターンかもしれんやん?あちこち渡り歩いとるみたいやし」
「、ロマンを返してよ」
頬を膨らませるなまえの頭を舜太はポンポンと撫でる。
包み込むような大きな手。
長い指が髪を掠め、その温かさに少しだけ肩の力が抜けた。
◆ ◆
「結構なボリュームだったね」
「なぁー」
「教えてくれてありがとう」
「いえいえ。なまえが楽しそうでよかったよ」
舜太が選んだカフェに入り一旦休憩をする。
学術的視点から展示を振り返る舜太を、なまえはそっと見つめ、ゆっくりとアイスティーを飲んだ。スッキリとした冷たさが喉を潤す。
内装もお洒落で綺麗だったが、少し風を感じたくてなまえはガーデン席を選んだ。
「三月は俺が就活とかで忙しくて、なかなか連絡取れんかったから、ちょっと心配しとったんよ?」
「え?心配!?なんで?」
「だってあの頃のなまえ、なんか元気なかったやん……」
舜太の長い指がモジモジとストローのゴミを弄る。
丸めて伸ばして、畳んで開いて。思考の整理をする様に。
クシャクシャになったそれを脇に置くと、舜太はなまえの目を見る。
「俺に出来ることあったら何でも言って!俺、少しは頼りになると思うし!」
「、ありがとう」
「それに就活も終わって、前より動けるから!」
その言葉にストローで遊んでいたなまえの手が止まる。
カランと、氷が傾く音が小さく響く。
なまえは少し言葉に迷いながら口を開いた。
「そーゆー話なら……わたしも実は、ちゃんと働くことになる、かも……」
「え!?あのアルバイターのなまえが!?やっとやりたい事決まったんや!おめでとう!」
「、ありがとう……でも『あの』ってなんだよ!」
「だって、出会った時からずっと『色んな事を見てみたい』って言っとったやん!やっと一番やりたい事が見つかったんやね!」
舜太の顔はパッと明るくなった。出会った時と変わらない、子犬の様に無邪気な笑顔で手を叩いて喜ぶ。尻尾が付いてたら千切れる程振っているだろう。
そして少し前のめりになり、なまえの手を包み込むように握った。
「じゃあカフェでお茶しとる場合やないやん!もっと高級なフレンチとか行こ!」
「いいよ、そんなの!わたしは舜ちゃんとこうやって何気ない時間を過ごすのが好きなんだから!」
「そっかー、まぁそう言ってもらえるんは嬉しいんやけどさ」
口を尖らせて見せたが、その表情も直ぐに、にやりと悪戯な笑みを浮かべた。
今度はもう少し距離を縮め、手招きをする。二人の影が重なった。
舜太は大きな手で口元を隠すと、なまえにそっと囁く。
「何気ないって言えばなんやけど、今って多分めっちゃ非日常やと思うよ?」
「???」
「俺たち、今監視されとる!」
「はぁ!?」
舜太の指さす方を振り返ると、隠れる影が二つ。息を#呑んだn2#は、その影へと走った。
「何やってんの!?」
「、それはこちらのセリフです」
「ごめーん、仁ちゃんにバレてもうて……」
多くは語らず眉を寄せ瞼を下げる仁人と、あからさまに目線が泳ぐ太智がいた。
なまえは色々言いたい気持ちを一旦飲み込み、その場にしゃがみ込んだ。
「どうせ帰ってって言ったって仁人は帰らないんでしょ?」
「はい、もちろん!」
これ見よがしに満面の笑みを浮かべた仁人に腹が立つ。一度キッと睨みつけてからなまえは手を上げるが、軽々と手首を掴まれ不発に終わる。
「折角予定合わせられたのに、ここで解散なんて舜太に悪いしな……」
「え?全然悪くないやん?」
「——ッ!?」
長い足を折りたたみ、なまえと目線が合うように体を丸める舜太が隣に座っていた。なまえは何度も瞬きをして舜太の顔を覗き込む。
「え?わたしはもっと舜太といたいのに!?」
「俺もそのつもりやったよ?」
「……??」
「この二人って、前から話に出とった弟さん?」
「、弟?」
「うん!そう!!弟!!」
こうならヤケだ、となまえは隠れる意識のあった太智も舜太の前に引っ張り出した。
