3:いらない命
ヒロイン
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
他愛もない会話と二人でとる食事。その生活にも慣れ、だんだんと楽しくなってきたが、仕事は全く進展しなかった。
男は女を部屋で抱くばかりで、全く反神羅組織と接触する気配はなかった。動きがなければ退屈なだけだ。
今日もお盛んな男の部屋を眺めながら、レノは大きな欠伸をした。
「ねみぃ…」
「寝る?」
ぼーっとしてつい思ったことを口にしてしまったようだ。
「無理せず『先輩』に任せなさい」
ヒロインがあまりにも得意げな顔をするので、レノは思わず吹き出した。
「可愛げのない後輩だなぁ」
むっとした表情でヒロインが言った。
「『先輩』を敬いたいのは山々だけどよ、ほらオレ、『先輩』のこと知らねえだろ?武勇伝でも聞かせてくれたら、可愛げのある後輩になれるかもなぁ」
「え、武勇伝…?」
ヒロインの表情が明らかに強張った。そして、わざとらしくレノから視線を外して苦笑いを浮かべた。
「そういうのは、ないかなぁ。ほら、ツォンが偉くなっちゃうぐらいだし。私は、ただのタークスの一員、で…」
ヒロインが声を詰まらせた。レノが心配してその横顔を見つめると、すっと一筋、ヒロインの頬を涙が伝った。
「やだ…ごめん。どうしちゃったんだろ。ちょっと顔洗ってくるね」
半分世間話、あとの半分は探りを入れようとしただけだったが、またしてもヒロインの地雷を踏み抜いてしまったようだ。いや、そんな生易しいものではない。ヒロインの心の傷に無神経にも触れてしまったのだ。塞がっていないその傷は、ちょっとしたきっかけで血を流す。
レノはふと、出かける前にツォンに言われた言葉を思い出した。
(こういうことかよ…)
手を出すな、というのは、女性関係だけでなく、深く関わるなという意味も含まれているのだろう。
それをあのとき理解していれば、何度もヒロインのトラウマに触れ、傷つけることもなかったかもしれないし、ただの同僚という関係を踏み越えなかったかもしれない。
しかし、ヒロインのことを知りたいと思ってしまった。その涙の理由を知りたい。
(知って…どうする?)
優しく慰めて、抱く?
拒絶されて傷ついた自分のプライドを満足させるために?
本当にそれだけなのかと、レノは自問自答した。
しばらく考えてみたが、明確な答えは見つからなかった。ただの興味本位かもしれないし、それだけではないのかもしれない。
すっきりしない頭と胸中を少しでも軽くしたくて、レノは胸ポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
タバコの灰をいつものように落とそうとしたところで、ヒロインが戻ってきたことに気づいた。
レノは人差し指で灰を落とした。
「…さすが、鋭いね」
ヒロインは泣き笑いのような顔で立っていた。その視線は、レノのタバコを持つ手に向けられていた。
「あれだけで、わかっちゃうなんて」
.
男は女を部屋で抱くばかりで、全く反神羅組織と接触する気配はなかった。動きがなければ退屈なだけだ。
今日もお盛んな男の部屋を眺めながら、レノは大きな欠伸をした。
「ねみぃ…」
「寝る?」
ぼーっとしてつい思ったことを口にしてしまったようだ。
「無理せず『先輩』に任せなさい」
ヒロインがあまりにも得意げな顔をするので、レノは思わず吹き出した。
「可愛げのない後輩だなぁ」
むっとした表情でヒロインが言った。
「『先輩』を敬いたいのは山々だけどよ、ほらオレ、『先輩』のこと知らねえだろ?武勇伝でも聞かせてくれたら、可愛げのある後輩になれるかもなぁ」
「え、武勇伝…?」
ヒロインの表情が明らかに強張った。そして、わざとらしくレノから視線を外して苦笑いを浮かべた。
「そういうのは、ないかなぁ。ほら、ツォンが偉くなっちゃうぐらいだし。私は、ただのタークスの一員、で…」
ヒロインが声を詰まらせた。レノが心配してその横顔を見つめると、すっと一筋、ヒロインの頬を涙が伝った。
「やだ…ごめん。どうしちゃったんだろ。ちょっと顔洗ってくるね」
半分世間話、あとの半分は探りを入れようとしただけだったが、またしてもヒロインの地雷を踏み抜いてしまったようだ。いや、そんな生易しいものではない。ヒロインの心の傷に無神経にも触れてしまったのだ。塞がっていないその傷は、ちょっとしたきっかけで血を流す。
レノはふと、出かける前にツォンに言われた言葉を思い出した。
(こういうことかよ…)
手を出すな、というのは、女性関係だけでなく、深く関わるなという意味も含まれているのだろう。
それをあのとき理解していれば、何度もヒロインのトラウマに触れ、傷つけることもなかったかもしれないし、ただの同僚という関係を踏み越えなかったかもしれない。
しかし、ヒロインのことを知りたいと思ってしまった。その涙の理由を知りたい。
(知って…どうする?)
優しく慰めて、抱く?
拒絶されて傷ついた自分のプライドを満足させるために?
本当にそれだけなのかと、レノは自問自答した。
しばらく考えてみたが、明確な答えは見つからなかった。ただの興味本位かもしれないし、それだけではないのかもしれない。
すっきりしない頭と胸中を少しでも軽くしたくて、レノは胸ポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
タバコの灰をいつものように落とそうとしたところで、ヒロインが戻ってきたことに気づいた。
レノは人差し指で灰を落とした。
「…さすが、鋭いね」
ヒロインは泣き笑いのような顔で立っていた。その視線は、レノのタバコを持つ手に向けられていた。
「あれだけで、わかっちゃうなんて」
.