「…なんだよ」

　コーヒーのおかわりを持ってきたティファが驚いた顔をしていた。

「意外だな、て。子ども、苦手なのかと思ってた」

「…うちも似たような状況なってっからな」

　ヒーリンの家には、ヒロインを慕って子どもたちが集まってくる。最初は遠慮がちだった子どもたちも、ルーファウスの許可が出た途端、遠慮はどこへやら。毎日、保護者が迎えに来るまで入り浸るようになってしまった。初めはヒロインだけが子どもの相手をしていたが、イリーナ、ルード、ツォンと、次々に関わる人間が増えていき、レノはそれに巻き込まれる形で、気がつけば子供の扱いに慣れてしまっていた。

「その状況じゃ、みんながヒロインの心配するのも無理ないね」

　とっても忙しそう、とティファが苦笑しながら言った。

「…ヒロイン、何か言ってたのか？」

「みんな大変なのに、気を遣ってくれるのが申し訳ないって」

「あー…」

　今、この状況を誰よりもヒロインがもどかしく感じているのは察していた。誰かの役に立ちたいのだ。小さなことでも。そういう思いがあるからこその今日の行動だろう。
　ヒロインに無理させないようにと思ってのことが、ヒロインを悩ませていたなら本末転倒だ。

「…これからは、もうちょっとスパルタで行くぞ、と」

　そうは言いつつも、自分はヒロインを甘やかしてしまうだろうが。



　レノは代わる代わるやってくる子どもたちの相手をしながらヒロインを待った。が、一向に戻ってくる気配がない。
　そろそろ探しに行くかと腰を上げると、背後の扉が開いた。
　ヒロインかと思ったが、聞こえてきたのは不機嫌そうな男の声だった。

「…何であんたがいるんだ」

「ご挨拶だな、と」

　入ってきたのはクラウドだった。相変わらずの仏頂面をしている。

「クラウド、おかえり」

　ティファがクラウドに笑いかけると、クラウドが照れたように視線をそらした。その顔が少し赤い。
　少しからかってやろうか。
　と、意地の悪いことも考えたが、まずはヒロインだ。

「ちょっとヒロイン探してくるぞ、と」

　そう言って立ち上がったレノの携帯が鳴った。ディスプレイにはヒロインの名前が表示されていた。

「ヒロイン、何してるんだ、と」



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