それからレノは自室の窓からぼんやり外を眺め、ヒロインの帰りを待った。



　『理解してやれ』



　ルーファウスの言葉が幾度となく頭を過る。



　レノにとって『学校』は当たり前に通うもので、特別な物ではない。



　楽しいものでもない。



　むしろ退屈で、できれば行きたくなかった。



　しかしヒロインにとっては違う。



　『学校』は特別な物で、楽しいところなのだ。



　この差は、今まで歩んできた人生の差そのものだ。



　もしかしたら、他にも理解してやれなかったことがあったかもしれない。



　そんな時、ヒロインは何を思っただろう。



　悲しかったのではないか。



　寂しかったのではないか。



　今回も『理解されない』と思ったから、言わなかったのではないか。



　肝心なところでヒロインを支えられていない自分の不甲斐なさにレノはきつく唇を噛んだ。





「ただいま」



　明るいヒロインの声が響いた。



　レノは階段を駆け下りると、帰ってきたばかりのヒロインを抱き締めた。



「ちょっ、どうしたの？」



　突然のことにヒロインが目を白黒させた。



「レノ？」



「学校、楽しかったか？」



「何で知って…あ、ルーファウスね。言わないでって言ったのに…」



　ヒロインは頬を膨らませた。



「何で言ってくれなかったんだ、と」



「それは…」



　ヒロインが困ったように視線を逸らした。



　やはり、理解されないと思っているのだろうか。



　だから答えられない。



　そうに違いない。



　ヒロインが自分には話してくれなかった。



　その事実がレノを苦しめた。



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