寝返りを打ったレノは、隣にいるはずの人の温もりが消えているのに気付いて目を覚ました。




　ヒロインがいなくなっている。




　一気に覚醒したレノはベッドから飛び起きた。



　――つもりだった。




　しかし、血圧の低いレノが目を覚ました瞬間に動けるはずもなく。



　起き上がったはいいが、すぐにくらっとし、重い頭から突っ伏した。




　額を手で押さえ、なんとか頭を支える。




「あー…‥」




　起きてすぐ思い通りに動かない身体にイライラしながら、次第に全身に血が巡り始めたのを感じ、レノはベッドから出た。





　寝室から出ると、眩しい朝日がまず目に入り、次にいい匂いが鼻腔を満たす。





「おはよう、レノ」




　目を細めて見ると、そこにはエプロンを付けて朝食を用意するヒロインの姿があった。



　あまりにエプロン姿が似合うヒロインを見ていると、自然と口元が緩む。



　レノは慌ててにやける口元を手で隠した。




「どうしたの？」



　朝から挙動不審なレノに、ヒロインが苦笑する。



「な、何でもないぞ、と」



　少し赤くなっている顔を隠しながら、レノはヒロインに近づき、その首筋に顔を埋める。



　腕をヒロインの腰に回し抱き寄せ。




「おはよう、ヒロイン」






　ちゅっ。





　ヒロインの耳元で囁くと、そのまま頬に軽くキスをした。




　ゆっくりと身体を離すと、ヒロインが耳まで真っ赤にして硬直していた。




　それを見てレノはにやっと笑う。



「顔洗ってくるぞ、と」




　朝食の用意は任せたと軽い調子で言うと、レノはバスタオルを持って浴室に向かった。





「もう…レノのバカ」




　可愛らしくヒロインから発せられたそれに、レノは満足気に笑った。



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