7:最初の一歩
ヒロイン
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自分からレノを誘えなかったことを情けなく思いつつも、心が軽くなっていた。
それどころか、少し心を弾ませていることに気づく。
ルーファウスもそれに気づいたのか、ヒロインを見るなりにやりと笑った。
「よかったな。デートの約束できたんだろう?」
「でっ…!」
ヒロインは慌てて手と首を振った。
「ち、違う!ただの掃除のお礼だから!」
「そこまで否定すると、さすがに可哀想だな」
「何が」
「さぁな」
軽くあしらわれたヒロインは唇を尖らせた。
「ちゃんとおしゃれして行くんだぞ」
「…おしゃれ?」
自分にはとんと縁のない言葉だった。
仕事はタークス支給のスーツ一式、任務中の服は会社で用意される。自宅は着古したスウェットがあれば十分。
プライベートでおしゃれが必要な場面などなかったため、ヒロインはいい年をしてまともな服を持っていなかった。
明日もスーツを来ていけばいいだろうと思っていたが、よくよく考えると明日は休日だ。
「休日に、スーツは…」
「ダメに決まっているだろう」
見上げた先、ルーファウスは心底呆れた顔をしていた。
いっそ憐れみすら透けて見える。
「一着ぐらい何かあるだろう」
「…ない」
ルーファウスから向けられる憐憫の眼差しが辛い。
「…ダメなのは家事だけではなかったか」
ぐうの音も出なかった。
しかし、このままでは本当に明日着るものがスーツしかない状態のままになってしまう。
ヒロインはルーファウスに助けを求める視線を向けた。
ルーファウスは最早ヒロインをからかう気すら起きなかったようで、すぐさま店をメールで送ってくれた。
「ヒロインの年ならこの辺りだろうな」
「ありがとう!持つべきものは物知りな弟分!『年』っていうのが若干引っかかるけど…」
「細かいことは気にするな」
ルーファウスがふっと笑った。
ヒロインは店を教えてくれたルーファウスに感謝し、今日の帰りに店に寄ってみようと決めたのだった。
仕事を終えたヒロインは、ルーファウスに教えられた店のある八番街に来ていた。
目的の店は、明らかに高級そうな服や装飾品を扱うエリアにあった。
通行人も上品で高級感のある装いの人が多く、既にヒロインは来た道を引き返したくなっていた。
そして、目的の店の入口に立ち、ヒロインは完全に気後れしていた。
もっと身の丈にあった店を探すべきではないかという考えがよぎったその時、店の入口の扉が開いた。
「もしかして、ヒロインさん?」
突然名前を呼ばれ、ヒロインは飛び上がりそうなほど驚いた。
なんとか頷くと、店から出てきた女性が微笑んだ。
「副社長から服を選んであげてって連絡があったの。さ、入って」
ヒロインが店に入るのを躊躇するのは、ルーファウスの計算のうちだったのだろう。
それを見越して手を回すとは、さすがだった。
ヒロインはルーファウスの厚意に感謝しつつ、店内に入った。
(この前の出張手当が…)
立地に違わぬ値段の服たち。
女性に勧められるまま、ヒロインは服を購入した。
予想外の出費ではあったが、おしゃれな服に身を包むのは新鮮で、少し心が高揚した。
(レノも、似合ってるって思ってくれるといいな)
ヒロインは軽い足取りで店をあとにした。
To be continued...
2021/04/16
.
それどころか、少し心を弾ませていることに気づく。
ルーファウスもそれに気づいたのか、ヒロインを見るなりにやりと笑った。
「よかったな。デートの約束できたんだろう?」
「でっ…!」
ヒロインは慌てて手と首を振った。
「ち、違う!ただの掃除のお礼だから!」
「そこまで否定すると、さすがに可哀想だな」
「何が」
「さぁな」
軽くあしらわれたヒロインは唇を尖らせた。
「ちゃんとおしゃれして行くんだぞ」
「…おしゃれ?」
自分にはとんと縁のない言葉だった。
仕事はタークス支給のスーツ一式、任務中の服は会社で用意される。自宅は着古したスウェットがあれば十分。
プライベートでおしゃれが必要な場面などなかったため、ヒロインはいい年をしてまともな服を持っていなかった。
明日もスーツを来ていけばいいだろうと思っていたが、よくよく考えると明日は休日だ。
「休日に、スーツは…」
「ダメに決まっているだろう」
見上げた先、ルーファウスは心底呆れた顔をしていた。
いっそ憐れみすら透けて見える。
「一着ぐらい何かあるだろう」
「…ない」
ルーファウスから向けられる憐憫の眼差しが辛い。
「…ダメなのは家事だけではなかったか」
ぐうの音も出なかった。
しかし、このままでは本当に明日着るものがスーツしかない状態のままになってしまう。
ヒロインはルーファウスに助けを求める視線を向けた。
ルーファウスは最早ヒロインをからかう気すら起きなかったようで、すぐさま店をメールで送ってくれた。
「ヒロインの年ならこの辺りだろうな」
「ありがとう!持つべきものは物知りな弟分!『年』っていうのが若干引っかかるけど…」
「細かいことは気にするな」
ルーファウスがふっと笑った。
ヒロインは店を教えてくれたルーファウスに感謝し、今日の帰りに店に寄ってみようと決めたのだった。
仕事を終えたヒロインは、ルーファウスに教えられた店のある八番街に来ていた。
目的の店は、明らかに高級そうな服や装飾品を扱うエリアにあった。
通行人も上品で高級感のある装いの人が多く、既にヒロインは来た道を引き返したくなっていた。
そして、目的の店の入口に立ち、ヒロインは完全に気後れしていた。
もっと身の丈にあった店を探すべきではないかという考えがよぎったその時、店の入口の扉が開いた。
「もしかして、ヒロインさん?」
突然名前を呼ばれ、ヒロインは飛び上がりそうなほど驚いた。
なんとか頷くと、店から出てきた女性が微笑んだ。
「副社長から服を選んであげてって連絡があったの。さ、入って」
ヒロインが店に入るのを躊躇するのは、ルーファウスの計算のうちだったのだろう。
それを見越して手を回すとは、さすがだった。
ヒロインはルーファウスの厚意に感謝しつつ、店内に入った。
(この前の出張手当が…)
立地に違わぬ値段の服たち。
女性に勧められるまま、ヒロインは服を購入した。
予想外の出費ではあったが、おしゃれな服に身を包むのは新鮮で、少し心が高揚した。
(レノも、似合ってるって思ってくれるといいな)
ヒロインは軽い足取りで店をあとにした。
To be continued...
2021/04/16
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