6:もどかしい二人
ヒロイン
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ヒロインが休暇に入る前日、ルーファウスから直接レノの携帯に電話があった。
ちょうど肉体関係のあった女性との関係を精算しようとして揉めていたところで、レノは渡りに船とばかりに電話に逃げた。
女性の罵声が飛んできたが、レノは気にせず電話に出た。
『取り込み中だったか?』
「あー、いや、大丈夫です」
どうやら電話越しに罵声が聞こえてしまったらしい。
レノは頭をかいた。
「それで、何か用っすか?」
『週末までヒロインの代わりに護衛を務めてもらえないかと思ってな』
レノは眉をひそめた。
「ヒロインに何か…」
『ただの休暇だ』
電話の向こうで、ルーファウスが少し笑ったのがわかった。
探りを入れられたのだと気づき、内心面白くはなかったが、断る理由もなかったのでレノは明日から向かうと返事をした。
翌日、レノは指定された時刻通りに社外にあるルーファウスの自宅兼仕事場に向かった。
「おはようございます、と」
「急にすまなかったな」
既にルーファウスは仕事を始めていた。
部屋にはルーファウスのデスクと、もう一つ雑に書類や書籍が積み重ねられたデスクがあった。
ヒロインのデスクだろうか。
「適当にくつろいでくれ。あぁ、そこのデスクは触らないほうがいいぞ。ヒロインが怒るからな」
コスタ・デル・ソルで一緒に過ごしたヒロインからは想像できなかった。
ゴミも洗濯物もすぐに片付け、アパートは常に清潔に保たれていた。
しかし、デスクの散らかりようを見ると、とても綺麗好きには見えなかった。
素直にデスクを見ての感想を口にすると、ルーファウスが困ったように笑った。
「痕跡を残すなと訓練されているからな。任務中は忠実にそれに従っているが、見ての通り、任務じゃないときは全然だ。洗濯は辛うじてするようになったがな」
何度言っても言うことは聞かないし、家事の練習をする気すらないのだという。
たまに様子を見に行き、部屋の掃除をするように言うが、ヒロインはグチグチ言うばかりで手を動かさず、結局自ら掃除をする羽目になるのだと、ルーファウスが溜息混じりに言った。
レノはそんな二人の関係をうらやましく思った。
ヒロインは決して、そんな姿をレノに見せはしないだろう。
それだけ、ルーファウスには心を許しているということだ。
「仲いいんっすね」
「ヒロインから聞いたんだろう?私たちの関係を」
レノが頷くと、ルーファウスは優しい微笑みを浮かべた。
「彼女は姉貴分だからな。出来の悪い姉をサポートするのが弟の役目だ」
「ヒロインも同じようなこと言ってましたよ、と」
「そうか。家族ごっこだと笑われるかもしれないが、私にとっては本当に大事な人なんだ。だから、ヒロインを傷つける奴には容赦しない。例えそれが、レノ、お前でもだ」
ルーファウスの眼光が鋭く光った。
その迫力に気圧され、レノは思わず息を飲んだ。
「ツォンからヒロインの婚約者だった男の話を聞いただろう。もう、あんな思いはさせたくないんだ」
ようやく前のように笑うようになったのだと、ルーファウスが言った。
「あぁ、そういえば。コスタから帰ってきてからは、やたらと溜息ばかりついていたな…レノ、何か知らないか?」
「いや、特には――」
否定しようとして、ふと帰社してすぐのことを思い出した。
あのときは声をかける暇もなく、慌ただしくヒロインと別れてしまった。
そのことを、もしかして気にしていたのだろうか。
「もし、心当たりがあるのなら、仕事のあとにヒロインの様子を見に行ってくれ」
ヒロインに会える。
そう思うと、心がざわついた。
会いたい。けれども、会いたくない。
ヒロインへの思いは募るばかり。今度会えば、ブレーキが効かなくなるかもしれない。それが怖かった。
もし、ヒロインに拒まれたら?嫌われるようなことをしてしまったら?
