6:もどかしい二人
ヒロイン
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帰社して数時間後、ヒロインは後悔の真っ只中にいた。
ルーファウスの自宅兼仕事場に向かってとぼとぼと歩きながら、ヒロインは何度目かの溜息をついた。
ジュノンから軍用ヘリで帰社した二人は、通用口から本社ビルに入った。
「やっと戻ってこられた!」
ヒロインはぐっと伸びをした。
「機材、俺が返しとくぞ、と」
レノがヒロインの引いていたキャリーバッグに手を伸ばした。
「え」
慌てて自分のキャリーバッグの持ち手を掴もうとしたヒロインの手が、一瞬早く伸ばされたレノの手の上に重なった。
男らしい骨ばった大きな手。
改めてレノが男性であることを意識してしまい、ヒロインは顔が熱くなるのを感じた。
「あの、レノ…私――」
もう少し一緒にいたいと伝える代わりに、機材の片付けを手伝うと言おうとしたところで、その言葉は女性の声で遮られた。
「レノ、おかえりなさい!」
女性がこちらにやってくるのを見て、ヒロインは慌てて手を引いた。
若くて綺麗な女性だった。
親しげな様子でレノに話しかけている。
ヒロインはこの場に居づらい雰囲気を感じ、一歩二歩後退った。
「私、副社長に報告があるから。悪いけど、片付けお願いね」
早口でそう言うと、ヒロインは別れの挨拶もそこそこにその場を早足で離れた。
レノに名前を呼ばれたような気もしたが、きっと気のせいだろう。
ヒロインは一度も振り返らず、来た道を戻って本社ビルを出た。
そして、今に至る。
ヒロインは少し憂鬱になりながらも、先輩と後輩という関係を崩さなくてよかったと安堵していた。
もしまた会うことになっても、気まずい思いをしなくて済むのだから。
いや、もう会うことなどないかもしれない。
今回の任務は欠員補充のため。いつもの仕事に戻れば、もうタークスのメンバーと関わることはないだろう。
これでよかったはずなのに、心からそう思うことができなかった。
ヒロインは心の底に沈んだ重いものを吐き出すように、深い溜息をついた。
数日後。
ヒロインは執務室に置かれたデスクで頬杖をつきながら、今日もまた溜息をついていた。
「ヒロイン、そんなに私といるのが嫌か?」
ルーファウスの冷たい声に即座に反応し、ヒロインは椅子に座りながら背筋を伸ばした。
「そんなことはない、です」
プライベートでは姉と弟でも、仕事中は部下と上司だ。
ルーファウスの立場もあるので、そこはしっかりと線引をし、振る舞っていた。
が、任務から戻ってから、どうも心ここにあらずの状態が続いていた。
「ツォンからも報告は受けている。戻って緊張が解けたせいで、疲れが出ているんだろう。明日からしばらく休暇を取れ。次の出社は週明けでいい」
「でも…」
ここ数年、ルーファウスの護衛兼秘書を務めるようになって、休みはルーファウスに合わせていた。
そうしないと、ルーファウスの護衛がいなくなるからだ。
「コスタに行っていたときのように、タークスの誰かに代理を頼むさ。どのみち、今のままではまともに仕事もできないだろう」
ルーファウスの指摘はもっともだった。
こんなに注意力散漫ではどのみち役に立てそうにはなかった。
「そうします」
ヒロインは素直に頷いた。
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ルーファウスの自宅兼仕事場に向かってとぼとぼと歩きながら、ヒロインは何度目かの溜息をついた。
ジュノンから軍用ヘリで帰社した二人は、通用口から本社ビルに入った。
「やっと戻ってこられた!」
ヒロインはぐっと伸びをした。
「機材、俺が返しとくぞ、と」
レノがヒロインの引いていたキャリーバッグに手を伸ばした。
「え」
慌てて自分のキャリーバッグの持ち手を掴もうとしたヒロインの手が、一瞬早く伸ばされたレノの手の上に重なった。
男らしい骨ばった大きな手。
改めてレノが男性であることを意識してしまい、ヒロインは顔が熱くなるのを感じた。
「あの、レノ…私――」
もう少し一緒にいたいと伝える代わりに、機材の片付けを手伝うと言おうとしたところで、その言葉は女性の声で遮られた。
「レノ、おかえりなさい!」
女性がこちらにやってくるのを見て、ヒロインは慌てて手を引いた。
若くて綺麗な女性だった。
親しげな様子でレノに話しかけている。
ヒロインはこの場に居づらい雰囲気を感じ、一歩二歩後退った。
「私、副社長に報告があるから。悪いけど、片付けお願いね」
早口でそう言うと、ヒロインは別れの挨拶もそこそこにその場を早足で離れた。
レノに名前を呼ばれたような気もしたが、きっと気のせいだろう。
ヒロインは一度も振り返らず、来た道を戻って本社ビルを出た。
そして、今に至る。
ヒロインは少し憂鬱になりながらも、先輩と後輩という関係を崩さなくてよかったと安堵していた。
もしまた会うことになっても、気まずい思いをしなくて済むのだから。
いや、もう会うことなどないかもしれない。
今回の任務は欠員補充のため。いつもの仕事に戻れば、もうタークスのメンバーと関わることはないだろう。
これでよかったはずなのに、心からそう思うことができなかった。
ヒロインは心の底に沈んだ重いものを吐き出すように、深い溜息をついた。
数日後。
ヒロインは執務室に置かれたデスクで頬杖をつきながら、今日もまた溜息をついていた。
「ヒロイン、そんなに私といるのが嫌か?」
ルーファウスの冷たい声に即座に反応し、ヒロインは椅子に座りながら背筋を伸ばした。
「そんなことはない、です」
プライベートでは姉と弟でも、仕事中は部下と上司だ。
ルーファウスの立場もあるので、そこはしっかりと線引をし、振る舞っていた。
が、任務から戻ってから、どうも心ここにあらずの状態が続いていた。
「ツォンからも報告は受けている。戻って緊張が解けたせいで、疲れが出ているんだろう。明日からしばらく休暇を取れ。次の出社は週明けでいい」
「でも…」
ここ数年、ルーファウスの護衛兼秘書を務めるようになって、休みはルーファウスに合わせていた。
そうしないと、ルーファウスの護衛がいなくなるからだ。
「コスタに行っていたときのように、タークスの誰かに代理を頼むさ。どのみち、今のままではまともに仕事もできないだろう」
ルーファウスの指摘はもっともだった。
こんなに注意力散漫ではどのみち役に立てそうにはなかった。
「そうします」
ヒロインは素直に頷いた。
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