8:嘘との再会
ヒロイン
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ヒロインは身体に走った激痛で意識を取り戻した。
身体を真っ二つに割かれるような、あのときと同じ痛み。
何年も前に経験した、忘れたくても忘れられない出来事が蘇る。
ヒロインの目に飛び込んできたのは、自分の上に覆いかぶさり、荒い呼吸を繰り返している男だった。
「いやっ、やめて!」
ヒロインは男の下でもがき、力いっぱい男の身体を押した。
そのつもりだった。
上手く身体に力が入らず、押し返すどころか反対にヒロインは男に押しつぶされた。
完全に押さえつけられ、抵抗できなくなったヒロインを男のモノが抉った。
「っ!」
ヒロインは目を見開き、声にならない悲鳴を上げた。
「相変わらずいい声だな、ヒロイン」
のしかかっていた男が身体を起こしたことで、ヒロインははっきりと男の顔を見た。
元相棒、元婚約者。
そいつがいやらしく笑った。
その笑い方を、ヒロインはよく知っていた。
7年前、毎日向けられた顔。
覚えている顔貌は違えど、笑い方だけは一緒だった。
そして、呼気に混ざるタバコの臭い。
それもまた、よく知ったものだった。
全てに合点がいった。
7年前、誰が自分を傷付けたのか。
答えは目の前にあった。
しかし、それを肯定したくなかった。
彼は相棒で、婚約者だった。
「こんな、ことって…」
「あぁ、やっと気づいたのか。犯してる最中に別の男を重ねられるってのは、なかなか屈辱的だったぜ」
男が首筋にきつく吸い付いた。
じわりと痛みが走る。
そして、男はヒロインの唇に吸い付いた。
タバコの臭いが鼻腔に届く。
口の中を這いずり回る舌の気持ち悪さも相まって、ヒロインは激しい吐き気を覚えた。
顔を背けても、男はしつこく追ってくる。
ヒロインはせめてもの抵抗で、男の舌を思い切り噛んだ。
「ってえ!何しやがる!」
顔を引いた男は口を押さえ、激しい怒りを顕にしてヒロインの顔を拳で殴った。
一発、二発。
打ちどころが悪かったのか、ヒロインは痛みで意識を失った。
「おら、起きろ」
ヒロインは男に腹を蹴られ、痛みで目を覚ました。
男は吐き出すものを吐き出したらしい。
何もかも7年前と同じ。
そう思うと、それほどショックではなかった。
ただ、身体はひどく痛んだ。
「やっぱ身体の相性だけは最高だな」
行為を終えて満足したのか、男は穏やかな笑みを浮かべていた。
ヒロインがよく知る相棒の顔だった。
「悪かったな、顔。痛むか?」
男が心配そうな顔でヒロインの顔に手を伸ばし、殴った辺りを撫でた。
触れられたそこから気持ち悪さが駆け上がり、ヒロインは男の手を払った。
「自分が殴っておいて…」
ヒロインは男を真っ直ぐ睨みつけた。
「あー、それだよ、それ。すげえ気に入らねえ」
男の顔から笑みが消えた。
「気が強くて、自分は負けないって顔。自身に満ち溢れて、何でも自分でできるって勘違いしてる女の顔。お前、ずっとそれだったよな。一人でなんでもやって、手柄は全部お前のもの。俺がどう思われてたか知ってるか?『ヒロインのおまけ』だとよ」
男が自虐的な笑みを浮かべた。
ヒロインは男が言ったことに困惑していた。
7年前、彼はいつも笑顔で、ヒロインのことを肯定し、褒めてくれた。
それがとてもうれしかった。
結婚したいと言われたときは、ますます頼りにされていると感じたから、もっと頑張らなければと思った。
だから、タークスを辞めるなど考えられなかったし、当時さらに張り切っていたのを覚えている。
「最初は、結婚して家に閉じ込めるだけのつもりだったんだよ。誰も帰らない家で一人寂しく生きていくお前を考えたら胸が踊ったよ」
最早目の前の男は、ヒロインの知る彼とは別人だった。
いや、彼のことを一つも知らなかったのだ。
こんな暗い感情を抱えていたことも、彼が周りからどう見られていたかも、考えたことがなかった。
当時のヒロインが見ていたのは自分だけ。
なんて愚かだったのだろう。