ペコペコと会釈をする太智と、威圧的に腕を組む仁人、そして膝を抱えたままニコニコな舜太。
「弟さん達も一緒にお茶しませんか!?さっきの展示について一緒に話したいし!」
「良いですね!俺もあなたの事気になってました!!」
笑顔を貼り付けたままの仁人は立ち上がると、舜太の腕を引いて席へと向かう。あまりにも流れる様なその動作になまえも慌ててその後を追った。
「——で、二人はどういう関係で?どうして今日は、こんなマニアックな展示を見ることに?そもそもお仕事は何をされているのでしょうか?」
矢継ぎ早に質問する仁人は言い終えると当たり前の様になまえのアイスティーを飲む。
笑顔はそのまま、威圧感もそのままで。
「えっと、俺は」
「仁ちゃん面接ちゃうんやから!それであんたも真面目に答えようとせんでええから!」
「話そうとしてくれてるのに失礼だぞ、太智」
「俺は全然気にしてないですよ!ずっと二人の話聞いとったから、今日会えて嬉しいです!」
「、ずっと……」
腕を組み直し、スッと顎を引き目を細める仁人。それを見た太智は、慌てて二人の間に割って入る。
「なまえとは結構前から仲良くしてくれてるの?」
「それはもう!俺が高一の時やから、もう六年くらいになるんかな?」
「そう、だね……」
舜太の言葉に、仁人と太智はわずかに表情を止めた。
六年。
舜太にとっては友人として過ごした年月。
仁人と太智にとっては、空白になってしまった年月。
同じ時間を指しているはずなのに、誰一人として同じ景色を見ていなかった。
「……二人ともさ、家の用、放置して来たんだよね?」
穏やかな口調だった。けれどその瞳からは、先程までの輝きが消えている。
「油売ってる暇、ないと思うんだけど」
舜太は思わず息を呑んだ。初めて見るその表情に。
でも、仁人と太智だけは知っている。
もう何を言っても届かなくなった時の顔を。
「、戻るか、太智。」
「え、あ、うん」
「では、遅くならない内に帰ってきてくださいね、姉さん 」
静かに立ち去る二人を見送り、なまえと舜太もカフェを出る。
スタスタと歩くなまえに舜太は小走りで追いかけた。
「俺は別に一緒でも良かったんやけどな?」
「そう?でもわたしは舜太との時間を大切にしたいの」
「……そっか。じゃあもうちょっと遊んでこか!」
「うん!」
なまえは笑った。さっきまでの空気を消し去る様に。
心細そうに辺りを見渡しとる姿に、思わず声かけたんが始まりやった。
地方から出てきた子なんかなって思っとったら、まさか地元の人で。それには結構驚いたんを覚えてる。
今じゃ当たり前みたいに電車にもバスにも乗れるし、展示会のチケットやって一人で買える。
人って、いつからでも成長できるんやね。
06
「ごめん、なまえ待ったよな!?」
「遅いよ舜太!」
「ほんまごめんてー!!」
息を切らして駆け寄る舜太に、わざとらしく怒ってみせる。「怒ってても可愛いなー」と笑い返す舜太に、顔に反省の色は見られない。呆れた様子で眉を上げるなまえ。でも舜太の笑顔を見ていると、怒っているのもバカらしく感じてきた。
「でも今日のフリー入場やん?そんな焦らんでも大丈夫やって」
「お前が言うな!」
「はははっ!」
「わたし結構楽しみにしてたんだから!」
「えー、ほんまに?」
小首を傾げる舜太と、赤べこの様に頷くなまえ。
なまえはスマホを舜太に見せると少し興奮気味に口を開く。
「舜太が見つけてくれた今日の展示会、その時の人が何を思って何を残し、何を伝えたいのか、そういうのが見れるんだよ!?昔の人は三十一文字で想いを綴り、現代人は140文字に思いを込める!!……そういうの思ったら、なんか、良いな!って思ったの!!」
「そっか、じゃあこの展示のポスター、見つけてきてよかったわ〜」
舜太は満足そうに、入り口前に飾られたポスターを指先で示す。
この展示を勧めて正解だったらしい。
