2:幸せな食事
ヒロイン
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少ししんみりした空気を吹き飛ばすように、ヒロインがパン!っと手を叩いた。
「さて、お腹減ったからご飯買ってこようかな!」
今日は何を食べよう~。
と、自作の歌を歌いながら、ヒロインが立ち上がった。
「なぁ、ヒロイン。たまにはオレに買い出し行かせてくれよ。気分転換したいぞ、と」
レノはヒロインを見上げた。
すぐさまヒロインの顔が渋くなる。
「…またクッキー買ってくる気でしょ?」
「クッキーは禁止だろ?ちゃんとしたもの買ってくるから、この通り!」
レノはヒロインに手を合わせて拝むように頭を下げた。
1秒、2秒…少しの沈黙の後、ヒロインは渋々といった感じで頷いた。
「栄養食系は禁止だからね!あと…」
「アイスだろ?今度は一人で食べろよ」
「お、わかってきたね。よろしく!」
満面の笑みで手を振るヒロインに見送られ、レノは買い出しにでかけた。
久しぶりに浴びた直射日光は眩しく、レノは思わず目を細めた。
(さて、困ったぞ、と)
ちゃんとしたものを買ってくるとは言ったものの、レノには全くあてがなかった。
ヒロインが好きそうなものなど検討もつかない。
今まで食べたものを思い起こしながら、レノは市街地の方に足を向けた。
普段、食べ物など気にも留めないが、注意深く見てみると街にはいろいろなものがあった。
食事だけでなく、ケーキやアイスの店もたくさんある。
その一つ一つを眺めながら、レノはある店の前で足を止めた。
(ヒロイン、こういうの好きそうだな)
レノの目に止まったのは、ショーケースに入った色とりどりのフルーツ入りのゼリー。
きっと、これを見せたら「かわいい」と言って喜んでくれるだろう。そのヒロインの顔を想像し、少し口元が緩んだ。
レノはそのいくつかを選んで満足し、帰路につこうとして肝心のご飯を買っていないことに気づく。
ゼリーを買うことに注力し、ご飯のことにまで頭が回らなかったレノは、よく見るチェーン店でハンバーガーを買って帰ることにした。
ヒロインのいるアパートに帰る前に、レノはコンビニの前でタバコに火をつけた。
最近はできるだけヒロインの前でタバコを吸わないようにしていた。その仕草、その臭いをヒロインは嫌がるだろうから。
「すみません、火貸してもらえませんか?ライターどこかに落としたみたいで」
半分ほどタバコを吸ったところで、男の声が聞こえてきた。
レノは男を一瞥すると、ライターを差し出した。
「ありがとうございます」
最初はその男のことなど気にもしなかった。
しかし、男の灰を落とす手付きを見て、レノははっとした。
ヒロインが嫌がった、その仕草。
偶然かもしれないが、なんとなく嫌な感じだった。
そして、そういう勘はよく当たる。
レノはタバコを灰皿に押し付けると、そのまま男の方は見ずにその場をあとにし、近くの角を曲がってからコンビニの方を覗いた。
男は誰かと電話をしているようだった。追いかけてくる様子はない。
相手が余程の手練でない限り尾行に気づく自信はあったが、レノは念には念を入れて尾行がないことを確認してからアパートに戻った。
「レノ、遅かったね。ご飯選ぶの悩んだ?」
出迎えてくれたヒロインのいつもの笑顔にほっとする。
レノは緊張を解くと、ヒロインにいくつかの紙袋を渡した。
「あれ、アイスは?」
「あ、悪ぃ。忘れた」
ヒロインに指摘され、コンビニで買おうとして忘れていたことを思い出した。
「じゃあ、今度2つ買ってきてね。あ、何これ、かわいい!私、こういうの好き!」
アイスのことで少しだけむくれていたヒロインの顔が一気に明るくなる。
うれしそうに鼻歌を歌いながら、ヒロインは冷蔵庫にゼリーを閉まっていた。
その姿を見ていると、先程のあの嫌な感じもどこかに吹き飛んでしまう。
「じゃあ、アイスの件はそれでチャラってことで…」
「それはそれ、これはこれ。アイスは2つ」
ヒロインにしっかりと釘を差され、レノはやれやれと肩を竦めた。
To be continued...