「けど、タークス辞めねえって言うだろ?だから知り合いに頼んで一芝居打ったのさ。その礼がお前の処女。少し惜しかったけどな。それよりも、同僚を殺してくれって言ったお前の顔!あれが見れただけでも儲けもんだったぜ。おかげで、お前が苦しむ顔で興奮するようになれたからな。その先は最高だったぜ」
ヒロインは、大きく目を見開いた。
彼を守るために、同僚を殺してくれと言った。
誰よりも大切だったから。
でも、本当に殺すべきだったのは――
「あぁ、気づいちまったか?殺しちゃいけない方を殺したこと!」
男は顔を醜く歪ませると、思い切り吹き出した。
そして、腹を抱えて笑い出した。
ヒロインは目の前が真っ暗になった。
7年前、同僚を殺してくれと言ったとき以上の後悔がヒロインを襲う。
死ななくてもいい人を、殺してしまった――
「泣きたいなら泣いてもいいんだぜ?一回ぐらい泣き顔も見せてくれよ」
無理矢理手を引かれ身体を起こされたヒロインは、そのまま男に抱きしめられた。
まるで愛しい人に愛を語るように、男が優しい声音でヒロインの耳元で囁く。
耳たぶを甘噛され、耳朶を舐める水音に強烈な嫌悪感を抱き、ヒロインはおぞましさに身体を震わせた。
「誰が、泣くか…!」
男に対する怒りのおかげで、ヒロインの声に力が戻ってくる。
泣いて、屈するわけにはいかない。
「じゃあ、どうしたら女々しく泣き叫ぶ?お前の大切なものを全部壊したら?それとも――」
男はヒロインを解放すると立ち上がってタバコに火をつけた。
それの意味するところを察し、ヒロインは息を呑んだ。
「これは覚えてるのか。じゃあ、いつもどおりセックスのあとの儀式でもするか」
男が加虐的な笑みを浮かべ、真っ赤な先端をヒロインの身体に近づけた。
ヒロインはタバコから目が離せなかった。
まだ、身体はあの痛みを覚えている。
ずっと続くヒリヒリとした灼熱感。
「嫌…やめ――」
男がスウェイの胸にタバコを押し付けようとしたとき、近くに投げられていたカバンの中でスウェイの携帯が鳴った。
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身体を真っ二つに割かれるような、あのときと同じ痛み。
何年も前に経験した、忘れたくても忘れられない出来事が蘇る。
ヒロインの目に飛び込んできたのは、自分の上に覆いかぶさり、荒い呼吸を繰り返している男だった。
「いやっ、やめて!」
ヒロインは男の下でもがき、力いっぱい男の身体を押した。
そのつもりだった。
上手く身体に力が入らず、押し返すどころか反対にヒロインは男に押しつぶされた。
完全に押さえつけられ、抵抗できなくなったヒロインを男のモノが抉った。
「っ!」
ヒロインは目を見開き、声にならない悲鳴を上げた。
「相変わらずいい声だな、ヒロイン」
のしかかっていた男が身体を起こしたことで、ヒロインははっきりと男の顔を見た。
元相棒、元婚約者。
そいつがいやらしく笑った。
その笑い方を、ヒロインはよく知っていた。
7年前、毎日向けられた顔。
覚えている顔貌は違えど、笑い方だけは一緒だった。
そして、呼気に混ざるタバコの臭い。
それもまた、よく知ったものだった。
全てに合点がいった。
7年前、誰が自分を傷付けたのか。
答えは目の前にあった。
しかし、それを肯定したくなかった。
彼は相棒で、婚約者だった。
「こんな、ことって…」
「あぁ、やっと気づいたのか。犯してる最中に別の男を重ねられるってのは、なかなか屈辱的だったぜ」
男が首筋にきつく吸い付いた。
じわりと痛みが走る。
そして、男はヒロインの唇に吸い付いた。
タバコの臭いが鼻腔に届く。
口の中を這いずり回る舌の気持ち悪さも相まって、ヒロインは激しい吐き気を覚えた。
顔を背けても、男はしつこく追ってくる。
ヒロインはせめてもの抵抗で、男の舌を思い切り噛んだ。
「ってえ!何しやがる!」
顔を引いた男は口を押さえ、激しい怒りを顕にしてヒロインの顔を拳で殴った。
一発、二発。
打ちどころが悪かったのか、ヒロインは痛みで意識を失った。
「おら、起きろ」