考えれば考えるほど、柄にもなく後ろ向きになっていく。
レノはルーファウスに頷いてみせたものの、期待と憂鬱が入り混じったまま、仕事が終わるまで落ち着かない時間を過ごした。
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ちょうど肉体関係のあった女性との関係を精算しようとして揉めていたところで、レノは渡りに船とばかりに電話に逃げた。
女性の罵声が飛んできたが、レノは気にせず電話に出た。
『取り込み中だったか?』
「あー、いや、大丈夫です」
どうやら電話越しに罵声が聞こえてしまったらしい。
レノは頭をかいた。
「それで、何か用っすか?」
『週末までヒロインの代わりに護衛を務めてもらえないかと思ってな』
レノは眉をひそめた。
「ヒロインに何か…」
『ただの休暇だ』
電話の向こうで、ルーファウスが少し笑ったのがわかった。
探りを入れられたのだと気づき、内心面白くはなかったが、断る理由もなかったのでレノは明日から向かうと返事をした。
翌日、レノは指定された時刻通りに社外にあるルーファウスの自宅兼仕事場に向かった。
「おはようございます、と」
「急にすまなかったな」
既にルーファウスは仕事を始めていた。
部屋にはルーファウスのデスクと、もう一つ雑に書類や書籍が積み重ねられたデスクがあった。
ヒロインのデスクだろうか。
「適当にくつろいでくれ。あぁ、そこのデスクは触らないほうがいいぞ。ヒロインが怒るからな」
コスタ・デル・ソルで一緒に過ごしたヒロインからは想像できなかった。
ゴミも洗濯物もすぐに片付け、アパートは常に清潔に保たれていた。
しかし、デスクの散らかりようを見ると、とても綺麗好きには見えなかった。
素直にデスクを見ての感想を口にすると、ルーファウスが困ったように笑った。
「痕跡を残すなと訓練されているからな。任務中は忠実にそれに従っているが、見ての通り、任務じゃないときは全然だ。洗濯は辛うじてするようになったがな」
何度言っても言うことは聞かないし、家事の練習をする気すらないのだという。
たまに様子を見に行き、部屋の掃除をするように言うが、ヒロインはグチグチ言うばかりで手を動かさず、結局自ら掃除をする羽目になるのだと、ルーファウスが溜息混じりに言った。
レノはそんな二人の関係をうらやましく思った。
ヒロインは決して、そんな姿をレノに見せはしないだろう。
それだけ、ルーファウスには心を許しているということだ。
「仲いいんっすね」
「ヒロインから聞いたんだろう?私たちの関係を」
レノが頷くと、ルーファウスは優しい微笑みを浮かべた。
「彼女は姉貴分だからな。出来の悪い姉をサポートするのが弟の役目だ」
「ヒロインも同じようなこと言ってましたよ、と」
「そうか。家族ごっこだと笑われるかもしれないが、私にとっては本当に大事な人なんだ。だから、ヒロインを傷つける奴には容赦しない。例えそれが、レノ、お前でもだ」
ルーファウスの眼光が鋭く光った。
その迫力に気圧され、レノは思わず息を飲んだ。
「ツォンからヒロインの婚約者だった男の話を聞いただろう。もう、あんな思いはさせたくないんだ」
ようやく前のように笑うようになったのだと、ルーファウスが言った。
「あぁ、そういえば。コスタから帰ってきてからは、やたらと溜息ばかりついていたな…レノ、何か知らないか?」
「いや、特には――」
否定しようとして、ふと帰社してすぐのことを思い出した。
あのときは声をかける暇もなく、慌ただしくヒロインと別れてしまった。
そのことを、もしかして気にしていたのだろうか。
「もし、心当たりがあるのなら、仕事のあとにヒロインの様子を見に行ってくれ」
ヒロインに会える。
そう思うと、心がざわついた。
会いたい。けれども、会いたくない。
ヒロインへの思いは募るばかり。今度会えば、ブレーキが効かなくなるかもしれない。それが怖かった。
もし、ヒロインに拒まれたら?嫌われるようなことをしてしまったら?
考えれば考えるほど、柄にもなく後ろ向きになっていく。
レノはルーファウスに頷いてみせたものの、期待と憂鬱が入り混じったまま、仕事が終わるまで落ち着かない時間を過ごした。
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