6:もどかしい二人
ヒロイン
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久しぶりの休日ということで、ヒロインは出張中に撮りためていたドラマを見て過ごしていた。
しかし、いつも夢中になっていたドラマも、今はなぜか集中して見ることができなかった。
ぼーっと画面を眺め、はっとしては何度も録画を戻して…としているうちに、気づけば夕方になっていた。
結局、1話も満足に見終えることができず、ヒロインは溜息をついた。
帰社したあの日から、考えるのはレノのことばかりで、ずっと心が落ち着かない状態が続いていた。
レノには彼女がいる。
帰社した日に会った、若くて明るくておしゃれで綺麗な女性。
自分が彼女に勝っているのは腕っぷしぐらいで、他に何一つ彼女に勝てそうになかった。
「気づかなかったら、よかったな…」
自分の気持ちに。
先輩と後輩で終わるべきだった。
それならきっと、こんな苦しい思いをしなくて済んだだろうに。
初めて知った恋は苦く、初めてであるがゆえにその感情を持て余していた。
彼女がいるなら仕方がないと割り切ることもできず、向ける先のない感情はヒロインの心を縛った。
ただ、そういった辛い思いを一時的に誤魔化す方法だけは知っていた。
ヒロインはソファから起き上がると、台所の冷蔵庫の扉を開けた。
昨日、帰る前に買っておいた大量の酒が所狭しと並んでいる。
その中でも一番アルコール度数が強い酒を選ぶと、ヒロインは一気に中身を呷った。
デリバリーのピザを頬張りながら、本日5本目の缶を開けたタイミングでインターホンが鳴った。
恐らくルーファウスだろう。
無視することも考えたが、それをすると後がうるさいこともわかっていた。
ついでに掃除してもらおうと企みながら、ヒロインは一切画面を見ずにインターホンに出た。
「勝手に入ってきてー」
ヒロインはインターホンを切ると、手にしたピザを口に放り込んだ。
その時、指を伝ってトマトソースが胸元に落ちた。
「うわ…」
染みになる前に洗わなければと、ヒロインはその場で着ていたタンクトップを脱ぎ捨て、替えの服を取りに寝室に入った。
山積みにしてある服の中から似たようなタンクトップを引っ張り出し、それを歩きながら着てリビングに戻った。
「っ!」
タンクトップを着終えて顔を上げると、金髪ではなく赤毛の男性が髪と同じぐらい真っ赤な顔をして立ち尽くしていた。
ヒロインは酔いで焦点が合わなくなっていた目を細め、男性を見た。
「…入っていいって言われたから、入ってきたぞ、と」
「なん、で…」
いつから?何を見られた?
リビングに入ったとき、服着てたっけ?
それにこの部屋。
散乱する空き缶と空き瓶、無造作に置かれたゴミ袋はまだいいとして。
昨日着ていたスーツとストッキング、下着がレノのすぐ近くに落ちている。
一気に酔いの覚めたヒロインは、羞恥で顔が赤くなっているのを感じていた。
「レノ!いいって言うまで目を閉じて!!」
レノが目を閉じたのを確認し、ヒロインはまずレノの近くに脱ぎ散らかしていた服を回収し、浴室の脱衣籠に放り込んだ。
次にトマトソースのついたタンクトップを洗って、これも脱衣籠に入れる。
他に衣類が落ちていないことを確認し、ヒロインはレノに目を開けてもいいと言った。
「今、目を開ける前までに見たことは忘れて」
「じゃあ、この惨状は忘れなくていいってことだよな?先輩」
テーブルの上と下に散乱するゴミたち。
レノが意地の悪い顔でにやりと笑った。
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しかし、いつも夢中になっていたドラマも、今はなぜか集中して見ることができなかった。
ぼーっと画面を眺め、はっとしては何度も録画を戻して…としているうちに、気づけば夕方になっていた。
結局、1話も満足に見終えることができず、ヒロインは溜息をついた。
帰社したあの日から、考えるのはレノのことばかりで、ずっと心が落ち着かない状態が続いていた。
レノには彼女がいる。
帰社した日に会った、若くて明るくておしゃれで綺麗な女性。
自分が彼女に勝っているのは腕っぷしぐらいで、他に何一つ彼女に勝てそうになかった。
「気づかなかったら、よかったな…」
自分の気持ちに。
先輩と後輩で終わるべきだった。
それならきっと、こんな苦しい思いをしなくて済んだだろうに。
初めて知った恋は苦く、初めてであるがゆえにその感情を持て余していた。
彼女がいるなら仕方がないと割り切ることもできず、向ける先のない感情はヒロインの心を縛った。
ただ、そういった辛い思いを一時的に誤魔化す方法だけは知っていた。
ヒロインはソファから起き上がると、台所の冷蔵庫の扉を開けた。
昨日、帰る前に買っておいた大量の酒が所狭しと並んでいる。
その中でも一番アルコール度数が強い酒を選ぶと、ヒロインは一気に中身を呷った。
デリバリーのピザを頬張りながら、本日5本目の缶を開けたタイミングでインターホンが鳴った。
恐らくルーファウスだろう。
無視することも考えたが、それをすると後がうるさいこともわかっていた。
ついでに掃除してもらおうと企みながら、ヒロインは一切画面を見ずにインターホンに出た。
「勝手に入ってきてー」
ヒロインはインターホンを切ると、手にしたピザを口に放り込んだ。
その時、指を伝ってトマトソースが胸元に落ちた。
「うわ…」
染みになる前に洗わなければと、ヒロインはその場で着ていたタンクトップを脱ぎ捨て、替えの服を取りに寝室に入った。
山積みにしてある服の中から似たようなタンクトップを引っ張り出し、それを歩きながら着てリビングに戻った。
「っ!」
タンクトップを着終えて顔を上げると、金髪ではなく赤毛の男性が髪と同じぐらい真っ赤な顔をして立ち尽くしていた。
ヒロインは酔いで焦点が合わなくなっていた目を細め、男性を見た。
「…入っていいって言われたから、入ってきたぞ、と」
「なん、で…」
いつから?何を見られた?
リビングに入ったとき、服着てたっけ?
それにこの部屋。
散乱する空き缶と空き瓶、無造作に置かれたゴミ袋はまだいいとして。
昨日着ていたスーツとストッキング、下着がレノのすぐ近くに落ちている。
一気に酔いの覚めたヒロインは、羞恥で顔が赤くなっているのを感じていた。
「レノ!いいって言うまで目を閉じて!!」
レノが目を閉じたのを確認し、ヒロインはまずレノの近くに脱ぎ散らかしていた服を回収し、浴室の脱衣籠に放り込んだ。
次にトマトソースのついたタンクトップを洗って、これも脱衣籠に入れる。
他に衣類が落ちていないことを確認し、ヒロインはレノに目を開けてもいいと言った。
「今、目を開ける前までに見たことは忘れて」
「じゃあ、この惨状は忘れなくていいってことだよな?先輩」
テーブルの上と下に散乱するゴミたち。
レノが意地の悪い顔でにやりと笑った。
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