6:もどかしい二人
ヒロイン
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「はぁ…」
コスタ・デル・ソルの任務を終えてから数日が経った。
レノは今日もまたオフィスの机に突っ伏し、大きな溜息をついた。
「レノ、いい加減に溜息ばかりつくのはやめろ」
レノは視線だけルードの方に向けた。
ルードの眉間には皺が寄っていた。
「…悩める年頃なんだぞ、と」
レノは帰社してすぐにツォンと話したことを思い返していた。
「レノ、お前が見た男はこいつで間違いないか?」
モニターに表示されたのは、確かにコスタ・デル・ソルのコンビニ前で火を貸してくれと言った男だった。
レノが肯定すると、ツォンの表情が厳しいものに変わった。
「こいつは、ヒロインさんの婚約者だった男だ。つまり、元タークスでもある」
ツォンの言葉に、レノは眉をひそめた。
「そいつは、ヒロインが自分で殺したって…」
ヒロインの過去に触れたとき、彼女は確かに冷たい声でそう言った。
あのときの必死に感情を押し殺した苦しそうな表情と声音は忘れることができない。
そんなヒロインが嘘を言っていたようには思えなかった。
「恐らく、ヒロインさんが自分の婚約者だと思って手をかけた男は別人だ。それと、今回確保した男だと思っていたのも、中身は別人――この男だろう」
そんなことがありえるのかと問おうとしたレノに、小さな袋に入った錠剤が投げ渡された。
「最近、ミッドガルでばらまかれている幻覚剤だ。タチの悪い薬でな。副社長命令で薬の流通を洗っていたところ、こいつが当時、ヒロインさんから検出した薬と同じだということがわかったんだ。そして、あの事件を再度洗い直して犯人として浮上したのがこの男だ」
レノは今までの話から浮かび上がった事実に愕然とした。
「なら、ヒロインをレイプしていたのは――」
「あぁ、こいつは自分の婚約者を暴行した」
目の前にその男がいたなら、迷わず殺す。
ツォンが激しい殺気を顕にした。
「元々、私もルードも、副社長も結婚には反対だったんだ。プライドばかり高い男だったからな。ヒロインさんは相棒だったこいつを信頼していたみたいだったが…あのとき、婚約も救助も反対していれば、と今でも思うよ」
「…ヒロインは、知らないんだよな?」
「あぁ。知らせるつもりもない。この件は、私とルード、そしてお前で内々に処理する」
それを聞いてほっとしたのと同時に、レノは激しい怒りを感じた。
婚約までして、自分の大切な人を自ら傷つける真似をするなんて、正気の沙汰ではない。
そんなイカれた男を殺したと思い、苦しんでいるヒロインを思うと心が軋んだ。
「あー…タバコ吸いたくなってきたぞ、と」
あの男の顔を思い出すだけで、胸がムカムカする。
そういうときは、いつもタバコで誤魔化してきたのだが…
「吸ってきたらいいだろう」
ルードが呆れたように言った。
「…タバコ、止めたんだぞ、と」
ツォンから話を聞いたあと、レノはほぼ新品だったタバコとライターを捨てた。
あの卑劣な男をヒロインに思い出させてしまうようなことはしたくなかったからだ。
が、今は少しだけあの思い切った行動を後悔していた。
「あー、ダメだ!ちょっと身体動かしてくるぞ、と」
レノはがばっと身体を起こした。
ルードが肩を竦めているのが見えたが、レノは振り返らずに真っ直ぐ社内の訓練施設に向かった。
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コスタ・デル・ソルの任務を終えてから数日が経った。
レノは今日もまたオフィスの机に突っ伏し、大きな溜息をついた。
「レノ、いい加減に溜息ばかりつくのはやめろ」
レノは視線だけルードの方に向けた。
ルードの眉間には皺が寄っていた。
「…悩める年頃なんだぞ、と」
レノは帰社してすぐにツォンと話したことを思い返していた。
「レノ、お前が見た男はこいつで間違いないか?」
モニターに表示されたのは、確かにコスタ・デル・ソルのコンビニ前で火を貸してくれと言った男だった。
レノが肯定すると、ツォンの表情が厳しいものに変わった。
「こいつは、ヒロインさんの婚約者だった男だ。つまり、元タークスでもある」
ツォンの言葉に、レノは眉をひそめた。
「そいつは、ヒロインが自分で殺したって…」
ヒロインの過去に触れたとき、彼女は確かに冷たい声でそう言った。
あのときの必死に感情を押し殺した苦しそうな表情と声音は忘れることができない。
そんなヒロインが嘘を言っていたようには思えなかった。
「恐らく、ヒロインさんが自分の婚約者だと思って手をかけた男は別人だ。それと、今回確保した男だと思っていたのも、中身は別人――この男だろう」
そんなことがありえるのかと問おうとしたレノに、小さな袋に入った錠剤が投げ渡された。
「最近、ミッドガルでばらまかれている幻覚剤だ。タチの悪い薬でな。副社長命令で薬の流通を洗っていたところ、こいつが当時、ヒロインさんから検出した薬と同じだということがわかったんだ。そして、あの事件を再度洗い直して犯人として浮上したのがこの男だ」
レノは今までの話から浮かび上がった事実に愕然とした。
「なら、ヒロインをレイプしていたのは――」
「あぁ、こいつは自分の婚約者を暴行した」
目の前にその男がいたなら、迷わず殺す。
ツォンが激しい殺気を顕にした。
「元々、私もルードも、副社長も結婚には反対だったんだ。プライドばかり高い男だったからな。ヒロインさんは相棒だったこいつを信頼していたみたいだったが…あのとき、婚約も救助も反対していれば、と今でも思うよ」
「…ヒロインは、知らないんだよな?」
「あぁ。知らせるつもりもない。この件は、私とルード、そしてお前で内々に処理する」
それを聞いてほっとしたのと同時に、レノは激しい怒りを感じた。
婚約までして、自分の大切な人を自ら傷つける真似をするなんて、正気の沙汰ではない。
そんなイカれた男を殺したと思い、苦しんでいるヒロインを思うと心が軋んだ。
「あー…タバコ吸いたくなってきたぞ、と」
あの男の顔を思い出すだけで、胸がムカムカする。
そういうときは、いつもタバコで誤魔化してきたのだが…
「吸ってきたらいいだろう」
ルードが呆れたように言った。
「…タバコ、止めたんだぞ、と」
ツォンから話を聞いたあと、レノはほぼ新品だったタバコとライターを捨てた。
あの卑劣な男をヒロインに思い出させてしまうようなことはしたくなかったからだ。
が、今は少しだけあの思い切った行動を後悔していた。
「あー、ダメだ!ちょっと身体動かしてくるぞ、と」
レノはがばっと身体を起こした。
ルードが肩を竦めているのが見えたが、レノは振り返らずに真っ直ぐ社内の訓練施設に向かった。
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