興奮気味ななまえに合わせ、少し歩幅を大きく、けれどもゆっくりと隣を歩く。
「見て舜太、昔の文豪の構成メモだって」
「なんか落書きもしとるんやな」
コンコン、と舜太の指先がガラスケースを叩いた。
「え、そっち注目するの!?」
「こっちやろ!?文豪やって俺らと変わらんかったんやな〜って」
「いやいや変わるから!落書きなんかしないから!」
「えー、なまえ教科書の偉人の顔に落書きせんかったタイプなん!?」
「なにそれ!?」
頭の上に、疑問符を大量に出現させているなまえを他所に、「あ!」と舜太は短い声を上げる。その声に、なまえも舜太の視線を辿った。
「プロフィール帳まで展示してあるんだね」
「うわ、懐かし!これ小学生ん時に女子に書かされたやつやん」
「書いたことあるの!?」
「あるある!好きな人の欄とか何書くかめっちゃ迷ったな」
「へー、そうなんだ……」
なまえが視線を落とすと、今度は舜太がそれを追う。
「あ……この絵葉書ええな、」
「なんで?」
「ほら、」
そう言うと、舜太は絵葉書の展示の前で立ち止まる。少し身を屈めながら、数枚の絵葉書を指でなぞった。
「色んな地域の消印なのに宛先は全部同じ人でしょ?」
「え?」
覗き込み、舜太の言葉を理解したなまえは目を大きく開いた。それを見た舜太は目を細める。
「ホントだ!添えられてる一言は素っ気ないけど、旅先でもずっと想ってくれてたんだね……!!」
「意外とお土産買うん面倒やったパターンかもしれんやん?あちこち渡り歩いとるみたいやし」
「、ロマンを返してよ」
頬を膨らませるなまえの頭を舜太はポンポンと撫でる。
包み込むような大きな手。
長い指が髪を掠め、その温かさに少しだけ肩の力が抜けた。
◆ ◆
「結構なボリュームだったね」
「なぁー」
「教えてくれてありがとう」
「いえいえ。なまえが楽しそうでよかったよ」
舜太が選んだカフェに入り一旦休憩をする。
学術的視点から展示を振り返る舜太を、なまえはそっと見つめ、ゆっくりとアイスティーを飲んだ。スッキリとした冷たさが喉を潤す。
内装もお洒落で綺麗だったが、少し風を感じたくてなまえはガーデン席を選んだ。
「三月は俺が就活とかで忙しくて、なかなか連絡取れんかったから、ちょっと心配しとったんよ?」
「え?心配!?なんで?」
「だってあの頃のなまえ、なんか元気なかったやん……」
舜太の長い指がモジモジとストローのゴミを弄る。
丸めて伸ばして、畳んで開いて。思考の整理をする様に。
クシャクシャになったそれを脇に置くと、舜太はなまえの目を見る。
「俺に出来ることあったら何でも言って!俺、少しは頼りになると思うし!」
「、ありがとう」
「それに就活も終わって、前より動けるから!」
その言葉にストローで遊んでいたなまえの手が止まる。
カランと、氷が傾く音が小さく響く。
なまえは少し言葉に迷いながら口を開いた。
「そーゆー話なら……わたしも実は、ちゃんと働くことになる、かも……」
「え!?あのアルバイターのなまえが!?やっとやりたい事決まったんや!おめでとう!」
「、ありがとう……でも『あの』ってなんだよ!」
「だって、出会った時からずっと『色んな事を見てみたい』って言っとったやん!やっと一番やりたい事が見つかったんやね!」
舜太の顔はパッと明るくなった。出会った時と変わらない、子犬の様に無邪気な笑顔で手を叩いて喜ぶ。尻尾が付いてたら千切れる程振っているだろう。
そして少し前のめりになり、なまえの手を包み込むように握った。
「じゃあカフェでお茶しとる場合やないやん!もっと高級なフレンチとか行こ!」
「いいよ、そんなの!わたしは舜ちゃんとこうやって何気ない時間を過ごすのが好きなんだから!」
「そっかー、まぁそう言ってもらえるんは嬉しいんやけどさ」
口を尖らせて見せたが、その表情も直ぐに、にやりと悪戯な笑みを浮かべた。
