朝食を終えると、ヒロインは着替えると言って自分の部屋に入っていった。




　出社時刻までまだ余裕がある。




　すでにスーツを着たレノは、すっかり片付いたテーブルに灰皿を置き、食後の一服をしようとタバコに火を点ける。



　ソファの背もたれに寄り掛かりながら、レノはテレビに視線を向けた。



　テレビでは若い女性アナウンサーが朝のニュースを読み上げていた。



　それはさしてレノの関心を引かず、右から左に流れるようなものだった。





　ゆらゆら立ち上るタバコの煙が、自然とレノを思考の世界に導いていく。





　今日の仕事のこと、昨日のこと、ヒロインのこと。




　昨日のことに関してヒロインは一切触れない。


　聞けば話してくれるかもしれないが、何となく聞くのは憚(はばか)られた。


　逃げていると言われればそれまでだが、レノはまだその時ではないような気がしていた。




　ほとんど吸わないまま灰と化したタバコを灰皿に押しつけ、レノは新しいタバコをくわえた。




「あー思い出した」




　レノは渋い顔をして頭を掻いた。



（ツォンさんにどういうかな…）




　ヒロインと同居します。




　などと口にすれば血を見るのは必至。



　いい案が思いつかず、レノは頭を抱えた。




　ぐるぐる頭を巡る案の数々。



　しかし名案は浮かばない。




　そのうちに考えるのすら面倒になり、出たトコ勝負だと開き直ることにした。





「レノ、準備できたよ」



　ヒロインが部屋から出てきた。



　タークスの制服である黒スーツを着たヒロインがレノにはとても新鮮に映った。




「新人って感じだな」



　ククッと笑うレノを見たヒロインが頬を膨らます。



「失礼ね！これでも一応キャリアあるんだから」



「はいはい。ほら、行くぞ」




　ムキになるヒロインを宥めて、レノはバイクの鍵を持って家を出た。



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