ヒロインは男に腹を蹴られ、痛みで目を覚ました。
男は吐き出すものを吐き出したらしい。
何もかも7年前と同じ。
そう思うと、それほどショックではなかった。
ただ、身体はひどく痛んだ。
「やっぱ身体の相性だけは最高だな」
行為を終えて満足したのか、男は穏やかな笑みを浮かべていた。
ヒロインがよく知る相棒の顔だった。
「悪かったな、顔。痛むか?」
男が心配そうな顔でヒロインの顔に手を伸ばし、殴った辺りを撫でた。
触れられたそこから気持ち悪さが駆け上がり、ヒロインは男の手を払った。
「自分が殴っておいて…」
ヒロインは男を真っ直ぐ睨みつけた。
「あー、それだよ、それ。すげえ気に入らねえ」
男の顔から笑みが消えた。
「気が強くて、自分は負けないって顔。自身に満ち溢れて、何でも自分でできるって勘違いしてる女の顔。お前、ずっとそれだったよな。一人でなんでもやって、手柄は全部お前のもの。俺がどう思われてたか知ってるか?『ヒロインのおまけ』だとよ」
男が自虐的な笑みを浮かべた。
ヒロインは男が言ったことに困惑していた。
7年前、彼はいつも笑顔で、ヒロインのことを肯定し、褒めてくれた。
それがとてもうれしかった。
結婚したいと言われたときは、ますます頼りにされていると感じたから、もっと頑張らなければと思った。
だから、タークスを辞めるなど考えられなかったし、当時さらに張り切っていたのを覚えている。
「最初は、結婚して家に閉じ込めるだけのつもりだったんだよ。誰も帰らない家で一人寂しく生きていくお前を考えたら胸が踊ったよ」
最早目の前の男は、ヒロインの知る彼とは別人だった。
いや、彼のことを一つも知らなかったのだ。
こんな暗い感情を抱えていたことも、彼が周りからどう見られていたかも、考えたことがなかった。
当時のヒロインが見ていたのは自分だけ。
なんて愚かだったのだろう。
「けど、タークス辞めねえって言うだろ?だから知り合いに頼んで一芝居打ったのさ。その礼がお前の処女。少し惜しかったけどな。それよりも、同僚を殺してくれって言ったお前の顔!あれが見れただけでも儲けもんだったぜ。おかげで、お前が苦しむ顔で興奮するようになれたからな。その先は最高だったぜ」
ヒロインは、大きく目を見開いた。
彼を守るために、同僚を殺してくれと言った。
誰よりも大切だったから。
でも、本当に殺すべきだったのは――
「あぁ、気づいちまったか?殺しちゃいけない方を殺したこと!」
男は顔を醜く歪ませると、思い切り吹き出した。
そして、腹を抱えて笑い出した。
ヒロインは目の前が真っ暗になった。
7年前、同僚を殺してくれと言ったとき以上の後悔がヒロインを襲う。
死ななくてもいい人を、殺してしまった――
「泣きたいなら泣いてもいいんだぜ?一回ぐらい泣き顔も見せてくれよ」
無理矢理手を引かれ身体を起こされたヒロインは、そのまま男に抱きしめられた。
まるで愛しい人に愛を語るように、男が優しい声音でヒロインの耳元で囁く。
耳たぶを甘噛され、耳朶を舐める水音に強烈な嫌悪感を抱き、ヒロインはおぞましさに身体を震わせた。
「誰が、泣くか…!」
男に対する怒りのおかげで、ヒロインの声に力が戻ってくる。
泣いて、屈するわけにはいかない。
「じゃあ、どうしたら女々しく泣き叫ぶ?お前の大切なものを全部壊したら?それとも――」
男はヒロインを解放すると立ち上がってタバコに火をつけた。
それの意味するところを察し、ヒロインは息を呑んだ。
「これは覚えてるのか。じゃあ、いつもどおりセックスのあとの儀式でもするか」
男が加虐的な笑みを浮かべ、真っ赤な先端をヒロインの身体に近づけた。
ヒロインはタバコから目が離せなかった。
まだ、身体はあの痛みを覚えている。
ずっと続くヒリヒリとした灼熱感。
「嫌…やめ――」
男がスウェイの胸にタバコを押し付けようとしたとき、近くに投げられていたカバンの中でスウェイの携帯が鳴った。
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