今度はもう少し距離を縮め、手招きをする。二人の影が重なった。
舜太は大きな手で口元を隠すと、なまえにそっと囁く。
「何気ないって言えばなんやけど、今って多分めっちゃ非日常やと思うよ?」
「???」
「俺たち、今監視されとる!」
「はぁ!?」
舜太の指さす方を振り返ると、隠れる影が二つ。息を#呑んだn2#は、その影へと走った。
「何やってんの!?」
「、それはこちらのセリフです」
「ごめーん、仁ちゃんにバレてもうて……」
多くは語らず眉を寄せ瞼を下げる仁人と、あからさまに目線が泳ぐ太智がいた。
なまえは色々言いたい気持ちを一旦飲み込み、その場にしゃがみ込んだ。
「どうせ帰ってって言ったって仁人は帰らないんでしょ?」
「はい、もちろん!」
これ見よがしに満面の笑みを浮かべた仁人に腹が立つ。一度キッと睨みつけてからなまえは手を上げるが、軽々と手首を掴まれ不発に終わる。
「折角予定合わせられたのに、ここで解散なんて舜太に悪いしな……」
「え?全然悪くないやん?」
「——ッ!?」
長い足を折りたたみ、なまえと目線が合うように体を丸める舜太が隣に座っていた。なまえは何度も瞬きをして舜太の顔を覗き込む。
「え?わたしはもっと舜太といたいのに!?」
「俺もそのつもりやったよ?」
「……??」
「この二人って、前から話に出とった弟さん?」
「、弟?」
「うん!そう!!弟!!」
こうならヤケだ、となまえは隠れる意識のあった太智も舜太の前に引っ張り出した。
ペコペコと会釈をする太智と、威圧的に腕を組む仁人、そして膝を抱えたままニコニコな舜太。
「弟さん達も一緒にお茶しませんか!?さっきの展示について一緒に話したいし!」
「良いですね!俺もあなたの事気になってました!!」
笑顔を貼り付けたままの仁人は立ち上がると、舜太の腕を引いて席へと向かう。あまりにも流れる様なその動作になまえも慌ててその後を追った。
「——で、二人はどういう関係で?どうして今日は、こんなマニアックな展示を見ることに?そもそもお仕事は何をされているのでしょうか?」
矢継ぎ早に質問する仁人は言い終えると当たり前の様になまえのアイスティーを飲む。
笑顔はそのまま、威圧感もそのままで。
「えっと、俺は」
「仁ちゃん面接ちゃうんやから!それであんたも真面目に答えようとせんでええから!」
「話そうとしてくれてるのに失礼だぞ、太智」
「俺は全然気にしてないですよ!ずっと二人の話聞いとったから、今日会えて嬉しいです!」
「、ずっと……」
腕を組み直し、スッと顎を引き目を細める仁人。それを見た太智は、慌てて二人の間に割って入る。
「なまえとは結構前から仲良くしてくれてるの?」
「それはもう!俺が高一の時やから、もう六年くらいになるんかな?」
「そう、だね……」
舜太の言葉に、仁人と太智はわずかに表情を止めた。
六年。
舜太にとっては友人として過ごした年月。
仁人と太智にとっては、空白になってしまった年月。
同じ時間を指しているはずなのに、誰一人として同じ景色を見ていなかった。
「……二人ともさ、家の用、放置して来たんだよね?」
穏やかな口調だった。けれどその瞳からは、先程までの輝きが消えている。
「油売ってる暇、ないと思うんだけど」
舜太は思わず息を呑んだ。初めて見るその表情に。
でも、仁人と太智だけは知っている。
もう何を言っても届かなくなった時の顔を。
「、戻るか、太智。」
「え、あ、うん」
「では、遅くならない内に帰ってきてくださいね、
静かに立ち去る二人を見送り、なまえと舜太もカフェを出る。
スタスタと歩くなまえに舜太は小走りで追いかけた。
「俺は別に一緒でも良かったんやけどな?」
「そう?でもわたしは舜太との時間を大切にしたいの」
「……そっか。じゃあもうちょっと遊んでこか!」
「うん!」
なまえは笑った。さっきまでの空気を消し去る様に。