14:二度目のお別れ
ヒロイン
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「さぁ、ここまではあんたの言うこと聞いたんだから、レノと少し話しさせてよ。お別れを言うぐらい、いいでしょ」
「変な動きを見せたら、こいつを殺す」
ヒロインは頷くと、ゆっくりとレノの方に近づいた。それに合わせて男が少しレノから離れた。相変わらず銃口はレノを捉えているが、ヒロインはその射線に入るように屈み、レノを抱き起こした。
「レノ?」
首筋に指を置き、脈を確かめる。弱々しくはあったが、まだレノは生きていた。ヒロインはほっと胸を撫で下ろすと、もう一度レノに呼びかけた。軽く身体を揺すってみると、まぶたが動き、ゆっくりと目が開かれた。
「ヒロイン…オレに任せろって…」
力なく掠れたレノの声に、ヒロインは顔を曇らせた。あまり時間は残されていないようだ。ヒロインの背後に立つ男がバカにしたように声を上げて笑ったが、ヒロインはそれを無視してレノに自分の顔を近づけた。
「どうしても伝えたいことがあったから」
ヒロインはレノの手を握り、何度か手の甲を指で叩いた。
「昨日、やっとわかったの。レノのことが好きだって」
周囲から冷やかしの指笛が鳴る。しかし、もう外野の騒音は気にならなくなっていた。今は、ただ自分の気持ちとレノに向き合いたい。ヒロインは少しだけレノの手を握る力を強めた。
「彼女が好きだったからじゃない。私が、レノのことを好きになったの。いつか、私はいなくなるかもしれないけど、どうしても伝えたかった」
「いなくなるわけ、ないだろ。ヒロインはヒロインなんだから」
それはずっとヒロインが欲しかった言葉だった。
「うれしい」
ヒロインはふわりと微笑んだ。心が暖かいもので満たされていく。
「…悪かったな」
そうレノが掠れた声で言うのと同時に、レノの指が何度かヒロインの手の甲を叩いた。ヒロインはぎゅっとレノの手を握りしめた。
「ありがとう。後は私に任せて」
ヒロインはゆっくりとレノの方に顔を近づけ、薄く開いたレノの唇に口づけた。そして、口移しで小さなカプセルをレノに渡した。ゆっくり唇を離すと、名残惜しげに二人を繋いでいた銀糸がぷつりと切れた。
「もういいだろ!」
男がヒロインの手を無理矢理引いて立たせた。それでもヒロインはレノから目を離さなかった。
「ヒロイン、またな」
レノがにやりと笑った。言葉が詰まって出てこない。ヒロインは涙を浮かべながら、何度も何度もレノに頷いた。そして、レノが低く呻いたかと思うと、ゆっくり目を閉じて動かなくなった。
「お前、何をした!?」
男の手がヒロインの細い喉に食い込んだ。ヒロインは顔から笑みを消し、男の目を真っ直ぐに見た。
「殺したの」
慌ててレノに駆け寄った仲間の男がレノの脈を測り、男の方を見て首を振った。
「くっ…あははは!」
大声で笑い始めた男に乱暴に蹴り飛ばされ、ヒロインは地面を転がった。蹴られた腹部はひどく痛んだが、悲鳴と痛みは無理矢理押し殺し、ヒロインは涼しい顔を男に向けた。
「お前、マジでイカれてるぜ!前のヒロインの方がまだ可愛げがあったぜ」
「あんたも、彼女に会いたかったの?残念。彼女は会いたくないってさ」
ヒロインは床に寝転がったまま男を見上げ、バカにするように鼻で笑った。それが癇に障ったのか、男が顔を真っ赤にして近づいてきた。そして、思い切り足でヒロインの腹を踏みつけた。
「そういう生意気なところだけは一緒だな。これから散々嬲って犯して、そんな態度取れなくしてやるよ!」
「できるものならどうぞ」
ヒロインは男の方に舌を突き出してみせた。その舌先には、先程レノに渡したのと同じ形状のカプセルが乗っていた。男が顔色を変えたのを見て満足し、ヒロインは男に止められる前にカプセルを一気に飲み込んだ。
さよなら、レノ。
To be continued...
