3-7:二つの贈り物
ヒロイン
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例の幽霊騒動から数ヶ月経ち、季節はすっかり冬になった。
ヒロインは相変わらず楽しそうに学校に通っている。最近は調子もいいようで、勉強だけでなく学校の手伝いまで始めたらしい。その上、タークスの面々が住む家の家事までこなしているのだから頭が下がる。
と、レノを除くタークスのメンバーとルーファウスは思っていた。
当のレノはというと、ヒロインが元気なのは喜ばしいことであるが、夜の僅かな時間しか二人で過ごせないことに不満を覚えていた。が、自由を満喫しているヒロインに水を差すのは野暮だと思ったので、自分の気持ちは一旦心の奥底にしまいこんで、ヒロインを見守っていた。
そして、今年も残すところ数日となったところで、ヒーリンの住人も含めて慰労会を行おうという話が持ち上がった。正直、レノは面倒だと思ったし、さらにヒロインと過ごす時間が減ることに苛立ちを感じた。しかし、これは社長命令の決定事項であり、何よりヒロインが子供たちや療養中の患者たちのためにたくさんお菓子を作ると張り切っていたので、不満を口にはしなかった。
慰労会の前日朝から、タークスのメンバーが住む家では全員総出でお菓子作りに取り掛かった。どうやらカップケーキとクッキーを作るらしい。
ヒロインから各自に仕事が割り振られる。ツォンは材料の計量係、ルードは小麦粉やらバターやらを混ぜる係、イリーナはクッキーの型抜きをして可愛らしくデコレーションする係だ。レノはカップにカップケーキの生地を入れる係だった。
適材適所かと思われたが、想定外だったのはイリーナがセンスがイマイチだったことだ。レノはイリーナが型抜きしたあとにトッピングしたチョコチップを見て大きく溜息を吐いた。
「イリーナ…お前、真ん中に一つだけチョコチップ置くって、もっとどうにかできないのかよ…」
まさにセンスゼロ。可愛いとか美味しそうとか以前の問題だ。
「文句言うなら、お手本、見せてください!」
イリーナが形の良い眉を吊り上げ、レノに型抜きしたクッキーとチョコチップを押し付けてきた。
「レノ様のセンス、目に焼き付けとけよ」
そう言ってにやりと笑ったレノは、イリーナから受け取ったクッキーに手際よくチョコチップを乗せていく。ランダムに置いてみたり、笑顔のマークを作ってみたり――いくつか手本を作ってやると、イリーナが歓声を上げた。
「すごい!レノ先輩のくせにやりますね!」
「『くせに』ってお前、失礼なやつだな」
他にも思いついたものをイリーナに見せていると、こちらに気づいたヒロインがやってきた。
「これ、レノが作ったの!?絶対みんな喜ぶね」
まるで自分がもらったかのように喜ぶヒロインを見ていると、やってよかったと思えてくる。さあ、あとはイリーナに任せてお役御免。と行きたいところだったが、それを言う前に満面の笑みを浮かべてヒロインが言った。
「じゃあ、イリーナとレノの係交代ね。レノ、他にもたくさん可愛いの作ってね」
どうにも拒否できる雰囲気ではなく、レノは渋々頷くしかなかった。
その日は夕方過ぎまでお菓子作りが続いた。解放された頃には疲労困憊。慣れないことをしたレノは、さすがにその日にヒロインとどうこうする気力はなく、自分のベッドに倒れ込んだ。他にも行かなければならない場所があったが、それは明日に先送りした。
(朝起きたら、捕まる前に出かけねぇとな…)
さすがに当日のお菓子配りに参加してしまうと、大事な用事がこなせなくなってしまう。ヒロインは怒るかもしれないが、こればかりは仕方ない。
どう説明するかも含めて、全部明日考えよう。
レノはベッドに仰向けになって目を閉じた。
翌朝。案の定、出かけると言うとヒロインは不満そうな顔をした。怒りこそしなかったが、不機嫌なのは一目瞭然だった。
「用事、あるなら仕方ないけど…」
「悪ぃ!夕方には戻ってくるぞ、と」
「今日は、一緒にって…思ってたから…」
寂しそうに俯くヒロインを見ていると出かけるのを取りやめたくなったが、レノはそれをぐっとこらえた。その代わり、ヒロインをぎゅっと抱きしめて、その頬に音を立ててキスをした。
「できるだけ早く戻ってくるぞ、と」
「…うん。気をつけてね」
ヒロインの手が腰に回され、少し力が込められた。
名残惜しくはあったが、レノはヒロインから離れ、他のメンバーに会う前に家を出た。出かけると言ったなら、特にイリーナは遠慮なく文句をぶつけて来るだろう。その相手をする時間も今は惜しい。レノは車に乗り込み、ミッドガル方面に車を走らせた。
