二人は駅から電車に乗り、スラムに降り立った。




「んー、このスラムの雰囲気久しぶり」



　清潔とは言い難いが、バイタリティー溢れるスラムの活気を吸い込むかのように、ヒロインは深呼吸をしながら大きく伸びをした。



「さっさと行くぞ、と」



　ヒロインとは対照的に欠伸を噛み殺したレノは、目元に浮かんだ涙を拭い歩き出した。



「はいはい…」



　先輩面をしているくせに、すっかりやる気のないレノに肩を竦め、ヒロインも歩き出した。







　スラムの駅からしばらく歩くと、小さな教会があった。



　少しだけ射し込む光によって輝くステンドグラスが幻想的で、ヒロインはしばらくそれに見とれた。



　相変わらず色々なものに目を奪われ、惚けたように立ち止まるヒロインに困ったものだと嘆息したレノは、またヒロインを引きずるようにして中に入った。





「邪魔するぞ、と」



　レノは教会の大きな扉を片手で押し開けた。



　古びた木製の扉は蝶番も錆びていたのか、ギィーッと鈍い音を立てた。






「「レノ！？」」






　中から聞こえた知った男女の声に、レノは驚いて歩みを止めた。




「あ…って、ザックス！？」



　やっとレノの手から解放されたヒロインは、レノの後ろからひょっこり顔を出し、口元に手を当てた。




「げっ！ヒロインちゃんまで！？」




　大袈裟に驚いて後退るザックスの腕を取り、少女が一人ザックスの背中に隠れた。




「ね、どういうこと？」



　交互にザックスと少女を見ていたヒロインは、知ってる？とばかりにレノを見上げた。




「知るわけないだろ、と」



　レノは両手を上げ、首を竦めた。



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