2022/05/10
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「変な動きを見せたら、こいつを殺す」
ヒロインは頷くと、ゆっくりとレノの方に近づいた。それに合わせて男が少しレノから離れた。相変わらず銃口はレノを捉えているが、ヒロインはその射線に入るように屈み、レノを抱き起こした。
「レノ?」
首筋に指を置き、脈を確かめる。弱々しくはあったが、まだレノは生きていた。ヒロインはほっと胸を撫で下ろすと、もう一度レノに呼びかけた。軽く身体を揺すってみると、まぶたが動き、ゆっくりと目が開かれた。
「ヒロイン…オレに任せろって…」
力なく掠れたレノの声に、ヒロインは顔を曇らせた。あまり時間は残されていないようだ。ヒロインの背後に立つ男がバカにしたように声を上げて笑ったが、ヒロインはそれを無視してレノに自分の顔を近づけた。
「どうしても伝えたいことがあったから」
ヒロインはレノの手を握り、何度か手の甲を指で叩いた。
「昨日、やっとわかったの。レノのことが好きだって」
周囲から冷やかしの指笛が鳴る。しかし、もう外野の騒音は気にならなくなっていた。今は、ただ自分の気持ちとレノに向き合いたい。ヒロインは少しだけレノの手を握る力を強めた。
「彼女が好きだったからじゃない。私が、レノのことを好きになったの。いつか、私はいなくなるかもしれないけど、どうしても伝えたかった」
「いなくなるわけ、ないだろ。ヒロインはヒロインなんだから」
それはずっとヒロインが欲しかった言葉だった。
「うれしい」
ヒロインはふわりと微笑んだ。心が暖かいもので満たされていく。
「…悪かったな」
そうレノが掠れた声で言うのと同時に、レノの指が何度かヒロインの手の甲を叩いた。ヒロインはぎゅっとレノの手を握りしめた。
「ありがとう。後は私に任せて」
ヒロインはゆっくりとレノの方に顔を近づけ、薄く開いたレノの唇に口づけた。そして、口移しで小さなカプセルをレノに渡した。ゆっくり唇を離すと、名残惜しげに二人を繋いでいた銀糸がぷつりと切れた。
「もういいだろ!」
男がヒロインの手を無理矢理引いて立たせた。それでもヒロインはレノから目を離さなかった。
「ヒロイン、またな」
レノがにやりと笑った。言葉が詰まって出てこない。ヒロインは涙を浮かべながら、何度も何度もレノに頷いた。そして、レノが低く呻いたかと思うと、ゆっくり目を閉じて動かなくなった。
「お前、何をした!?」
男の手がヒロインの細い喉に食い込んだ。ヒロインは顔から笑みを消し、男の目を真っ直ぐに見た。
「殺したの」
慌ててレノに駆け寄った仲間の男がレノの脈を測り、男の方を見て首を振った。
「くっ…あははは!」
大声で笑い始めた男に乱暴に蹴り飛ばされ、ヒロインは地面を転がった。蹴られた腹部はひどく痛んだが、悲鳴と痛みは無理矢理押し殺し、ヒロインは涼しい顔を男に向けた。
「お前、マジでイカれてるぜ!前のヒロインの方がまだ可愛げがあったぜ」
「あんたも、彼女に会いたかったの?残念。彼女は会いたくないってさ」
ヒロインは床に寝転がったまま男を見上げ、バカにするように鼻で笑った。それが癇に障ったのか、男が顔を真っ赤にして近づいてきた。そして、思い切り足でヒロインの腹を踏みつけた。
「そういう生意気なところだけは一緒だな。これから散々嬲って犯して、そんな態度取れなくしてやるよ!」
「できるものならどうぞ」
ヒロインは男の方に舌を突き出してみせた。その舌先には、先程レノに渡したのと同じ形状のカプセルが乗っていた。男が顔色を変えたのを見て満足し、ヒロインは男に止められる前にカプセルを一気に飲み込んだ。
さよなら、レノ。
To be continued...
2022/05/10
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