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ヒロインは相変わらず楽しそうに学校に通っている。最近は調子もいいようで、勉強だけでなく学校の手伝いまで始めたらしい。その上、タークスの面々が住む家の家事までこなしているのだから頭が下がる。
と、レノを除くタークスのメンバーとルーファウスは思っていた。
当のレノはというと、ヒロインが元気なのは喜ばしいことであるが、夜の僅かな時間しか二人で過ごせないことに不満を覚えていた。が、自由を満喫しているヒロインに水を差すのは野暮だと思ったので、自分の気持ちは一旦心の奥底にしまいこんで、ヒロインを見守っていた。
そして、今年も残すところ数日となったところで、ヒーリンの住人も含めて慰労会を行おうという話が持ち上がった。正直、レノは面倒だと思ったし、さらにヒロインと過ごす時間が減ることに苛立ちを感じた。しかし、これは社長命令の決定事項であり、何よりヒロインが子供たちや療養中の患者たちのためにたくさんお菓子を作ると張り切っていたので、不満を口にはしなかった。
慰労会の前日朝から、タークスのメンバーが住む家では全員総出でお菓子作りに取り掛かった。どうやらカップケーキとクッキーを作るらしい。
ヒロインから各自に仕事が割り振られる。ツォンは材料の計量係、ルードは小麦粉やらバターやらを混ぜる係、イリーナはクッキーの型抜きをして可愛らしくデコレーションする係だ。レノはカップにカップケーキの生地を入れる係だった。
適材適所かと思われたが、想定外だったのはイリーナがセンスがイマイチだったことだ。レノはイリーナが型抜きしたあとにトッピングしたチョコチップを見て大きく溜息を吐いた。
「イリーナ…お前、真ん中に一つだけチョコチップ置くって、もっとどうにかできないのかよ…」
まさにセンスゼロ。可愛いとか美味しそうとか以前の問題だ。
「文句言うなら、お手本、見せてください!」
イリーナが形の良い眉を吊り上げ、レノに型抜きしたクッキーとチョコチップを押し付けてきた。
「レノ様のセンス、目に焼き付けとけよ」
そう言ってにやりと笑ったレノは、イリーナから受け取ったクッキーに手際よくチョコチップを乗せていく。ランダムに置いてみたり、笑顔のマークを作ってみたり――いくつか手本を作ってやると、イリーナが歓声を上げた。
「すごい!レノ先輩のくせにやりますね!」
「『くせに』ってお前、失礼なやつだな」
他にも思いついたものをイリーナに見せていると、こちらに気づいたヒロインがやってきた。
「これ、レノが作ったの!?絶対みんな喜ぶね」
まるで自分がもらったかのように喜ぶヒロインを見ていると、やってよかったと思えてくる。さあ、あとはイリーナに任せてお役御免。と行きたいところだったが、それを言う前に満面の笑みを浮かべてヒロインが言った。
「じゃあ、イリーナとレノの係交代ね。レノ、他にもたくさん可愛いの作ってね」
どうにも拒否できる雰囲気ではなく、レノは渋々頷くしかなかった。
その日は夕方過ぎまでお菓子作りが続いた。解放された頃には疲労困憊。慣れないことをしたレノは、さすがにその日にヒロインとどうこうする気力はなく、自分のベッドに倒れ込んだ。他にも行かなければならない場所があったが、それは明日に先送りした。
(朝起きたら、捕まる前に出かけねぇとな…)
さすがに当日のお菓子配りに参加してしまうと、大事な用事がこなせなくなってしまう。ヒロインは怒るかもしれないが、こればかりは仕方ない。
どう説明するかも含めて、全部明日考えよう。
レノはベッドに仰向けになって目を閉じた。
翌朝。案の定、出かけると言うとヒロインは不満そうな顔をした。怒りこそしなかったが、不機嫌なのは一目瞭然だった。
「用事、あるなら仕方ないけど…」
「悪ぃ!夕方には戻ってくるぞ、と」
「今日は、一緒にって…思ってたから…」
寂しそうに俯くヒロインを見ていると出かけるのを取りやめたくなったが、レノはそれをぐっとこらえた。その代わり、ヒロインをぎゅっと抱きしめて、その頬に音を立ててキスをした。
「できるだけ早く戻ってくるぞ、と」
「…うん。気をつけてね」
ヒロインの手が腰に回され、少し力が込められた。
名残惜しくはあったが、レノはヒロインから離れ、他のメンバーに会う前に家を出た。出かけると言ったなら、特にイリーナは遠慮なく文句をぶつけて来るだろう。その相手をする時間も今は惜しい。レノは車に乗り込み、ミッドガル方面に車を走らせた。
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