11:もう一つの約束
ヒロイン
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ヒロインだけでも無事に逃さなければ。
レノはそう強く決意し、周囲を警戒しながら階段で地上に向かっていた。
「ちょっとレノ!」
もう少しで地上というところで、ヒロインが思い切りレノの手を後ろに引いた。
少しでも安全なところにと思っているこちらの気持ちも考えず、突然立ち止まったヒロインに苛立ちつつも、レノは足を止めて振り返った。
その途端、バチン!と大きな音が鳴った。
ヒロインがレノの両頬を両手で思い切り挟み込んだ音だった。
「なんて顔してんの!落ち着いて、ほら深呼吸…」
少しその顔は怒っていた。
が、深呼吸を繰り返す内に、徐々に表情が柔らかくなっていく。
レノも言われるがまま、数回深呼吸をした。
そして、落ち着いてくると頬がじわりと痛んだ。
「ねぇ、レノ。私は誰?」
意図が全くわからないヒロインの問いにレノは眉をひそめた。
「…ヒロイン」
とりあえず思いついたまま答えると、ヒロインが不敵な笑みを浮かべた。
「惜しい!正しくは『タークスのエース』、ヒロイン…レノが来る前までだけど」
それは今必要な情報なのだろうか。
そんなレノの疑問をよそに、ヒロインは続ける。
「だから、守ってもらわなくても大丈夫。それに――」
ヒロインがレノの少し赤く腫れた頬を優しく撫でた。
「二人でやった方が早く片付くでしょ」
雰囲気的に色っぽい言葉が待っているかと思ったらこれだ。
今のヒロインは横暴で傍若無人で我儘で可愛げがなく、明るく闊達、そして好戦的。
ヒロインの目がギラリと光ったかと思うと、レノの脇をすり抜けて、物陰に隠れていた男の頭に鋭い蹴りを放った。
「いい銃持ってるね」
レノが振り返ったとき、3発の銃声が響いた。
地面に横たわる男は胸に2発、頭に1発の銃弾を撃ち込まれて絶命していた。
撃った本人であるヒロインは、銃を手にして口元に笑みを浮かべていた。
冷酷な表情を浮かべて笑うヒロインはとても美しかったが、同時に恐ろしくもあった。
「さぁ、応援来るまでに片付けちゃおう」
銃声を聞きつけて数人の武装した男たちがこちらに向かってくるのが見えた。
ヒロインはレノが声をかける前に走り出していた。
「まったく…」
無鉄砲にもほどがあるとレノはヒロインに呆れつつも、そのあとを追った。
ヒロインは銃と体術で男たちを素早く戦闘不能にしていく。
レノも負けじとロッドで男たちを沈めていったが、ヒロインの方が一人二人多く倒しているように思う。
ヒロインの体術は動きに無駄がなく、まるで舞っているかのようだった。
銃の腕前も見事なものだったが、体術はそれ以上に洗練されている。
守るよりは一緒に戦っている方が安心できるし、何より楽しい。
レノも口元に笑みを浮かべた。
「あー…気持ち悪い…」
目に見える範囲の敵を一掃した途端、ヒロインがその場に蹲った。
「吐きそう…」
どうやら今になって酔いが悪い形で現れたようだった。
レノも一緒にしゃがみ込み、ヒロインの背中をさすってやった。
「酔っぱらいが無茶するからだぞ、と」
本当に世話が焼ける。
レノは苦笑しつつ、蹲るヒロインの手をとった。
「ここ空気悪ぃから移動するぞ、と」
立ち上がったヒロインの顔は真っ青で、立っているのがやっとに見えた。
「歩けるか?」
「…無理」
ヒロインがレノの方に倒れ込んできた。
完全に体重を預けられる形になり、レノはヒロインを支えようと腰に腕を回した。
これが吐く寸前の酔っ払い相手でなければ、いいムードなのだが。
「この状態で吐かれるのはごめんだぞ、と」
「…吐くとか言わないで」
話す元気があるなら、少しは我慢してくれるだろう。
ヒロインが吐かないことを願いつつ、レノはヒロインを支えながら、死体が転がっていない方に向かって歩き出した。
「人の女連れてどこ行くんだ?」
レノは殺気を滾らせて、声のした方向にいる男を睨みつけた。
そこには、ヒロインを傷つけたあの男がにやにやと不愉快な笑みを浮かべて立っていた。
