3:いらない命
ヒロイン
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「レノは、自分の選択で、人を殺したこと、ある?」
レノは眉をひそめた。
ヒロインはレノの隣に腰を下ろし、口元に薄い笑みを浮かべながら、真っ直ぐレノの目を見て言った。
「私かレノの彼女か、殺していい方を選んで?」
ヒロインが指で銃を撃つポーズをし、その人差し指をレノの心臓に突きつけた。
「ねえ、レノならどうする?」
あまりにヒロインの顔が真剣だったので、レノも真面目に考えた。
選べと言われたら、どうするだろうか。
ヒロインは同僚と恋人を天秤にかけろと言っている。
きっとそうなったとき、どちらを選んでも後悔するだろう。
「私を殺して。あなたに殺されるなら、後悔しない」
あまりにヒロインの言葉が真に迫っていて、レノはごくりと唾を飲んだ。
「彼女がそう言ったとして、彼女を選べる?私は、選べなかった」
ヒロインがレノの心臓から指を離した。
「私は、同僚を殺してくれって、あの男に言った。あいつは笑って同僚を撃って、それから――彼と同僚の前で、私を犯したの」
レノは声を失った。
ヒロインは淡々と話をしていたが、あまりの内容に耳を塞げるならば塞いでしまいたかった。
「嫌だと言っても、やめてと懇願しても、あいつは笑って、何度も何度も私を犯して、いつも満足したらタバコを吸ってた。その臭いと仕草が焼き付いて離れなくて、だから――」
レノはヒロインを抱きしめようと伸ばした手を引いた。
ヒロインはレノにその男を重ねたのだ。
とても、触れられない。
船室であんなことをしておいて、今更、安直に抱き締めて慰めるようなことはできなかった。
レノは拳を握りしめ、きつく唇を噛んだ。
「レノは悪くないよ。もう、あれから7年経つのに…ダメな先輩でしょ?」
「これからも、そうやって無理矢理笑うのか?」
痛みを隠して、見て見ぬ振りして、涙も苦しみも全部隠して、これからもヒロインは生きていくのだろうか。
恐らく、その痛みを理解し、癒せるのは自分じゃないと、レノは理解していた。
でも、ヒロインにはいたはずだ。それをできる人が。
「あんたの、恋人は――」
「彼は…私が、殺した」
背筋が凍りそうなほど、冷たい声だった。
「報告書、そこに全部書いてある。気になるなら読んでみるといいよ。あまり、おすすめできる内容ではないけど――さて」
ヒロインがいかにも作り物という笑顔で、レノににこりと微笑んだ。
「できる後輩くんは、今日はこれでお仕事おしまい!おやすみ」
「ヒロインこそ休んだほうが…」
「いいの、一人にして」
さっきとは打って変わってきつい口調だった。
「…おやすみ、ヒロイン」
ヒロインからの返事はなかった。
レノはヒロインの過去に踏み込んでしまったことを心底後悔した。
せっかく冗談も言い合えるような仲になっていたのに。
きっとヒロインが、これから心の底から笑ってくれることはないと思うと、レノの心が軋んだ。
レノが去った部屋で一人、ヒロインは膝を抱えていた。
レノが悪いわけじゃない。
これは本心だった。
それなのに、レノの優しさをきつい態度で拒んだ。
心配そうにこちらを見てくるのも、優しい言葉をかけられるのも、慰められるのも、何もかも全てに苛立ちを感じた。
「わかるわけないくせに」
これがヒロインの本音だった。
なのに、レノを傷つけてしまったことへの罪悪感が募る。
苛立ちと後悔と、いろいろな感情が混ざり合って、ヒロインの心を掻き乱した。
.
レノは眉をひそめた。
ヒロインはレノの隣に腰を下ろし、口元に薄い笑みを浮かべながら、真っ直ぐレノの目を見て言った。
「私かレノの彼女か、殺していい方を選んで?」
ヒロインが指で銃を撃つポーズをし、その人差し指をレノの心臓に突きつけた。
「ねえ、レノならどうする?」
あまりにヒロインの顔が真剣だったので、レノも真面目に考えた。
選べと言われたら、どうするだろうか。
ヒロインは同僚と恋人を天秤にかけろと言っている。
きっとそうなったとき、どちらを選んでも後悔するだろう。
「私を殺して。あなたに殺されるなら、後悔しない」
あまりにヒロインの言葉が真に迫っていて、レノはごくりと唾を飲んだ。
「彼女がそう言ったとして、彼女を選べる?私は、選べなかった」
ヒロインがレノの心臓から指を離した。
「私は、同僚を殺してくれって、あの男に言った。あいつは笑って同僚を撃って、それから――彼と同僚の前で、私を犯したの」
レノは声を失った。
ヒロインは淡々と話をしていたが、あまりの内容に耳を塞げるならば塞いでしまいたかった。
「嫌だと言っても、やめてと懇願しても、あいつは笑って、何度も何度も私を犯して、いつも満足したらタバコを吸ってた。その臭いと仕草が焼き付いて離れなくて、だから――」
レノはヒロインを抱きしめようと伸ばした手を引いた。
ヒロインはレノにその男を重ねたのだ。
とても、触れられない。
船室であんなことをしておいて、今更、安直に抱き締めて慰めるようなことはできなかった。
レノは拳を握りしめ、きつく唇を噛んだ。
「レノは悪くないよ。もう、あれから7年経つのに…ダメな先輩でしょ?」
「これからも、そうやって無理矢理笑うのか?」
痛みを隠して、見て見ぬ振りして、涙も苦しみも全部隠して、これからもヒロインは生きていくのだろうか。
恐らく、その痛みを理解し、癒せるのは自分じゃないと、レノは理解していた。
でも、ヒロインにはいたはずだ。それをできる人が。
「あんたの、恋人は――」
「彼は…私が、殺した」
背筋が凍りそうなほど、冷たい声だった。
「報告書、そこに全部書いてある。気になるなら読んでみるといいよ。あまり、おすすめできる内容ではないけど――さて」
ヒロインがいかにも作り物という笑顔で、レノににこりと微笑んだ。
「できる後輩くんは、今日はこれでお仕事おしまい!おやすみ」
「ヒロインこそ休んだほうが…」
「いいの、一人にして」
さっきとは打って変わってきつい口調だった。
「…おやすみ、ヒロイン」
ヒロインからの返事はなかった。
レノはヒロインの過去に踏み込んでしまったことを心底後悔した。
せっかく冗談も言い合えるような仲になっていたのに。
きっとヒロインが、これから心の底から笑ってくれることはないと思うと、レノの心が軋んだ。
レノが去った部屋で一人、ヒロインは膝を抱えていた。
レノが悪いわけじゃない。
これは本心だった。
それなのに、レノの優しさをきつい態度で拒んだ。
心配そうにこちらを見てくるのも、優しい言葉をかけられるのも、慰められるのも、何もかも全てに苛立ちを感じた。
「わかるわけないくせに」
これがヒロインの本音だった。
なのに、レノを傷つけてしまったことへの罪悪感が募る。
苛立ちと後悔と、いろいろな感情が混ざり合って、ヒロインの心を掻き乱した。
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