「その、新人ソルジャーというソルジャーがヒロインを攫い、男を殺させた――そういうことか」



　ヴェルドは一息に言うと、顔をしかめ大きな溜息をついた。






　翌日、出社するとすぐにヒロインはヴェルドとツォンに呼ばれた。



　オフィスの隣にある小さな会議室で、ヒロインは昨日のこと、初めて新人ソルジャーに会った日のことを話した。





「あの…私、大丈夫なんでしょうか？」




　昨日から思っていたことをヒロインは口にした。



　無意識のうちに人を殺した。



　今回はターゲットだったからよかったものの、次はどうなるか分からない。




　自分という人間が信じられない。



　そう言ったヒロインは、きつくこぶしを握った。




「ヒロイン。そんな風に深刻な顔をして落ち込んでいたら、相手の思う壺なんじゃないか？」



　ヴェルドはヒロインを励ますように優しく言った。



「そうだぞ、ヒロイン。 いつも通りしてるのが一番だ。――だから、今日も書類整理頼むぞ」



　ツォンもふっと笑うと、レノの分もな、と付け加えた。




「はい。じゃあ、仕事に戻ります」



　二人の厚意を有り難く受け取り、笑顔になったヒロインは会議室を後にした。










　パタン、とドアが閉まり、ヒロインの気配が遠ざかったところで、ヴェルドは腕を組み難しい顔を作った。



　眉間にも深く皺が刻まれる。




「新人ソルジャー、か…」



　ヴェルドの口から大きな溜息が吐き出された。



「まさか、あのラボの生き残りがいたとはな…」




「やはり、復讐…でしょうか？」



　ツォンもヴェルド同様、眉間に皺を寄せた。



「だろうな。しかも、もう地下に潜っただろう。…厄介だな」




　ヴェルドはツォンに、この件を最機密事項として扱うよう指示した。






「悪夢再びだな…」



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