4:二人の約束
ヒロイン
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
二人は男に気づかれないよう、距離をとって男を尾行していた。
レノはヒロインの尾行技術に舌を巻いた。ツォンが教えてやってくれと言うのもわかる。
鋭い観察眼、音を聞き分ける力、周囲に溶け込む技術――どれも一段レノの技術より上だ。
レノはそれらの技術を盗もうと、ヒロインの動きをよく観察した。
しばらくヒロインと男を交互に目で追っていると、感覚でどうすればよいかわかってくる。予測をし、ヒロインの動きを先回りしてみせると、ヒロインが目を丸くした。
「流石だね。私が組んだ中で、レノが一番筋がいいよ」
「光栄だぞ、と」
「さあ、私たちも店に入ろうか」
男が入っていた店はナイトクラブだった。場に合わせるためか、ヒロインはシャツのボタンを2つほど外した。うっかりそこに現れた谷間を見てしまったレノは、慌てて視線を外した。
「恥ずかしいから、あんまり見ないでね。せめてこうしないと、あまりに地味だから…」
シャツとスラックスでは確かにナイトクラブに行くには地味だ。が、そこから覗く豊かな胸の谷間があれば、男は格好など気にしないだろう。
「レノと一緒なら絡まれないとは思うけど、念のため。ね?」
ヒロインは少し頬を赤らめ、レノの腕をとった。
布越しにヒロインの体温を僅かに感じ、レノは唾を飲んだ。
「じゃあ、行こうか」
二人は仲睦まじいカップルを装い、適当な会話をしながらナイトクラブに足を踏み入れた。
中は暗く、大音量の音楽が流れていた。人も多い。
しかし、大勢の若者たちの中で目当ての男は浮いており、すぐに見つけることができた。
レノとヒロインはゆっくりと男に近づき、男の服の裾に盗聴器を仕掛け、距離を取った。
二人はカクテルのグラスを持ち、男が動くのを待った。
レノたちが持つグラスは、とっくに中身がぬるくなっていた。
「目の前に酒があるってのに、飲めないのは辛いな…」
男は相変わらず酒を空けるばかりで動く様子はない。
「水、持ってくる――」
「ダメ、行かないで。お願い」
この場を離れようとしたとき、ヒロインがレノの服を掴んでそれを止めた。
ヒロインは男の方に完全に背を向けていた。
レノは眉をひそめた。
「ヒロイン?」
先程までと打って変わり、ヒロインの顔は真っ青だった。口を手で抑え、必死に息を殺そうとしている。
レノは男とその周囲に視線を向けた。
男の後方、入口側から男の方に真っ直ぐ向かってくる一人の男がいた。明らかにその筋の人間とわかる風体だった。
「あいつ…あの男が…どうしよう、見られたかもしれない…」
レノは考える前に、男の視界にヒロインが入らないように位置を変えた。
「大丈夫、オレがついてる。嫌かもしれねぇけど、ちょっと我慢だぞ、と」
レノはヒロインの腰に腕を回すと、軽く抱き寄せた。
「オレが目になるから、それ以外は頼むぞ、と」
ヒロインが大きく息を吸い込み、ゆっくりとそれを吐き出した。そして、ヒロインはゆっくりと目を閉じた。
「ありがとう」
レノはヒロインをかばいつつ、二人の男の方に視線を向けた。
イヤホンから声が聞こえてきた。
最初は挨拶と世間話。しばらくして、聞くに堪えない下品な話が始まった。
両者の声質が不愉快なこともあり、さすがのレノも顔をしかめた。
「ヒロイン、嫌なら聞かなくていいぞ、と」
「大丈夫…」
本人はそう言うが、とてもそうは見えなかった。今にも倒れるのではないかというぐらい、顔色が悪い。
(あの男が、ヒロインを――)
今ここであの男を殺すのは簡単だったが、目的は監視だ。武器流通の情報を掴むまでは泳がせるしかない。
怒りで視界が染まる前に、レノは思考を切り替えた。
今は自分の目しかないのだから、怒りで視界を狭めるわけにはいかない。
レノたちが監視している中、男たちは取引の場所、日時、武器の種類、数を取り決め、時間差で店を出ていった。監視対象の男が出る前、レノは気付かれないように盗聴器を回収した。
.