2020/11/19
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「さて、お腹減ったからご飯買ってこようかな!」
今日は何を食べよう~。
と、自作の歌を歌いながら、ヒロインが立ち上がった。
「なぁ、ヒロイン。たまにはオレに買い出し行かせてくれよ。気分転換したいぞ、と」
レノはヒロインを見上げた。
すぐさまヒロインの顔が渋くなる。
「…またクッキー買ってくる気でしょ?」
「クッキーは禁止だろ?ちゃんとしたもの買ってくるから、この通り!」
レノはヒロインに手を合わせて拝むように頭を下げた。
1秒、2秒…少しの沈黙の後、ヒロインは渋々といった感じで頷いた。
「栄養食系は禁止だからね!あと…」
「アイスだろ?今度は一人で食べろよ」
「お、わかってきたね。よろしく!」
満面の笑みで手を振るヒロインに見送られ、レノは買い出しにでかけた。
久しぶりに浴びた直射日光は眩しく、レノは思わず目を細めた。
(さて、困ったぞ、と)
ちゃんとしたものを買ってくるとは言ったものの、レノには全くあてがなかった。
ヒロインが好きそうなものなど検討もつかない。
今まで食べたものを思い起こしながら、レノは市街地の方に足を向けた。
普段、食べ物など気にも留めないが、注意深く見てみると街にはいろいろなものがあった。
食事だけでなく、ケーキやアイスの店もたくさんある。
その一つ一つを眺めながら、レノはある店の前で足を止めた。
(ヒロイン、こういうの好きそうだな)
レノの目に止まったのは、ショーケースに入った色とりどりのフルーツ入りのゼリー。
きっと、これを見せたら「かわいい」と言って喜んでくれるだろう。そのヒロインの顔を想像し、少し口元が緩んだ。
レノはそのいくつかを選んで満足し、帰路につこうとして肝心のご飯を買っていないことに気づく。
ゼリーを買うことに注力し、ご飯のことにまで頭が回らなかったレノは、よく見るチェーン店でハンバーガーを買って帰ることにした。
ヒロインのいるアパートに帰る前に、レノはコンビニの前でタバコに火をつけた。
最近はできるだけヒロインの前でタバコを吸わないようにしていた。その仕草、その臭いをヒロインは嫌がるだろうから。
「すみません、火貸してもらえませんか?ライターどこかに落としたみたいで」
半分ほどタバコを吸ったところで、男の声が聞こえてきた。
レノは男を一瞥すると、ライターを差し出した。
「ありがとうございます」
最初はその男のことなど気にもしなかった。
しかし、男の灰を落とす手付きを見て、レノははっとした。
ヒロインが嫌がった、その仕草。
偶然かもしれないが、なんとなく嫌な感じだった。
そして、そういう勘はよく当たる。
レノはタバコを灰皿に押し付けると、そのまま男の方は見ずにその場をあとにし、近くの角を曲がってからコンビニの方を覗いた。
男は誰かと電話をしているようだった。追いかけてくる様子はない。
相手が余程の手練でない限り尾行に気づく自信はあったが、レノは念には念を入れて尾行がないことを確認してからアパートに戻った。
「レノ、遅かったね。ご飯選ぶの悩んだ?」
出迎えてくれたヒロインのいつもの笑顔にほっとする。
レノは緊張を解くと、ヒロインにいくつかの紙袋を渡した。
「あれ、アイスは?」
「あ、悪ぃ。忘れた」
ヒロインに指摘され、コンビニで買おうとして忘れていたことを思い出した。
「じゃあ、今度2つ買ってきてね。あ、何これ、かわいい!私、こういうの好き!」
アイスのことで少しだけむくれていたヒロインの顔が一気に明るくなる。
うれしそうに鼻歌を歌いながら、ヒロインは冷蔵庫にゼリーを閉まっていた。
その姿を見ていると、先程のあの嫌な感じもどこかに吹き飛んでしまう。
「じゃあ、アイスの件はそれでチャラってことで…」
「それはそれ、これはこれ。アイスは2つ」
ヒロインにしっかりと釘を差され、レノはやれやれと肩を竦めた。
To be continued...
2020/11/19
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