10:月と太陽
ヒロイン
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今日、ようやく彼女が退院することになったと聞いて、レノは少しほっとすると同時に、落ち着かなさも感じていた。
先日会ったときの彼女のあの目を思い出すたびにぞっとする。
すべてを見透かし、見抜く目。
コスタの任務のときから観察眼に優れているとは思っていたが、その目は対人でより本領を発揮するのだろう。
本調子のときに探りを入れられたら、今隠していることを隠し切る自信はなかった。
できるだけ彼女を避けるようにしようと決意した矢先、彼女からの電話がかかってきた。
嫌な予感しかなかったが、無視をするとここまで乗り込んできそうだったので、レノは渋々電話に出た。
「…はい」
『うわ、先輩に対して何その態度!この前のこと気にしてるの?』
電話越しにからかわれ、レノはむっとして唇を尖らせた。
「そんなことはないぞ、と」
『じゃあさ、ちょっとうち来てよ。今すぐ』
「は?」
突然の呼び出しに、レノは素っ頓狂な声を上げた。
「何でだよ」
『いいから!先輩命令!知ってるでしょ、うち』
彼女は有無を言わせぬ強い口調で言った。
しかし、レノもそう簡単に頷くつもりはなかった。
「先輩。そういうの何ていうか知ってるか?パワハラって言うんだぞ、と」
ハラスメントを盾に横暴な命令を拒否しようとしたが、記憶に10年のブランクがあるヒロインに『パワハラ』は通じなかったようだ。
『何わけわかんないこと言ってんの?いいから、今すぐ!』
彼女は言いたいことを言って、一方的に電話を切ってしまった。
レノは電話を片手に項垂れた。
「ツォンさん。今度あいつにハラスメント講習受けさせた方がいいぞ、と」
押し負けてしまったレノは文句を言いながら、殊更時間を掛けてヒロインの家に向かった。
レノはヒロインの部屋の前に立ち、嫌々インターホンを押した。
すると、ものの数秒でドアが開かれた。
「いらっしゃい…って、何その顔」
むっとした彼女が、レノの頬を思い切りつねりあげた。
「いってえ!」
加減など一切なく、力いっぱいつねられた頬が痛む。
彼女の手を掴んで離そうとレノは手を伸ばしたが、それより一瞬早く彼女が手を引いた。
「せっかく呼んであげたのに、嫌そうな顔しない!」
呼びつけたんだろ。
そう口に出す寸前で、レノは言葉を飲み込んだ。
口答えしようものなら、次は鉄拳が飛んできそうだったからだ。
「じゃあ、はいこれ」
彼女は持っていたゴミ袋をレノに押し付けてきた。
「なんだよ、これ」
「ゴミ袋」
見ればわかる。
「いいから入って!」
彼女に強く腕を引かれ、レノは仏頂面のままヒロインの部屋に足を踏み入れた。
そして、リビングの惨状を見て固まった。
「まじかよ…」
レノが一緒に掃除してから事件までは1週間と少し。
それなのに、あのときよりも激しく散らかっている。
ヒロインの怠惰なところは想像以上のようだ。
「あ、下着はなかったから安心して」
彼女がレノを見てにやりと笑った。
「そりゃどうも」
レノは肩を竦めた。
彼女がレノを呼びつけた理由が一つはっきりした。
「掃除ぐらい自分でしたらいいだろ」
そう不平を口にすると、彼女はあっけらかんとした顔で言った。
「無理に決まってるでしょ。はいはい、もう文句言うのなし!掃除始めよ!」
パンパン!と彼女が手を叩いたので、レノは大きな溜息をついた。
.
先日会ったときの彼女のあの目を思い出すたびにぞっとする。
すべてを見透かし、見抜く目。
コスタの任務のときから観察眼に優れているとは思っていたが、その目は対人でより本領を発揮するのだろう。
本調子のときに探りを入れられたら、今隠していることを隠し切る自信はなかった。
できるだけ彼女を避けるようにしようと決意した矢先、彼女からの電話がかかってきた。
嫌な予感しかなかったが、無視をするとここまで乗り込んできそうだったので、レノは渋々電話に出た。
「…はい」
『うわ、先輩に対して何その態度!この前のこと気にしてるの?』
電話越しにからかわれ、レノはむっとして唇を尖らせた。
「そんなことはないぞ、と」
『じゃあさ、ちょっとうち来てよ。今すぐ』
「は?」
突然の呼び出しに、レノは素っ頓狂な声を上げた。
「何でだよ」
『いいから!先輩命令!知ってるでしょ、うち』
彼女は有無を言わせぬ強い口調で言った。
しかし、レノもそう簡単に頷くつもりはなかった。
「先輩。そういうの何ていうか知ってるか?パワハラって言うんだぞ、と」
ハラスメントを盾に横暴な命令を拒否しようとしたが、記憶に10年のブランクがあるヒロインに『パワハラ』は通じなかったようだ。
『何わけわかんないこと言ってんの?いいから、今すぐ!』
彼女は言いたいことを言って、一方的に電話を切ってしまった。
レノは電話を片手に項垂れた。
「ツォンさん。今度あいつにハラスメント講習受けさせた方がいいぞ、と」
押し負けてしまったレノは文句を言いながら、殊更時間を掛けてヒロインの家に向かった。
レノはヒロインの部屋の前に立ち、嫌々インターホンを押した。
すると、ものの数秒でドアが開かれた。
「いらっしゃい…って、何その顔」
むっとした彼女が、レノの頬を思い切りつねりあげた。
「いってえ!」
加減など一切なく、力いっぱいつねられた頬が痛む。
彼女の手を掴んで離そうとレノは手を伸ばしたが、それより一瞬早く彼女が手を引いた。
「せっかく呼んであげたのに、嫌そうな顔しない!」
呼びつけたんだろ。
そう口に出す寸前で、レノは言葉を飲み込んだ。
口答えしようものなら、次は鉄拳が飛んできそうだったからだ。
「じゃあ、はいこれ」
彼女は持っていたゴミ袋をレノに押し付けてきた。
「なんだよ、これ」
「ゴミ袋」
見ればわかる。
「いいから入って!」
彼女に強く腕を引かれ、レノは仏頂面のままヒロインの部屋に足を踏み入れた。
そして、リビングの惨状を見て固まった。
「まじかよ…」
レノが一緒に掃除してから事件までは1週間と少し。
それなのに、あのときよりも激しく散らかっている。
ヒロインの怠惰なところは想像以上のようだ。
「あ、下着はなかったから安心して」
彼女がレノを見てにやりと笑った。
「そりゃどうも」
レノは肩を竦めた。
彼女がレノを呼びつけた理由が一つはっきりした。
「掃除ぐらい自分でしたらいいだろ」
そう不平を口にすると、彼女はあっけらかんとした顔で言った。
「無理に決まってるでしょ。はいはい、もう文句言うのなし!掃除始めよ!」
パンパン!と彼女が手を叩いたので、レノは大きな溜息をついた。
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