（これでディスクは安心ね)




　黒髪の女性――ヒロインは乱れた呼吸を整えようと一度大きく息を吸った。



　細い路地の物陰で、壁に背を預け天を仰ぐ。






　今日タークスに組織の情報が入ったディスクを渡すことになっていた。



　ところが、運悪く組織の男がヒロインを襲ってきたのだ。



　伸し掛かってくる男を何とか振りほどき、近くに待機しているであろうタークスに計画失敗の合図を送った。




　逃げながら次の行動を考えているとき、ヒロインの目に飛び込んできたのは、赤毛に黒スーツの男だった。






（あいつ、タークスらしくない奴だったわね）





　ヒロインは赤毛の男を思い出し、大丈夫かしら…とディスクの行方に一抹の不安を覚えた。







「さて…これからどうしようかな」




　組織に何もなかったような顔をして戻るか。



　はたまた、タークスに保護してもらうか。





　どちらにしても、男から逃げる必要がある。




　物陰から辺りの様子を伺うが、男が追ってくる気配はない。




（上手く撒いた…？）




　もう一度顔を出して辺りを確かめる。






　誰もいないのを確認して、ヒロインは物陰から出た。




　とりあえず人込みに紛れようとメインストリートに向かって歩きだした。










「お姉ちゃん、俺たちの相手してくれよ」





　ヒロインの前に立ちはだかったのは、チンピラ風の男３人。




　すぐにヒロインが逃げられないよう、周りを囲んだ。




　ヒロインは小さく舌打ちをして、足に付けていたホルスターに手を伸ばした。



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