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レノはそう強く決意し、周囲を警戒しながら階段で地上に向かっていた。
「ちょっとレノ!」
もう少しで地上というところで、ヒロインが思い切りレノの手を後ろに引いた。
少しでも安全なところにと思っているこちらの気持ちも考えず、突然立ち止まったヒロインに苛立ちつつも、レノは足を止めて振り返った。
その途端、バチン!と大きな音が鳴った。
ヒロインがレノの両頬を両手で思い切り挟み込んだ音だった。
「なんて顔してんの!落ち着いて、ほら深呼吸…」
少しその顔は怒っていた。
が、深呼吸を繰り返す内に、徐々に表情が柔らかくなっていく。
レノも言われるがまま、数回深呼吸をした。
そして、落ち着いてくると頬がじわりと痛んだ。
「ねぇ、レノ。私は誰?」
意図が全くわからないヒロインの問いにレノは眉をひそめた。
「…ヒロイン」
とりあえず思いついたまま答えると、ヒロインが不敵な笑みを浮かべた。
「惜しい!正しくは『タークスのエース』、ヒロイン…レノが来る前までだけど」
それは今必要な情報なのだろうか。
そんなレノの疑問をよそに、ヒロインは続ける。
「だから、守ってもらわなくても大丈夫。それに――」
ヒロインがレノの少し赤く腫れた頬を優しく撫でた。
「二人でやった方が早く片付くでしょ」
雰囲気的に色っぽい言葉が待っているかと思ったらこれだ。
今のヒロインは横暴で傍若無人で我儘で可愛げがなく、明るく闊達、そして好戦的。
ヒロインの目がギラリと光ったかと思うと、レノの脇をすり抜けて、物陰に隠れていた男の頭に鋭い蹴りを放った。
「いい銃持ってるね」
レノが振り返ったとき、3発の銃声が響いた。
地面に横たわる男は胸に2発、頭に1発の銃弾を撃ち込まれて絶命していた。
撃った本人であるヒロインは、銃を手にして口元に笑みを浮かべていた。
冷酷な表情を浮かべて笑うヒロインはとても美しかったが、同時に恐ろしくもあった。
「さぁ、応援来るまでに片付けちゃおう」
銃声を聞きつけて数人の武装した男たちがこちらに向かってくるのが見えた。
ヒロインはレノが声をかける前に走り出していた。
「まったく…」
無鉄砲にもほどがあるとレノはヒロインに呆れつつも、そのあとを追った。
ヒロインは銃と体術で男たちを素早く戦闘不能にしていく。
レノも負けじとロッドで男たちを沈めていったが、ヒロインの方が一人二人多く倒しているように思う。
ヒロインの体術は動きに無駄がなく、まるで舞っているかのようだった。
銃の腕前も見事なものだったが、体術はそれ以上に洗練されている。
守るよりは一緒に戦っている方が安心できるし、何より楽しい。
レノも口元に笑みを浮かべた。
「あー…気持ち悪い…」
目に見える範囲の敵を一掃した途端、ヒロインがその場に蹲った。
「吐きそう…」
どうやら今になって酔いが悪い形で現れたようだった。
レノも一緒にしゃがみ込み、ヒロインの背中をさすってやった。
「酔っぱらいが無茶するからだぞ、と」
本当に世話が焼ける。
レノは苦笑しつつ、蹲るヒロインの手をとった。
「ここ空気悪ぃから移動するぞ、と」
立ち上がったヒロインの顔は真っ青で、立っているのがやっとに見えた。
「歩けるか?」
「…無理」
ヒロインがレノの方に倒れ込んできた。
完全に体重を預けられる形になり、レノはヒロインを支えようと腰に腕を回した。
これが吐く寸前の酔っ払い相手でなければ、いいムードなのだが。
「この状態で吐かれるのはごめんだぞ、と」
「…吐くとか言わないで」
話す元気があるなら、少しは我慢してくれるだろう。
ヒロインが吐かないことを願いつつ、レノはヒロインを支えながら、死体が転がっていない方に向かって歩き出した。
「人の女連れてどこ行くんだ?」
レノは殺気を滾らせて、声のした方向にいる男を睨みつけた。
そこには、ヒロインを傷つけたあの男がにやにやと不愉快な笑みを浮かべて立っていた。
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