「さて、ヒロインの部屋を手配しないとな」

「主任、今日はもう係の者も帰ってますし、早くても明日になりますが」

「「あの」」


　困ったな、と悩む二人を尻目に、レノとヒロインは同時に声を発した。

　思わず顔を見合わせる。


「先にどうぞ」


　ヒロインは苦笑しながら、レノに発言を譲った。


「あー、俺んち一部屋空いてますよ、と」
「「ダメだ！」」


　間髪置かず、ヴェルド・ツォンの両者が反対した。


　さすがにヒロインも目を丸くしている。


「何もそんなすぐ二人で言わなくてもι」


　二人の気迫に押され、レノもいまいち強気になりきれない。


「レノと同居だけは許さん！」

　ヴェルドが、まるで父親のようなことを言うと、ツォンもそれに賛同する。

「レノは見境ないからな」


　ひどい言われように、上司相手と言えど、レノはカチンときた。


「んなっ…失礼な。人を獣か何かと勘違いしてるでしょう」

「間違ってないだろう」



　男三人の醜い争いに終止符を打つべく、ヒロインは遠慮がちに口を挟んだ。


「あの…私、レノの所にお邪魔しようと思うんですけど…。主任もツォンさんも今晩は仕事でしょう？今日は…一人になりたくないんです」


　ヒロインの思ってもみなかった発言に、ヴェルドとツォンは目を丸くした。

　一方レノは、当然とばかりに勝ち誇ったように笑う。


「ま、まぁヒロインが言うなら仕方ない。レノ、頼んだぞ」


　ヴェルドの『頼んだぞ』に、殺気のようなものを感じ、レノは肩を竦める。


「誰も取って食いはしませんよ、と」



　ツォンは納得していないようだったが、レノは気にせずヒロインを連れてオフィスを出た。



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