レノはヒロインの尾行技術に舌を巻いた。ツォンが教えてやってくれと言うのもわかる。
鋭い観察眼、音を聞き分ける力、周囲に溶け込む技術――どれも一段レノの技術より上だ。
レノはそれらの技術を盗もうと、ヒロインの動きをよく観察した。
しばらくヒロインと男を交互に目で追っていると、感覚でどうすればよいかわかってくる。予測をし、ヒロインの動きを先回りしてみせると、ヒロインが目を丸くした。
「流石だね。私が組んだ中で、レノが一番筋がいいよ」
「光栄だぞ、と」
「さあ、私たちも店に入ろうか」
男が入っていた店はナイトクラブだった。場に合わせるためか、ヒロインはシャツのボタンを2つほど外した。うっかりそこに現れた谷間を見てしまったレノは、慌てて視線を外した。
「恥ずかしいから、あんまり見ないでね。せめてこうしないと、あまりに地味だから…」
シャツとスラックスでは確かにナイトクラブに行くには地味だ。が、そこから覗く豊かな胸の谷間があれば、男は格好など気にしないだろう。
「レノと一緒なら絡まれないとは思うけど、念のため。ね?」
ヒロインは少し頬を赤らめ、レノの腕をとった。
布越しにヒロインの体温を僅かに感じ、レノは唾を飲んだ。
「じゃあ、行こうか」
二人は仲睦まじいカップルを装い、適当な会話をしながらナイトクラブに足を踏み入れた。
中は暗く、大音量の音楽が流れていた。人も多い。
しかし、大勢の若者たちの中で目当ての男は浮いており、すぐに見つけることができた。
レノとヒロインはゆっくりと男に近づき、男の服の裾に盗聴器を仕掛け、距離を取った。
二人はカクテルのグラスを持ち、男が動くのを待った。
レノたちが持つグラスは、とっくに中身がぬるくなっていた。
「目の前に酒があるってのに、飲めないのは辛いな…」
男は相変わらず酒を空けるばかりで動く様子はない。
「水、持ってくる――」
「ダメ、行かないで。お願い」
この場を離れようとしたとき、ヒロインがレノの服を掴んでそれを止めた。
ヒロインは男の方に完全に背を向けていた。
レノは眉をひそめた。
「ヒロイン?」
先程までと打って変わり、ヒロインの顔は真っ青だった。口を手で抑え、必死に息を殺そうとしている。
レノは男とその周囲に視線を向けた。
男の後方、入口側から男の方に真っ直ぐ向かってくる一人の男がいた。明らかにその筋の人間とわかる風体だった。
「あいつ…あの男が…どうしよう、見られたかもしれない…」
レノは考える前に、男の視界にヒロインが入らないように位置を変えた。
「大丈夫、オレがついてる。嫌かもしれねぇけど、ちょっと我慢だぞ、と」
レノはヒロインの腰に腕を回すと、軽く抱き寄せた。
「オレが目になるから、それ以外は頼むぞ、と」
ヒロインが大きく息を吸い込み、ゆっくりとそれを吐き出した。そして、ヒロインはゆっくりと目を閉じた。
「ありがとう」
レノはヒロインをかばいつつ、二人の男の方に視線を向けた。
イヤホンから声が聞こえてきた。
最初は挨拶と世間話。しばらくして、聞くに堪えない下品な話が始まった。
両者の声質が不愉快なこともあり、さすがのレノも顔をしかめた。
「ヒロイン、嫌なら聞かなくていいぞ、と」
「大丈夫…」
本人はそう言うが、とてもそうは見えなかった。今にも倒れるのではないかというぐらい、顔色が悪い。
(あの男が、ヒロインを――)
今ここであの男を殺すのは簡単だったが、目的は監視だ。武器流通の情報を掴むまでは泳がせるしかない。
怒りで視界が染まる前に、レノは思考を切り替えた。
今は自分の目しかないのだから、怒りで視界を狭めるわけにはいかない。
レノたちが監視している中、男たちは取引の場所、日時、武器の種類、数を取り決め、時間差で店を出ていった。監視対象の男が出る前、レノは気付かれないように盗聴器を回収した。
.