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1-11:Memory

ヒロイン

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ヒロイン

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研究所の生き残り

 予想していなかった展開に、レノは眩暈を覚えた。



 これなら、電話越しにツォンが動揺していたのも納得できるが…。




「どういうこと、ですか…?」



 社長命令の指令書を持つ手も、声さえも震えた。




「今回のヒロイン失踪を、上層部が逃走と判断した。監視下から離れて覚醒されると厄介なので、覚醒前に殺せとのことだ」



 ヴェルドは淡々と説明していたが、顔には苦渋が滲み出ている。



「お前が見つけてきたレポートも肝心の部分が切り取られていて、ヒロインを救う手立ては、現状なしだ」



 だから危ない芽は早めに摘み取るそうだ、とヴェルドが吐き捨てるように言った。




 決してヴェルドがヒロイン抹殺に納得していないことは、レノにもすぐわかった。



 当然レノも、理不尽な命令に納得できない。



 しかし、レノはそれが拒否できない任務であることも理解していた。




ヒロインを、殺すんですか?」



 レノが発した言葉には、抑揚も何もなかった。



 それは事務的なもの。



 与えられた命令を確認するためだけのものだった。




「……あぁ、命令だ」



 一呼吸間を置いて、ヴェルドが意を決したように断言した。



 レノの隣に立っているツォンも両拳を握り締めて、悔しそうに唇を噛んで、顔を伏せた。




「じゃあ、俺が行きますよ、と」



 いつものように飄々と言ってのけると、ツォンが正気か?と言わんばかりの視線を投げてきた。



 レノはそれを軽く受け流し、ヴェルドに許可してくれるよう迫った。




「…いいだろう。各地の監視カメラの映像から、ヒロインがトラックに乗り込んだことがわかった。おそらく行き先はジュノンだ」



 ヴェルドが差し出した監視カメラの映像をプリントしたものには、はっきりとヒロインがトラックに乗り込む様子が写っていた。



 表情まではわからなかったが、写真に写ったヒロインを見て、レノの胸が詰まる。




 しかしレノは感情を表に出さず、淡々と告げた。




「俺一人で行きますから。応援はなしでお願いしますよ、と。あー、あと、休日出勤手当てよろしく」



 最後はわざとおどけたように言って、訝しむツォンの視線を避けるようにオフィスを出た。



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