ミッドガルでの一仕事を終えたレノは、その足でセブンスヘブンに向かった。車の中でヒロインが出てくるのを待つことも考えたが、女同士の話は往々にして長い。いつまでも待たされそうな予感がし、レノはセブンスヘブンの扉を押し開けた。

「おーい、ヒロイン、そろそろ帰るぞ、と？」

　扉を開けた途端、右足に何かがしがみついてきた。

「こーら！」

　ティファの怒る声。それはレノではなく、足にしがみついているものに向けられたもののようだ。
　レノは視線を下に向けた。足にしがみついていたのは、小さな女の子だった。

「あ、クラウドじゃない」

　レノと目が合うと、女の子は慌てて離れていった。
　よく見ると、店の中は子供だらけだ。

「忙しそうだな、と」

「ごめんね。どうぞ、こっち座って」

　どうやら、学校が終わった子どもたちを、保護者の仕事が終わるまで預かっているらしい。
　レノはティファに促されるまま、席についた。

「コーヒーでいい？」

「ああ」

　短く礼を言うと、レノは供されたコーヒーに口をつけた。美味い。ヒロインが淹れるものよりも。

「そういやヒロインは？」

　店にはティファと子どもたちしかいない。
　そう問うと、ティファが説明してくれた。どうやら、自分から遣いに行くと言いだしたらしい。身体も本調子ではないだろうに。レノは溜息をつくしかなかった。

「ごめん、止めるべきだったよね」

「言い出したら聞かないから仕方ないぞ、と」

　心配は心配だったが、心配も過ぎると過保護になる。レノは大人しくヒロインを待つことにした。



　コーヒーのおかわりを待つ間、レノは周囲を観察していた。みんな、学校の宿題をやっているようだ。レノの隣に座る女の子は、先程足にしがみついてきた子だ。教科書とノートを広げ、何やら唸っている。
　レノはそっとノートを覗き見た。

「あー…なるほどなぁ」

　思わず独り言が漏れた。それを聞きつけた女の子と目が合う。しまった、と思ったが、もう遅い。
　レノは頭をかくと、少し席を詰め、女の子のノートを指差した。

「ここが間違ってるからだぞ、と。ほら、教科書のここよく見ろよ」

　険しかった女の子の顔が次第に緩み、そして、笑顔に変わった。

「すごい！解けたー！お兄さん、ありがとう」

「どういたしまして」

　何だかこそばゆい気持ちになり、レノも釣られて笑顔になった。



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